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夏休み前はノーメイクだったリンちゃんが、休み明けから化粧していることに気付き、何故か話しかけづらくなって一ヶ月。ある日怒った顔で近づいてきた彼女に「なんで無視すんのさ!」と迫られ、そう見えてたのかと気付かされ、誤解を解いて前より仲良くなりたい。
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リンちゃんが「たーらこ、たーらこ、たっぷーりーたーらこ」って歌いながら料理してるので、どんなたらこ料理が食べられるのかワクワクしてたら、ただのパンケーキが出てきて二度見したい。
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着物を纏ったリンちゃんに、もしかして七夕だから?って聞いたら「そう!レンと織姫彦星合わせで着るのー」って嬉しそうに言うので、レン頑張れ…って思いたい。リンちゃんの彦星衣装があまりに凛々しいものだから。
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ボカログッズガチャを引いたレンなどは、レンアクキーやレンステッカーばかり出て「これじゃ自分大好きみたいじゃねーか!」と癇癪を起こせばいい。そこに通りがかったリンちゃんに「わーレンがいっぱい!あたしも自分ばっか出て困ってたんだー、交換しよー」と渡されたリンぐるみを大切にすればいい。
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マジミラ会場で「雷属性っぽく振る舞ってね」と頼まれたレンなどは、持ち込んだ刀でいつ霹靂一閃してしまおうかドキドキしながらタイミングを伺えばいい。
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リンちゃんは歌うとき、恋する少女や気まぐれな小悪魔等々、役作りに余念が無い。ある日新曲のボーカルを依頼し、集中して歌詞カードに向かう彼女を眺めていたところ、何やら遠くから地鳴りのような音が聞こえ、そこで新曲が「世界を崩壊させる神」の歌だったことを思い出し、慌てて彼女を止めたい。
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椅子に座るリンちゃんに、後ろ手に腕を掴まれ引っ張られたい。抵抗すると椅子が倒れてしまうので、自然、前によろけて彼女に覆いかぶさる恰好になり、「…ぎゅーするぞ」って言いたい。すれば?と返され、動揺しつつ、ばーか、と彼女の頭を押さえつけつつ立ち上がり、髪をくしゃくしゃにしてやりたい。
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リンちゃんに突然手の平を合わせられ「冷たいね」って言われたい。手の冷たい人は心が温かいんだぞと胸を張ると、体温の高い彼女に「あたしの心が冷たいって?」とむくれられたい。論理学的には命題の裏は成立しなくてねなどと慌ててまくし立て「あっ見てサンタさんがいるー」と冷たくあしらわれたい。
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リンちゃんをインストールしたPCが壊れ、一晩泣き明かしてから再インストールに手をつけたい。新しいリンちゃんと新しい関係を築いていくぞ…と覚悟したのに、「はー昨日は災難だったね。あれ、なんで泣いてんの?え、ディスクに記憶が保存されてると思ってた?アッハハ」と平気な顔して復活されたい。
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リンちゃんがLサイズの服を着て「ほらー、萌え袖だよー萌え袖ー」って手を目の前でひらひらぷらぷらさせるので、その袖を即座に固結びしてやりたい。
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リンちゃんと水泳したい。泳ぎ終わった後、「目の周りにゴーグルの跡がついてるー」って、こちらを指さして笑われたい。自分にはついてないからってさー…とふてくされたところ、「肌の張りが違うからねー」ってニヤニヤする彼女だけれど、いや金属だからだよね?ってツッコミは飲み込みたい。
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体重計から下りたリンちゃんが「太った…」と悲しげなのだけど、鏡音リンの公式設定は43kgであり、数値が食い違うとすれば体重計こそが間違っているためクレームを入れたい。非を認めないメーカーとの論争はやがて学術界へと広がり、ついに国際キログラム原器の重量を修正することで決着を見たい。
