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BA.1に続けてBA.2に感染したことの衝撃が大きく語られていないのはなぜだろう。流行状況から考えて間隔は短いはず。
医局での議論では①BA.1の自然感染が免疫システム上「ノーカウント」になる可能性。②「本物のADE」の到来。私はADEを語ることを避けてきたが、BA.1が招くとするなら大変なこと。
202
検査アクセス悪化の話に戻る。「特異的検査なしにCOVIDと診断すると他疾患を見落とす」と書いて一週間、そのような事例が複数あった。
・鼻汁+発熱→花粉症+腎盂腎炎
・咽頭痛+発熱→伝単
・筋肉痛+発熱→PMR
「後医は名医」な話だが、特異的検査を省くなら血算生化は取ろう。
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PCRキットの枯渇が報じられているが、当院ではCDC N1のprobe領域に変異があると知って一同が青ざめたくらい、大量にバックストックがある。
そうでなくとも「普通のリアルタイムPCR機」は汎用性があるので、公開配列どおりにprimer/probeをオーダーして研究用試薬を使えば、どうにでもなる。(続く
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承前)実際に不足しているのは専用カートリッジを使うPOCT機のようだ。扱いが簡単な分、変異への対応が遅く、供給が止まると役に立たない。
カセットコンロは便利だがボンベがなければ使えないのと同じ。「普通のリアルタイムPCR機」は薪釜で、最悪、手で火起こしして使える。
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コメントありがとうございます。
BA.2はこれまでに広がった株のいずれの亜種とも言えない、新規変異株という認識で良さそうですね。 twitter.com/mebaruhirame/s…
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院内の忙しさはそこそこ(過去数回の波のときのように予定手術を止めていない)だが、水際ならぬ「院際」が過酷を極めている。
院内検査は簡易抗原併用をやめてPCR一本槍に戻った。96穴のリアルタイム機4台で診断まで4-8時間で回せている。陽性検体の変異株暫定判断まで24時間だがomicronばかり。
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「みなしomicron」の問題。この挾間に落ちて死亡したり後遺症を背負うことになった人の悲しみを、運が悪かったと片付けてしまう国になってしまった。科学に忠実に行動、すなわち国として検査態勢を十分に整備していたなら、防ぎ得たかもしれない健康被害なのに。 twitter.com/kakeashi_ashik…
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これだけomicronが蔓延したら空港検疫は無意味とする専門家もおられるが、感染性が強く既存免疫を逃れ重症化もしうるBA.2の拡大状況を見るに、今こそ空港検疫で入り口を絞って欲しい。
fluA流行期であっても、万が一にも人に感染すると危険な鳥インフルが出れば躍起になって封じ込めるのと同じ。
210
「みなし陽性」の危険なところは、他疾患の見落としである。
実際、尿路感染は少なくはないし、omicronの重複感染もあった。自然治癒を待っていては敗血症コースになりかねない。
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癌を表明したスポーツ選手の医療費のための募金の動きに対して、発言力の強い先生方が『保険診療が最善』『保険がきかないのはインチキ・トンデモ』と、無知なる者を嘲笑うかのようにツイートされたのは衝撃を通り越して悲しくなった。
医療にはbeyond the standardが必要な局面があり、(続く
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承前)そういうところで闘っておられない先生方には見えない世界があるのだと悟った。
ある病状に対して切れる手札の枚数は医者や医療機関ごとに違う。治療法は此処にはなくて余所にはあるのか、海外にはあるのか、それとも全世界的に無いのか。
費用負担可能なら追い求めることができるものもある。
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この画像は何度でも貼る。
先生方、このようなデータが出てもなお、簡易抗原定性検査だけを頼りに、結果陰性のハイリスク患者に『貴方は治療対象ではない』と胸を張って言えますか。
