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そして、自分自身が①“自主的に”ゾーニングをしたことは、他人に対して、①“自主的に”ゾーニングすべきと迫る(ましてや叱責する)根拠にはならない。また、他人に対して、②' ゾーニングが“強制”されるべきである、という論拠にもならない。①と②を混同すると他者の自由に不用意に干渉することになる
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表現の自由と「ゾーニング」については、以前、以下のツイート(ツリー)でも呟いていますので、ご参考まで
ゾーニングの法的な強制は、司法試験論文試験でも出題されている表現の自由の規制の一類型です。このことは重要で、法学部(大学)でも必ず学習する(すべき)知識です
twitter.com/YusukeTaira/st…
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(a)日経のマンガの広告の件、①作品や愛読者の感性への嫌悪を表明しただけで②掲載すべきではないとまで意見表明したわけではないという意見は
(b)オープンレターで①悪しき文化の発露として誹謗中傷行為者(研究者)の氏名を明示しただけで②学会等からの排除等まで表明していないという意見と似ている
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記事では「見たくない表現に触れない権利」をメディアが守っていない点を問題視しているが、法的には、市営地下鉄の列車内における商業宣伝放送に違法性がないとした最高裁判例が想起される
「月曜日のたわわ」全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは? huffingtonpost.jp/entry/story_jp…
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最高裁判所第三小法廷昭和63年12月20日判決集民155号377頁・商業宣伝放送差止等請求事件の伊藤正己裁判官の補足意見は「他者から自己の欲しない刺戟によつて心の静穏を害されない利益」について憲法の観点から検討を加えている。
courts.go.jp/app/hanrei_jp/…
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(同補足意見を引用)
他者から自己の欲しない刺戟によつて心の静穏を害されない利益は、人格的利益として現代社会において重要なものであり、これを包括的な人権としての幸福追求権(憲法一三条)に含まれると解することもできないものではないけれども、
→
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しなければならず、プライバシーの利益の側からみるときには、対立する利益(そこには経済的自由権も当然含まれる。)との較量にたつて、その侵害を受忍しなければならないこともありうるからである。この相関関係を判断するためには、侵害行為の具体的な態様について検討を行うことが必要となる。
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これを精神的自由権の一つとして憲法上優越的地位を有するものとすることは適当ではないと考える。それは、社会に存在する他の利益との調整が図られなければならず、個人の人格にかかわる被侵害利益としての重要性を勘案しつつも、侵害行為の態様との相関関係において違法な侵害であるかどうかを判断→
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以上が伊藤裁判官の補足意見の重要部分だが、これに照らすと、「見たくない表現に触れない」という利益は、常に経済的な自由を含む諸権利・利益に優越するものではない、ということが分かる。法的には、個別具体的な比較衡量を踏まえず、一方の利益だけが常に優先される、ということにはならない。
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平成30年司法試験の論文答案を採点した試験委員のコメント(採点実感・法務省HP)も、「不快なものを見たくないとか,…およそあるものを見たくないという感情の保護…を当然のように制約目的として肯定…する答案」は、NGだ、と注意していますね
↓は2021年の関連ツイートです
twitter.com/YusukeTaira/st…
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1000RT、1500いいね!有難うございます
同じく「表現の自由」関連の告知です。私がいま担当している映画等の芸術表現助成の補助金の裁判のこともぜひ知ってください↓
(拙稿)映画「宮本から君へ」助成金不交付裁判・東京高裁判決の問題点と
表現の自由の「将来」のための闘い
jicl.jp/hitokoto/backn…
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地裁は、専門家組織の芸術的観点に基づく交付内定判断を尊重すべきとし、一人の俳優の不祥事だけを理由とする補助金全額の不交付決定は「違法」だと判断しましたが、高裁は真逆の判断をしました
私たちは、クラファン(CALL4)を開始しました。皆様よろしくお願いいたします!
call4.jp/info.php?type=…
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①「オタク」が許しても「世間が許さない」性表現漫画の広告(不特定多数人が見る)はNGだ
②「サヨク」が許しても「世間が許さない」反戦漫画は図書館から排除しろ
③「現代美術好き」が許しても「世間が許さない」芸術祭の補助金は出すな
便利な論法です。政府は「世間」を理由にやりたい放題できる
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(太宰治『人間失格』から引用↓)
「…お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」
世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。……そう言われて、ふと、
「世間というのは、君じゃないか」
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①低価値表現にすぎない、営利的広告にすぎない、②ゾーニング・TPOの話にすぎない、③自主規制にすぎない、④私人間効力の話にすぎない、⑤職場でのハラスメントと同じ、等の理由付けから、
日経の広告掲載・不掲載の問題は「表現の自由」の問題ではない、と主張するツイートが多く、正直驚いています
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まず、①低価値表現(性表現など)にすぎないという点ですが、以下のツイートのとおり、低価値表現であっても、表現の自由の問題になることは、現代の憲法学においてはほぼ明らかです
twitter.com/YusukeTaira/st…
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次に①営利的表現(営業広告)にすぎないという点ですが、渡辺康行ほか『憲法Ⅰ 基本権』(日本評論社、2016)228頁〔宍戸常寿(司法試験考査委員)〕によると、営利広告・営利的表現の自由も「現在の学説は……国民の知る権利に奉仕するものとして、憲法21条によって保護されると解している」と解説されます
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②の点の補足ですが、内容中立規制(表現内容に中立的な規制、時・所(場所)・方法の規制)も、表現の自由の規制に当たるという点では内容規制と同じです。規制の強度が違うというだけです。司法試験でも昔から繰り返しよく出ている話です(以下のツイートもご確認ください)
twitter.com/YusukeTaira/st…
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③自主規制にすぎないから表現の自由は問題にならないという主張も、憲法学では受け入れられない話でしょう。例えば、以下のツイートの松井茂記教授の解説をご一読ください。表現の自由の話であることが分かります
twitter.com/YusukeTaira/st…