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ちなみに、上記の「囚われの聴衆」事件判決(最高裁判所第三小法廷昭和63年12月20日判決集民155号377頁・商業宣伝放送差止等請求事件)の伊藤正己裁判官の補足意見がとても参考になるので、同補足意見に関する以下のツイート・ツリーも、ぜひご一読いただけますと幸いです。
twitter.com/YusukeTaira/st…
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(⑤の続き)今回話題となった日経新聞の広告は、最高裁第三小法廷昭和63年12月20日判決(いわゆる「囚われの聴衆」事件判決)の事案よりも「囚われ」の度合いが弱いですし、あるいは「囚われ」の状態があると認定できるのかも議論がありうるでしょう。よって環境型セクハラと同じ事案と捉えるのは問題です
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(④の続き)そのため、私人間の話であるからといって、憲法21条1項の表現の自由が当然に関係なくなるという見解は、憲法学では一般的な考え方ではありませんので、そういった見解は問題です
ちなみに、以前も、間接効力説(間接適用説)の考え方に関してツイートしています↓
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④の点ですが、私人間(私人間効力)の問題であることは、憲法の人権規定を無視して良い理由にはなりません
憲法学における間接効力説(間接適用説)によれば、民事法の規定の解釈適用に際して、憲法の趣旨や価値を反映させることで私人間の人権保障の実現を図るべきと考えています(最高裁判例の立場です)
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③念のためさらに「自主規制」が「表現の自由」と関係のある問題であることについて、以下のツイートの美術手帖の解説も参考になります。広く読まれるべき文献だと考えます。
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③自主規制(自己規制とも言われることがあります)が表現の自由と関係のある問題であることについて、以下のツイートの阪口正二郎教授の解説も、分かりやすく、参考になります
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③自主規制にすぎないから表現の自由は問題にならないという主張も、憲法学では受け入れられない話でしょう。例えば、以下のツイートの松井茂記教授の解説をご一読ください。表現の自由の話であることが分かります
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②の点の補足ですが、内容中立規制(表現内容に中立的な規制、時・所(場所)・方法の規制)も、表現の自由の規制に当たるという点では内容規制と同じです。規制の強度が違うというだけです。司法試験でも昔から繰り返しよく出ている話です(以下のツイートもご確認ください)
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次に①営利的表現(営業広告)にすぎないという点ですが、渡辺康行ほか『憲法Ⅰ 基本権』(日本評論社、2016)228頁〔宍戸常寿(司法試験考査委員)〕によると、営利広告・営利的表現の自由も「現在の学説は……国民の知る権利に奉仕するものとして、憲法21条によって保護されると解している」と解説されます
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まず、①低価値表現(性表現など)にすぎないという点ですが、以下のツイートのとおり、低価値表現であっても、表現の自由の問題になることは、現代の憲法学においてはほぼ明らかです
twitter.com/YusukeTaira/st…
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①低価値表現にすぎない、営利的広告にすぎない、②ゾーニング・TPOの話にすぎない、③自主規制にすぎない、④私人間効力の話にすぎない、⑤職場でのハラスメントと同じ、等の理由付けから、
日経の広告掲載・不掲載の問題は「表現の自由」の問題ではない、と主張するツイートが多く、正直驚いています
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(太宰治『人間失格』から引用↓)
「…お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」
世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。……そう言われて、ふと、
「世間というのは、君じゃないか」
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①「オタク」が許しても「世間が許さない」性表現漫画の広告(不特定多数人が見る)はNGだ
②「サヨク」が許しても「世間が許さない」反戦漫画は図書館から排除しろ
③「現代美術好き」が許しても「世間が許さない」芸術祭の補助金は出すな
便利な論法です。政府は「世間」を理由にやりたい放題できる
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地裁は、専門家組織の芸術的観点に基づく交付内定判断を尊重すべきとし、一人の俳優の不祥事だけを理由とする補助金全額の不交付決定は「違法」だと判断しましたが、高裁は真逆の判断をしました
私たちは、クラファン(CALL4)を開始しました。皆様よろしくお願いいたします!
call4.jp/info.php?type=…
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1000RT、1500いいね!有難うございます
同じく「表現の自由」関連の告知です。私がいま担当している映画等の芸術表現助成の補助金の裁判のこともぜひ知ってください↓
(拙稿)映画「宮本から君へ」助成金不交付裁判・東京高裁判決の問題点と
表現の自由の「将来」のための闘い
jicl.jp/hitokoto/backn…
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平成30年司法試験の論文答案を採点した試験委員のコメント(採点実感・法務省HP)も、「不快なものを見たくないとか,…およそあるものを見たくないという感情の保護…を当然のように制約目的として肯定…する答案」は、NGだ、と注意していますね
↓は2021年の関連ツイートです
twitter.com/YusukeTaira/st…
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以上が伊藤裁判官の補足意見の重要部分だが、これに照らすと、「見たくない表現に触れない」という利益は、常に経済的な自由を含む諸権利・利益に優越するものではない、ということが分かる。法的には、個別具体的な比較衡量を踏まえず、一方の利益だけが常に優先される、ということにはならない。
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これを精神的自由権の一つとして憲法上優越的地位を有するものとすることは適当ではないと考える。それは、社会に存在する他の利益との調整が図られなければならず、個人の人格にかかわる被侵害利益としての重要性を勘案しつつも、侵害行為の態様との相関関係において違法な侵害であるかどうかを判断→
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しなければならず、プライバシーの利益の側からみるときには、対立する利益(そこには経済的自由権も当然含まれる。)との較量にたつて、その侵害を受忍しなければならないこともありうるからである。この相関関係を判断するためには、侵害行為の具体的な態様について検討を行うことが必要となる。
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(同補足意見を引用)
他者から自己の欲しない刺戟によつて心の静穏を害されない利益は、人格的利益として現代社会において重要なものであり、これを包括的な人権としての幸福追求権(憲法一三条)に含まれると解することもできないものではないけれども、
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