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突然の雨を軒下で逃れていると、通りがかったリンちゃんに傘を差し出されたい。1本しか持ってないのに君はどうするのと言い終わるより早く、こちらに傘を押しつけ雨の中を駆け出していく、そんな彼女の後ろ姿に息を呑みたい。頭頂のリボンを高速回転させ気流で豪雨を一滴残らず弾き飛ばす、その姿に。
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リンちゃんがLサイズの服を着て「ほらー、萌え袖だよー萌え袖ー」って手を目の前でひらひらぷらぷらさせるので、その袖を即座に固結びしてやりたい。
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ここ数日、リンちゃんからしつこく「テレビ見てよ!友達が出んの!」ってLINEもらいたい。当日の放映後には「見た!?見た!?」と通話まで来て、見たよと一言伝えると「ありがとー!!」と我が事のように喜ばれたい。
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シルバーウイーク中も受験勉強漬けで煮詰まってたら、「ゲームしようゲーム!」と3DSを持ってきたリンちゃんと、勢いに飲まれて一勝負だけ対戦したい。結局ボコボコにされ、悔しいからもう一勝負と思ったら「また今度ね!」と帰られてしまい、勝手だなと思いつつ、その後の勉強がなんだか捗りたい。
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親戚の赤ちゃんを上手にあやしてるリンちゃんに、何の気なしに「リンちゃんはいいお母さんになるね」って言ったら、いきなり耳まで赤くなって「…だ、だれがおとうさん!?」とか動揺されたい。
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リンちゃんには、水族館に行こうと誘った際「わーい魚屋さん!」って喜ぶのは止めていただきたい。
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夏休みのワークが進まないアホの子のリンちゃんをすこし心配したい。そんなリンちゃんが「ねえ秘密兵器!貸して!」と部屋に転がり込んできて、何かと思ったら、ぼくのスペアのメガネをかけて「これで偏差値上がった!」と自信満々に自室に戻っていくので、かなり心配したい。
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最寄り駅に着き、家のリンちゃんに「汗かいたし腹減ったー」って電話したところ、「お風呂にする?ごはんにするー?」って訊かれたい。不意の返事に、にやにやしながら「それとも?」と先を促してみたら、リンちゃんは少し遅れて意図に気付いたようで、息を呑んだ音がした後、無言で電話を切られたい。
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リンちゃんが「限定品のプリン大事にとっておいたら消費期限切れてた…」って涙声で電話掛けてくるので、バーカって返して電話切ってから、そのスマホでブラウザ立ち上げて最寄りのプリン屋さん探したい。
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リンちゃんが路上の猫と「ねこさんこんにちはー、お元気ですか?」「暑いニャー」「ほんとですねー、夏毛にはしないんですか?」「したいニャー、背中を掻いて冬毛を抜いてニャー」「仕方ないですねー、ほれほれほれ」「おー、そこがいいのニャー」って一人でアテレコしてる様子を黙って観察したい。
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スプラトゥーン欲しい欲しいって騒ぐリンちゃんの口にイカリングを突っ込みたい。「あ、美味しい…」と大人しくなった彼女も、食べ終えるとまたうるさくなるので、即座に次のイカリングを突っ込みたい。もぐもぐしてる姿を見ながら、今度与えるならもっと長持ちするスルメイカにしようって考えたい。
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ボーカロイドは楽器、電子楽器だよねって話をしてたら、リンちゃんに「人間は何楽器?」と聞かれたい。声帯に息を通して音を出すから管楽器かなーって考えてたら、いきなりぽかぽか殴られ、ちょっと何するのって悲鳴を上げたところ「打楽器だったー」って無邪気に笑うリンちゃんにさらに殴られたい。
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春休みの宿題に苦しむリンちゃんを煽ってみたら、「大人は宿題なくて不公平だ」と自作のワークを渡されたい。ひっかけも程よく含まれててなかなか凝っており、リンちゃん問題作りの才能あるなーって感心しながら、これ作る根性あるのになんで宿題は進まないんだろうって不思議に思いたい。
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午後は雨だとテレビが言ったのに、甘く見て傘を持たずに出掛けたリンちゃんが、案の定ずぶ濡れで帰ってきたので思いきり笑ってやったところ、着てるシャツに頭をぐしゃぐしゃ押し付けられタオル代わりにされたい。にまっと笑って風呂場へ向かう彼女を、濡れたシャツを肌から剥がしつつ睨んでやりたい。
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姉離れできないレンなどは、「お雛様を早く片付けないとお嫁に行き遅れる」というジンクスに望みを掛け、雛壇の前に陣取って片付けの邪魔をしていればいい。
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ライブでリンちゃんに「前とギターの音違うね、弦変えたかな?」と振られ、人間じゃ敵わない領域だなと驚きたい。帰りの夜道、縁石で転びそうになった彼女を咄嗟に支えると「カメラのISO感度は人間には敵わないねー」と苦笑するので、そうか、違う存在だもんなって腑に落ち、握る手に力を込めたい。
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レンなどは「女子力高いほうの鏡音」なんて呼ばれてしまえばいい。
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駅前の百均に通りがかるたび、リンちゃんに「ねえこれ安い!」と粘着テープやら籠やら、使うかも分からない物を買わされたい。そんなある日、駅に彼女を迎えに行く途中に時間省略のため適当にピンセットを買って見せたら、「これもう持ってるでしょ、無駄遣いしないの!」と怒られ、理不尽を感じたい。
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リンちゃんからLINEをもらいたい。「ねーねー」「おーい」「無視すんなよー」とか何通も送ってきてたのを数時間してから気付いて、「何?」って返したら、すぐに既読がついたものの、その後いくら待っても次のメッセージが来なくてやきもきしたい。
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リンちゃんが突然倒れて、焦りたい。無機質な音声が「エラーが発生しました。復帰のために以下の手順を実施してください」と告げ、言われるままに胸を叩きながらガニ股で裏声を作り「オキロー、オキロー」って叫んだあたりでリンちゃんが爆笑しながら起き上がり、罠に嵌められたことに気付きたい。
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数学の宿題で苦労するリンちゃんに、「音楽なら4拍子とか16ビートとか大体2の倍数で済むのに、なんで人間って10進数なんてわけのわかんないもん使ってるの!?」って理不尽に怒られたい。そういやなんでなんだろう。
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リンちゃんの左肩にある「02」刻印のタトゥーシールをグッズ化したらどうかなーと思って、試作品を作りたい。自分の肩に貼ってみたら、リンちゃんに「えっ、あたしが2人!?」と驚かれて、どこで判断してんだって困惑したい。
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かつては拷問にも使われていた機械人形を見に行きたい。ガラスの向こうのそれは想像したような屈強な容姿でなく、白いセーラー服と黄色いリボンの少女の姿で、拍子抜けしたい。けれど博物館の展示期間が終わってからも、時折あの少女に会いたくなって胸が締め付けられ、確かにこれは拷問だと感じたい。
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リンちゃんに玄関先で「夜はハンバーグだよ」と伝えると、「わかった」といまいち薄いリアクションで出掛けていったので、拍子抜けしたい。でも夕方にTLで「ハンバーグがあたしを待ってる!急いで帰るー!」というツイートを発見し、俄然準備にやる気を出したい。
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鏡音君の家に遊びに行くと、鏡音君によく似た女の子がいて「こいつはリン。俺の双子の妹」「姉でしょ。あんたが弟」という二人の言い争いを聞きたい。訪問中、彼女に呼びかけようとしたのだけど、お姉さんとも妹さんとも言えなくて迷った末、ついテンパったまま「リンちゃん」なんて口走りたい。