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本居宣長、千年以上前に記された『古事記』を、「これ読みてぇ…」と思い立ち、まず当時存在した語彙を特定して、テキスト内で似た用法を分類していき、さらに既知の文字と音韻を使って一行ずつ読み方を特定していくという、変態しか思いつかない方法で35年かけて古事記の読み方を確立したお人ですね。
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管理職の場合は特に、「会社にいて仕事の話をしている時くらいは機嫌よく、それが難しい時でもなるべく平静に振る舞う代」もお給料に含まれていると思っている。できれば手当てもほしいけども。
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先日友人とダイエットについて雑談していたら、「何をやっていても太ってしまうと言う人の食生活を聞いてみたらそれは太るねえという内容だったし、何をやっていても痩せるという人の食生活はそれなら痩せるだろという内容だった」などという殺傷力の高い正論を吐いたので、首を絞めておきました。
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「書き手の観測した事実」と「書き手の感想や意見」と「読み手である自分の観測した事実」と「読み手である自分の感想や意見」を切り分ける、という作業は、中学高校の国語教育において実践されているという、認識なのだけど、それが身についているかというとなかなか心細い。ぶっちゃけよく混ざる。
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(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう?)
太宰治『人間失格』
aozora.gr.jp/cards/000035/f…
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「文字は読めるのに文章は読めない」という現象、古文を学んでいるとよくあって、SNSでも同じようなことがよくあり、同じ時代に生きておそらく母語も同じはずなのにコミュニケーションは難しいなと思うとともに、一周回って「お互いの文意が通じ合えること」のほうが稀だし幻想的なのだなとも思う。
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学校ヒエラルキーにおけるカースト内ポジションと男子と女子の生き残り戦略の違い(だと思う)がタイムラインで散見されてここはいっちょう自分の話題も……と思ったけど、休み時間は教室の隅でだいたい本を読んで、無駄に正直に書くとそういう自分に優越感を持っていたので議題の参加資格がなかった。
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「インフルエンサー」という呼称、使うのも使われるのも苦手なのだけど(個人的にはある種の蔑称だと感じている)、完全に尊称だと思ってそう呼んでくる人がいて、なるべくやんわり「わたし向けには使わないでもらえますか」と伝えると、「またまたご謙遜を〜」という反応されると膝が折れそうになる。
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火曜日の夜なので、今週をなんとか乗り切るために、日本文学史の碩学ドナルド・キーン先生による「『古事記』、すごく面白いけど冷静に考えるとこの本、だいぶ変だよ」という指摘をご紹介します(以下『日本文学史 古代・中世篇 1』より要約抜粋)。
amazon.co.jp/dp/B08NW4M9NY/
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いったん話を聞いてこちらが名乗ると、今度は名指しでかかってくる。居留守を使うのも変だから電話をとると、また延々と最近の話題などを話し出す。SNSは「そういう人」への福音だろうなと思うし、引用リプライ等でリプライ元と会話する気がゼロのツイートを見ると、ああいうおじさんを思い出します。
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雑誌の編集部に務めたことがある人ならたぶん全員経験があると思うんだけど、特に用事がないのに(「珍しいいものを見かけた」とか)編集部へ電話してきて延々と話すおじさん、けっこうたくさんいるんですよね。会いたいとか記事にしてほしいとかでなく、ただ話を聞いてほしいという人はすごく多い。
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Web、SNS、ChatGPTの普及で、仕事上、ますます「提案だけ」の価値がなくなってきた。逆にいうと「手を動かして自分でやってみた」の価値が相対的に上がってきた。「おれ、前からこれ言ってたんだけど」というフレーズの虚しさ…というか「言ってたんならなぜやらなかったんだ」が際立つ時代になった。
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#鬼滅の刃刀鍛冶の里編 で、半天狗の走馬灯に現れる、しごく真っ当な理由と倫理観で半天狗を裁く奉行のシーン。これは『鬼滅の刃』という作品の特徴のひとつで、鬼と鬼殺隊を「超人同士の対決」に留めず、一般の人々の小さな判断と意思を大切に描写するんですよね。あくまで普通の人が鬼殺隊を支える。
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コロナ禍+ロシアによるウクライナ侵攻以後いろいろ印象が変わったフレーズがあるのですが、そのひとつに、内容自体はニュートラルだけどあまりにおかしな主張をする人が使いまくるので自分の中で「色」がついてしまった文字列を発表します。
「自分の頭で考えないやつが増えた」
以上です。
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どれほどいい作品でもどれほど真っ当な主張でもどれだけ周囲に気を使う人でもどんな穏当な話題でも、何かの拍子で広く知られるようになると、合わない人や読みたいように読んで反発する人につき当たる。当たり前だけど、だからこそ「反発がある」は、作品や主張や話題や人への瑕疵にすべきではない。
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部屋干し+扇風機で一晩かけても取れなかったこたつ布団の湿気が、晴れた日にベランダで干すと数時間で取れて、「太陽ってすげえ…」と、おそらく人類普遍の感覚が自分のなかに湧き上がる。そりゃ太陽信仰うまれるわな。ふっかふか。
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はい(ワン) twitter.com/ksaykmt/status…
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よくよく事情を聞いたら「昔、母さんが“似合うよ”と言ってくれたやつと近いものを探していて…」と白状して、な、、なんだよ、母さんの好みかよ、、そういうことは早く言いなさいよ、、、と、なんだか照れてしまった。オシャレめなショップでなくイトーヨーカドーで探したら、ありました。
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父の日ということで年老いた父にシャツでも贈ろうかと「どんなのがいい?」と聞いたら「七分袖で焦げ茶色で襟は短くて」と、普段洋服にまったく関心がないように見える父が異様に細かい注文をしてきて、Webで探して「こんな感じ?」と送ると「違う、もっと濃い茶色」と注文してきて、面倒になってきて
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「言葉」は「想い」が文字になって紙に固着して残るわけですが、それをもう一度(記された紙を燃やすことで)「想い」へ戻すような期待があったんじゃないか。人が産まれて、生きて、死んで葬られるように、「言葉」もきちんと昇華させる感覚があったのでは、だから「霊」の字を当てたのでは、と。
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「遺品を燃やす」という行為には、もちろん未練や執着と決別するためだったり自分も出家してすぐあなたのそばへ行くよという決意だったり形見を天へ送るなどいろんな意味が混じり合っているのだろうけど、なんというか「言霊」の感覚が今とは異なっている、という点も大事なのかなと思いました。
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『源氏物語』で、紫の上が亡くなったあと光源氏が紫の上からもらった手紙を全部焼く描写があって、「読み返せなくなるのになんでだろう、寂しくないのかな」と思ったのですが、昨今の騒ぎで確信した。あれは「残しておくと自分以外の誰かが読むから」だ。受け取った自分の心に独占するため燃やすんだ。
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あなたやわたしがどんな思想信条を持っているかに関わらず、見ず知らずの他人に文句をいう時くらい、作家が一所懸命描いた作品を使わずに自分の言葉で文句をいいなよ。勝手に自分の言い分に作品を利用するのは、作者にも作品関係者にもあまりに失礼でしょう。 twitter.com/June_gantank/s…
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紫陽花の季節が巡ってくるたびに、これだけ美しくてこれだけ手入れが楽なのに、なぜ『古今和歌集』にも『枕草子』にも『源氏物語』にも、この花が登場しないんだろうと不思議な気分になる。なにかの禁忌があったんだろうか。