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リンちゃんが突然こちらの手を取ったと思ったら、おもむろに爪に黄色いネイルを塗り始めたので慌てたところ、「動かないの!」と怒られたい。やがて指10本を黄色くされて、乾くまで何もできねーなと溜息をつきつつ、対照的に「おそろいー」って嬉しそうなリンちゃんを眺めたい。
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リンちゃんにネクタイの歪みを直してもらって、成人式へと向かいたい。かつてお年玉貯金を全部使って彼女を家に迎えたのは、同い年のボーカロイドが出た!って親近感に突き動かされてだったなあ、なんて思い返しながら。
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公園でサッカーをやってて、ボールがゴールポストを飛び越えて、リボンをつけた女の子の所に転がっていってしまったので、「おーい、ゴール蹴り返してー」と言い間違えたい。頷いた女の子が思いっきり蹴り飛ばし、グラウンドの土を抉りながらこちらに転がってくるゴールポストを見て悲鳴を上げたい。
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「綺麗な 花が 咲いているね」とリンちゃんが言うので、桜だねと返したい。彼女のAIはまだ細かい物の区別ができない。けれど桜の季節になるたびに、かつて色とりどりのガラス瓶を誤って割って飛び散らせショックだった時「綺麗な 花が 咲いたね」という彼女の言葉に救われたことを思い出したい。
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リンちゃんが突然倒れて、焦りたい。無機質な音声が「エラーが発生しました。復帰のために以下の手順を実施してください」と告げ、言われるままに胸を叩きながらガニ股で裏声を作り「オキロー、オキロー」って叫んだあたりでリンちゃんが爆笑しながら起き上がり、罠に嵌められたことに気付きたい。
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鏡音さんに「年賀状送りたいから住所教えて」の一言が言えないまま終業式の日を迎えたい。「あけおめメール送りたいからメアド教えて」も言えないまま終業式を終えたい。溜息をつきながらの下校中、偶然鏡音さんと鉢合わせて、今度こそ勇気を出したい。
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レンなどは、ツイッターで誕生日を祝われるままテンション上がって遅くまで起きていた結果、夜が明けた後の終業式でうっかり居眠りし、先生に「おい鏡音!」って名指しで呼ばれてビクッとなればいい。
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超会議の、脳波で動く猫耳の体験コーナーを発見して「やりたい!やりたい!」ってリボンをピコピコ跳ね回らせるリンちゃん。結局うまく動かせず、落ち込んでしゅんとリボンを伏せるのだけど、ぼくはといえば猫耳のあいだ手に持ってたリボンに電極も何もなかったことについて疑問でいっぱいになりたい。
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並んで歩くリンちゃんとレンくんは、歩幅も足を出すタイミングも同じで、行進みたいだねって伝えたい。言われるまで意識してなかった彼らはショックを受け、「ずらすよ!あたし表拍!あんた裏拍!はい1!2!」「1!2!」って掛け声とともに歩くのを、何も口出しせず眺めたい。
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リンちゃんに「あたしの発音って古くさい!?」と泣きつかれたい。どうやらクラスで、流行語の発音がことごとくおかしいと突っ込まれたらしく、まあボカロに内蔵された辞書登録単語は国語辞典ベースだから流行語はないからなーと困り、学習効果がないのは判りつつも、気休めに発音練習に付き合いたい。
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「もう、どんだけ寝てんの」という涙声で目を覚ましたい。視界が捉える、のっぺりした未来的な白い壁。浮遊するホログラムのカレンダーには、自分の記憶より随分大きな4桁数字。状況を把握しつつも、目前のリンちゃんは変わらぬ14歳の少女の姿で、自分の居場所を確かめるように彼女の手を握りたい。
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親戚の赤ちゃんを上手にあやしてるリンちゃんに、何の気なしに「リンちゃんはいいお母さんになるね」って言ったら、いきなり耳まで赤くなって「…だ、だれがおとうさん!?」とか動揺されたい。