検査拡充の遅れは、医者としての良心や善意だけではどうにもならないところにきている。
ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/artic…
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諸外国にならって国内でもマスクを外そうとする動きがあるが、実は真似できる状況にはない。
BA.4/5に効くbebtelovimabがEUAを経て使用可能な米国の知人医療者が言うには、『我々は剣(抗ウイルス薬)と盾(抗体医薬)を持つが、日本は盾を持たない。条件が同じではないことに気が付かないのか?』 twitter.com/SystemsVirolog…
215
6月1日の厚労省アドバイザリーボードでも、押谷先生が「BA.4/5やBA2.12の動態が見えなくなっている」と懸念を示された。
パンデミック勃発から2年。日本は独自の検査路線を突き進んだ結果、病原体の正体を知るという最も基本的な手順さえ標準化できないどころか放棄状態。
mhlw.go.jp/content/109000…
216
次に来るのがA.2.12かBA.4/5のどちらであれ有効な抗体医薬は無い(米国にはある)。病原性が強いとされるBA.4/5が来るのなら、行動制限の緩和には尚早と考えるが、それを判断するための状況把握にPCRを活用できていない。
盲目的に、なし崩しに緩和してBA.4/5が来ることを懸念する。根拠ある緩和を。
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BA.5の市中蔓延期が始まったものと思慮します。
218
>RT
米国限定の抗体医薬bebtelovimab。変異株にも切れ味鮮やか、副作用リスク低く、患者の意思でアクセス可能、公費負担。
その結果、足りなくなって追加供給決定。これでは他国には回ってこない。米国だけ「かかっても治療すれば良い」という「インフルにタミフル」状態になっている。
219
米国ではBA2.12が防波堤となってBA.5の立ち上がりを緩和した。有効な抗体医薬も持っている。
そのいずれも無い状況で、マスク外しを真似、検疫を強化すべきところ緩和、流行株を調べることはせず。なぜ日本は国策レベルの大局で失敗を繰り返すのだろう。現場の一兵卒としては「もうたくさん」である。
220
奈良医大の会見。
記者が望む「物語性」も「センセーショナリズム」も一切出さなかった。
プレホスピタルの「たられば」を語らなかった。
危機管理と医事法制の専門家が事前レクを入れたと思うほどの(もし無しだったらすごいことです)鉄壁の質疑応答。良い先生をリーダーに選ばれたと思う。(続く
221
『重症化しないのだから恐怖を煽るな』という言説は医療現場を総合的に見ていない。
Cov2で入院するのは①肺炎②フレイル状態から落っこちた、である。②はインフルでも入院になったであろう事例。重症化しにくい株では①が少数でも、感染力が強ければ②が激増する。それが回り回って医療を麻痺させる twitter.com/tmdu_er/status…
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基幹病院といえど、かかりつけ患者を取らないわけにはいかない。肺炎はないが全身状態不良、そんな高齢者が病床を占めスタッフの人手を要する。結果、外傷・脳・心臓の緊急を受けられなくなる。
『恐怖を煽るな』論は、医療リソースがredundantなほどにある環境においてのみ、許されるものと考える。
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私は、不織布が織り目よりもはるかに小さな粒子を静電気で捕捉していることを学び、N95依存症と自嘲するほどにマスクの恩恵を享受してきた。
『マスクは無意味だから外そう』という主張は、①部分的には※一周回って正しい※ところがあるが、②結論としての「外そう」には同意しかねる。(続く
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もうひとつの緩み、脱マスクの動きについて。
まだCov2の性質が明らかでなく、ワクチンも薬もなく、ただ闇雲に恐れることしか出来なかった頃、医療者を守ったのはN95/DS2マスクだった。ほぼ隙間無く着用できていれば、不織布の静電捕捉が強固な守りになったことは揺るぎない事実である。(続く
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承前)微粒子阻止率が100%ではないマスクで前線に立って感染しなかったことにはいくつかの解釈があるが、結論としては「それで事足りた」のである。
一般的な不織布マスクでも高速微細飛沫の噴射は防げ、加えて隙間が小さければ防御効果もある。無意味だからと外すのではなく隙間を無くすべきだった。