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大学の時の米文学の教授が、作中の表現に対して学生が提示してくる様々な「○○は××のメタファーである」という解釈に対して、たびたび「うーん、そうなのかもしれないけど、そこが面白いところなんだっけ?」と言っていたことが、自分が作品を鑑賞するときの基本的な態度に影響を与えている。
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「見知らぬ全員を代表してなぜか謝ることになる」というあるある面白話であって、ラーメン屋さんに怒ったり「5日が給料日の人もいる」とか揚げ足を取るような話ではないです。
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出かけるときに「気をつけてね」と声をかけられると、実際に事故に遭う確率が減るという話を聞いたことがあり、それを踏まえて金曜の夕方の会議は「よい週末をお過ごしください」と言って終わるようにしている。
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ひどい事件の話などを聞くたびに、呪いというものは「この世にそういうものが存在しなければあまりにも無念すぎる」という願望から生まれたものなのではないかと思う。
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「出産を条件に、いま奨学金の返済で苦しんでいる人を救済する制度」と「いまは収入があるので返済できているが、出産・育児で収入が減ったら奨学金の返済ができなくなる人を救済する制度」は制度の趣旨がそもそも全然違うので、「言い方で印象が変わる」みたいな話に矮小化すべきではないとも思う。
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泣いている幼児がお巡りさんに話しかけられているイラストを見た子どもが、ぼくに「ねえパパ、パトカーに乗りたくて泣いちゃってるの?」と聞いてきて、まだ世の中で経験する嫌な出来事のパターンを全然知らないんだなと思った。
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昔はローソンでからあげクンを買ったあと、爪楊枝のビニールを剥がす気力がなくてビニールがついたままの爪楊枝をからあげクンに刺して食べてたのを思い出して、爪楊枝のビニールを剥がしながら「いまは本当に気力が充実しているな」と思った。
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子どもに算数アプリをやらせて「すごいな」と思ったのは、永遠に子どもに付き合って問題を出題したり解答を教えてくれたりするところで、たとえば人間が誰かの相談に乗ったり質問に回答したりすることはもちろんできるけど、どんなときも永遠に付き合うというのはAIでないと出来ないことだなと思う。
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オリンピックって、「本当は誰も開催するつもりがないのに、さも開催する気があるかのように準備していてみんな大変だな」と思っていて、本当にやる可能性があるなんて少しも考えていなかったな。
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ひとりでタクシーに乗って嫌な目に遭った経験なかったけど、妻とタクシーに乗ったらいきなり運転手の人が「結婚するならとにかく若い女がいい」みたいな不愉快な話を始めて驚いた記憶がある。面食らってろくな抗議もできず、初めて「女性はタクシー運転手に不快な接客をされやすい」という話を知った。
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「ナ行は思ったよりも前の方にある」「ハ行は思ったよりも後ろの方だがマ行よりは前」「ヤ行は少ないからラストかと思いきや、実はまだラ行がある」などの、おそらく初めて五十音を覚えたときの"コツ"のようなものの残滓がいまだに脳内に残っているのを感じることがある。
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「歩くスピードは合わせない」って、こっちも合わせなかったらそのまま解散するのかな?
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「自分で思っていたよりも傷ついている」ということを悪夢で知る朝。
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ミッキーマウスマーチ以外で「元気者(げんきもの)」って聞いたことがない。
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先日、子どものことで近所の病院に行ったとき、ぼくがほとんど説明する隙もなく、自分で「なんで病院に来たのか」「どういうときに痛いのか」などスラスラ説明して、お医者さんからの質問にも的確に答えており、ぼくの代わりに会議に出てもらってももう問題ないなと思った。
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「少数の優秀な人間にたくさんの仕事をさせる」「少数の優秀な人間をどうにかして雇ってくる」のどちらかで当座をしのぐことになるけど、少なくとも先進国の生産年齢人口は減少していくわけだから、最終的には「仕事を簡単にする」という方向にシフトしていかないとジリ貧になるのではないのかと思う。
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公園で、子どもが他の子どもに「おはよう、ぼくは○○ちゃん。この子は、パパ」と言ってぼくを紹介したので「よろしく」と挨拶した。
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「女は女というだけで幸せに生きている。自分だって女だったらもっと楽に生きられた、憎い」という考えを持っている人ってよく見かけるけども、それ自体が偏った考えであることは言うまでもなく、そういう"女性一般"に対する偏見を、目の前の個別の人間に躊躇なく適用する軽率さというのもよく感じる。
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子どもが「なんで、"は"に点々をつけると"ば"になるの?」と質問をしてきて、咄嗟に「まさかこの子ども、濁点をつけると無声音が有声音になるというルールから考えると、ハ行とバ行が対応関係になるのはおかしいということに気づいた?」と妙な深読みをしてしまって、言葉に詰まった。
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PINK BBSにスレH板というものがあって、そこでは見知らぬ同士が相手を募集して文章上のセックスをしていた。当然、"セックス"にはかなりの筆力が必要で、文章が上手い人は男女問わず引っ張りだこである一方、文章力に自信がない人はすぐ媚薬を登場させると愚痴スレで詰られたりしていて可哀想だった。
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ある事柄について、関係ない人ほど冷静で客観的で中立な存在に見えてしまい、実際に不利益を被っている当事者がどんどん議論から排除されるという不可思議な現象はそこかしこで見られる気がする。
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毎度のことながら、教養の使い道として最初の方に「教養ギャグを理解できる」が挙がるのが、教養というものがどう扱われているかについて色々な示唆を与えてくれるね。
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職場でもインターネットでも、「無能を全員クビにして優秀な人間だけ採用すればいいんだ!」みたいなことを言う人は見かけるんだけど、法規制があってクビにできないとか関係なしに、そんなものは幻想じゃないかと思う。
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もしかすると、今の「かゆくてもあまり掻かない方がいい」というのは、「掻く」よりも有効な治療法が様々に発明されているからであって、自然状態では「掻く」が大体の最適解なのかもしれない。
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「女は悩みを聞いてほしいだけでアドバイスが欲しいわけじゃない」的な言説について、アドバイスが欲しいだけで説教されたいわけじゃないという例もあるのではないかと思った。