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もっと一緒にいたいと思って同棲を始めた。デートの後もバイバイしなくて良くて。寝落ち通話をする必要もなくて。二人で買い物をする時間が幸せだ。幸せだった。「ねえ、今日さ」「ごめん。眠いや」君は背を向けて布団をかぶった。静けさが心のヒビに染みる。隣にいるのに、前よりずっと寂しくなった。
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「これまでさ、いいこといっぱいあったね」結婚前夜、彼は懐かしそうに言った。嬉しいけれど急で戸惑う。「旅行も楽しかったし、他も……」「何?遺言?」彼は首を横に振った。「伝えたかっただけ!」寝る前、告白された時のことを思い出した。確か私はこう答えた。「私と付き合ってもいいことないよ」
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君が告白の返事を迷っていたから、つい言ってしまった。「付き合ってください。一週間でいいから」期間限定でも幸せだった。何度も作り直したクッキーを君が美味しいと喜んでくれて。寝る前にはおやすみと送り合って。それでも最終日は来る。「もう無理」君は頭を抱えた。「こんなん、好きになるやろ」
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「何したら好きになってくれる?」告白を断るのは今日で三回目。ついに条件の提示を求められた。プール掃除をしながら考える。「一年間毎日好きって言われたら絆されるかも」難しいだろうけど。予想通り「好き」のカウントをするのは途中でやめた。今年も夏が来る。ああ、半年も早く絆されてしまった。
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告白なんかしなくていい。友達として隣にいられるなら。そう決めて苦しい片思いを続けていた。遊びに誘われるくらい仲良くなったし、これで十分だ。けれどある日、君は雑談のついでに言った。「もう二人では遊べないや」恋人ができたらしい。ああ、忘れていた。君の真面目なところを好きになったのに。
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「好きな人がいる」と君は言った。いつもの世間話みたいに、ふわっと軽い口調で。心が砕かれた夜、君の親友にLINEを送った。しかしそんな話は初めて聞いたという。一体どんな子を。気になって、講義室で隣に座る君のスマホをそっと覗いた。読んでいたのは「興味ない相手を振る方法」という記事だった。
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「どうすれば恋人になれると思う?」親友の家でお菓子をむさぼりながら聞いた。おめーそれ俺のだぞ、と怒られたがいつものことだ。「とりあえず近づくこと。心を開かせろ」恋愛経験豊富な彼の助言は参考になる。「なるほど。でもどうやって?」彼は私の前にジュースを置いた。「まず親友になるんだよ」
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僕には自由がない。生まれた時から人生が決まっている。そういう家系に生まれた。その代わり、十九歳になると一年の休暇をもらえる。僕は旅先から戻らない兄の横顔と、そのせいで立場が悪くなった両親の涙を思った。そして十九歳の誕生日。両親から鞄をもらった。旅行にも使えそうなほど、大きかった。
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霊感はないはずだけれど、この頃縁側に見知らぬ人が見える。まあ古い家だ、幽霊が出てもおかしくはない。不思議なのは、いつも私の世話を焼こうとすること。あんまり親切なので、私は家族のように感じていた。「私、貴方が好きだわ」幽霊は顔を覆った。困った人ね、もうお爺さんなのにボロボロ泣いて。
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会っている時は幸せ。週末、久々に彼の顔を見て実感した。不安も苛立ちも一瞬で消えてなくなる。ぱちんと泡が弾けるように。「三週間ぶり?」「そんなに会ってなかったっけ」そうだよと頷く。満たされたはずなのに、翌日の夜には泣いていた。私、幸せなのかな。会っていない時間の方がずっと長いのに。
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妻は考えなしだ。僕が将来のため仕事に励んでいるのに、やれデートだ何だと騒いでばかり。「結婚してから一回も旅行してないよ」「そんなの老後でいいだろ」これは彼女のためでもあるのに。ある夜、妻は家に帰ってこなかった。不運な事故だった。無数の夢を抱えたまま、妻は狭い狭い棺の中で焼かれた。
