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対抗言論が十分に可能なのに、自分と異なる意見を述べる表現者を公共空間からキャンセル・排除しても良いというカルチャーを大学生の頃から刷り込まれたら、まともにディベートなどできなくなるし、最終的には他者との対話ができなくなる。少なくとも私は議論したくない(Twitterではブロックできるが)
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例の米穀店の件、ボイコット、社会運動の域をこえていないだろうか。営業妨害というツイートが多いが威力や偽計が認定できるのか微妙な感じ。むしろ、謝罪やアカウントの鍵解除等の強要をしているといえれば、強要か強要未遂では…という印象。あと検討対象となるのは名誉(や信用)毀損あたりだろうか…
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謝罪やアカウント鍵解除、解除後のコミュニケーションを強いるために、小さな個人商店の目の前で、複数名で、入れ替わるなどして、終日(営業時間帯に)「Racism」と書かれたプラカードやポスターを掲げ、店との写真を撮影し、SNSで拡散し、Googleの星の数を減らす呼び掛けなどをする社会運動は妥当か?
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ボイコット、あるいはキャンセル・カルチャー的なものと整理できそう。社会運動を始めたきっかけが人種差別的な発言(1つのツイート)であったのは問題だろうし軽率で不適切だとも思うが、他方で、武蔵野市住民投票条例案に関する市民の政治的表現の自由と関連する意見でもあった。かなり微妙な問題です
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営業妨害とまでいえるかどうかはさておき、もちろん店の営業の自由(憲法22条1項)とも関わる問題。ちなみに、研究者へのキャンセル・カルチャーの場合には、当該研究者の表現の自由(21条1項)だけではなく学問の自由(23条)にも悪影響が及ぶ 社会運動というだけで何でもOKという時代ではないでしょうね
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ちなみに、武蔵野市住民投票条例案は、外国人の地方選挙の参政権に関する憲法解釈の問題とも関連する(全く別論点で関係ないという見解は説得的ではないだろう)。大別すると、禁止説、許容説、要請説の3つの説があり(許容説か要請説が妥当だろう)、また平成7年の最高裁判例の読み方もそう簡単ではない
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このツリーはこれで終わりにしますが、↑のとおり様々な法的問題がある単純ではない問題というべきであるから、以上のような社会運動は武蔵野市住民投票条例案に賛成する立場の側にも受け容れられない(受容され難い)ものではないか?ということを、運動する側も一度立ち止まって考えるべきだと思います
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「性的搾取」に関する表現行為を問題視する意見についてですが、佐藤幸治教授の『日本国憲法論[第2版]』(成文堂、2020年)296頁は、性表現の規制のうちの①児童ポルノ規制と②「アニメ・CG」の規制は「別に考えなければならない」、としています。この解説は私人間の問題でも重要な視点だと思いますよ
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学会誌の編集委員である研究者がネットで同じ領域の研究者をSNSなどネットで継続的に非難しまくるというのは法学の領域では見ない気がするが、社会学は文化が違うのだろうか
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オープンレターなどによるキャンセルカルチャーという集団的行動は、社会学など特定領域だけの問題ではない。法学関係者(研究者や弁護士等)も、他人事ではなく、明日は我が身の「自分事」として、学問の自由、表現の自由、人格など憲法にも関する問題として捉える人が増えてきた。危機感の表れだろう
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私たちはゾーニングを要求している「だけ」って… 「だけ」とか言っている時点で不勉強を自白しているようなものなのですが…
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オタクの表現の自由、萌え絵を書く表現の自由は、ゾーニングという条件付きで認めるべき(公共空間での表現は排除すべき)だという、表現の自由の保障内容のレベルから変えてしまう(というか勝手にねじ曲げてしまう)独自の見解も世の中にはあるようだが、これは殆どある種の信仰に近いものと感じる
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ゾーニングがいかに表現自由の意義を小さくしてしまうものなのか、に関連するツイートです↓(ご参考まで) twitter.com/YusukeTaira/st…
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新しい法律を作ったところ特定の業界の職業人が重大な不利益を被ったり廃業した場合、積極的に立法に動いた国会議員は、特にその状況を積極的に把握するよう動いたらどうかと思います。国会議員は「全国民を代表する…議員」(一部の国民の代表者ではなく全国民の代表者、憲法43条1項)なのだから…
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新法制定により特定の職業、自分で選択した仕事を廃業せずに続けていく勤労権の価値(それは憲法上重視されるべき価値でもある)を、「あなたの仕事は特殊な仕事だから」などという理由で軽視し、廃業しても「福祉につなげてあげるから…」という自称「社会貢献」は、個人の人格を強く否定する活動だろう
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特定の職業に対してのみ転職ではなく足抜けという言葉を使うのは職業差別
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性産業に携わる人や船乗りを職とする人に対する職業差別や、中卒・高専卒の人に対する学歴差別をSNSで公言する行為は、憲法14条1項の趣旨、法の下の平等の理念に反し、許されないものというべき。ジェンダーに根ざす不合理な差別の問題と同じ話のはずなのに、なぜ…
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自らの自己決定で特定の職業を選択し適法有効な契約に基づく仕事をしている人が、その職業の「やめさせ達人」である「富豪」の話を聞いて怒るのは当然。そのような達人の推奨を公言することは、社会運動の手法としても妥当性を欠くものだろう
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頼んでもないどころか本当に止めてほしいと強く拒絶している人に対し、「福祉事業に従事」できるよう「慈悲の道を示す」などという行為を是とし、それを正義と信じて疑わない人たちっていったい…。福祉ではなく信仰では?
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「ご職業は?」 「行政法の研究者です」 「まあ、行政法! それはかわいそうに。『六法に入れてもらえぬ行政法』のクセに、司法試験では必修科目なのかよと糾弾される。やりたくてやっているはずはないですよね」 「いえ、私はーー」 「ですよね、すぐおやめなさい。福祉に繋がることができますよ」
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会話が通じない人の例(Bの方:規制の強度の話をしているのに規制の要否の論点だと何故か思いこんでしまい勝手に反発するという例) A「過剰な規制をする法律は不合理だ」 ↓ B「は?規制は必要ですよね?」
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「いいね!」1つの事象から「歴史修正主義…に同調するかのような振る舞い」と決めつけ、博士で歴史学者にとっては最も致命的な「歴史修正主義」というキーワードをもってきてその学者1名だけの実名を何度も挙げる)と紐付け、権威ある学者集団が連署し、世間に晒す行為は不適当。普通に恐ろしいです
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キャンセルカルチャーについては日本社会に根付いてからではもう取り返しがつかないことになると危惧する。萎縮効果が永続する社会になってからではもう変われない。現段階においてこそその不当性を定期的に表現しておく必要性は高いだろう
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幸い現時点においても憲法学の研究者がこの問題に着目し、丁寧に問題点を分析する論文を書いてくれているのがとても有難い
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キャンセル・カルチャーにつき、憲法学の観点から詳細かつ慎重な検討を加えた文献として、志田陽子「『表現の自由』のワインディング・ロード 『自由』をめぐる、ねじれと理路」現代思想50巻3号(2022年)65-79頁。インスタントにネットで読むことはできませんが、多くの人に読んでいただきたいですね