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脳の半分を機械化することにした。人間らしい感情は残したまま、高速な演算と正確な記憶が可能になる。これでもう、誰にも間抜けなどとバカにされることはない。そのうち、私は脳の全てを機械にしたらもっと優秀になれるはずだと考え始めた。脳のどちらの部分がそう判断したのか、今はもう分からない。
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人の寿命が見える。この妙な能力のせいで、私は恋人と長続きしたことがない。好きになればなるほど、その数字を見るたびに泣いてしまうからだ。けれど「一目惚れです」と告白してくれた君の寿命は見えなかった。運命の人だ、と思った。初めて会った日の夜、真夜中の事故は君の命を連れ去ってしまった。
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彼女が家に来た。風邪で寝込んでいる僕を心配してくれたようだ。「有り合わせのもので何か作るね」台所へ行く彼女を、水だけでいいと呼び止めた。けれどその顔は不服そうだ。「私の料理、そんなに嫌?」何が不満だと詰め寄る彼女に僕は仕方なく打ち明けた。うちには今、ビールとたけのこの里しかない。
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君しかいないと思った。世界のことなんかほとんど知らないけれど、あの冬、人が行き交う街で君だけが輝いて見えた。幼い恋だねと友人は笑う。事実、数年後にはあっさりと他の人を好きになった。違う誰かといても普通に幸せで。だけど「君しかいない」と思えるほど恋焦がれたのは、やはり君だけだった。
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森の奥の廃病院に少年たちがやってきた。「なーんだ、やっぱり幽霊なんていないじゃん!」先頭を歩く少年は笑う。怨霊である私は、まずはこの子からだなと腕を鳴らす。すると後ろにいた少年が「こんなところにいられるか!俺は帰らせてもらうぜ」と踵を返した。困った、どっちから襲うのが正解なんだ。
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たった一度の告白で崩れるくらいなら、君と死ぬまで友達でいよう、なんて臆病な勇気を握り締めている。
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生まれて初めて年下の彼氏ができた。人懐っこくて、素直で、思わず可愛いねと撫でたくなってしまう。その話を聞いた親友は、神妙な面持ちで口を開いた。「彼氏に可愛いって言わない方がいいよ」そうか、相手にとっては嬉しくないのか。彼女は続けて言った。「私の彼氏、私より可愛くなっちゃったから」
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年老いた母はついに僕の名前も忘れてしまった。「ほら、母さんが食べたがってたパンだよ」今から親孝行なんて遅すぎると分かっている。母は厚切りの食パンを受け取り、耳だけをちぎって食べ始めた。「もう、真ん中が美味しいのに」僕らを見ていた父は泣いていた。「お前が小さい頃もそうしてたんだよ」
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恋愛感情は数値化できる時代になった。検査施設に髪の毛等を送るだけでいいそうだ。この頃そっけない婚約者の心を探るため、私は彼の髪を検査に出した。結果はすぐに出た。感情における恋の割合はほぼない。けれど愛の割合がほとんどを占めていた。泣きも笑いもできない。私ひとり、まだ恋をしていた。
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「彼女の誕生日にサプライズを用意したんだけど」職場の昼休み。やはりモテる同僚は違うなと思いながら頷いた。「当日、フラッシュモブを依頼してさ。でも彼女、そういうの嫌いだから振られたんだ」「それは失敗だったね」彼は笑いながら首を横に振った。「穏便に別れたかったから、あえて選んだんだ」
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「先輩、プロポーズされたんだって。君を一生幸せにするからって。いいなあ」更衣室でうっとりしていた私に、同僚は平坦な口調で言った。「え?別に幸せにしてくれなくても良くない?」なるほど、貴方となら不幸になってもいい、というやつか。それもロマンチックだ。「だって、私は私が幸せにするし」
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同級生の君は、よく思わせぶりなことを言う。「付き合ってる人いないんだ。良かった」何が良かったのか。問いただす勇気が出ないまま時が過ぎていく。けれどある春の日、うっかり口を滑らせた。「さすがに自惚れそうなんだけど」それを聞いた君は困惑した顔で言った。「ま、まだ自惚れてなかったの?」