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家がボロいせいか裏が山のせいか両方のせいで、冬になると家の中にカメムシがやたらいる。外に出しても出してもキリがない。途方に暮れて「なんでこんなにカメムシいるの!」と叫んだら、ダンナが「家の中はあったかいんだよ」と全カメムシ代表みたいなことを言う。誰の味方かハッキリしてもらおうか。
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よそのおばあちゃまが長女を見て「可愛いわねえ」と声をかけてくだすったので「そうなんですよ」と胸を張ったら「お母さんが可愛いからよね」と来たので「そうなんです、そうなんです」と鼻息を荒くした。その後、おばあちゃまの孫自慢と娘自慢を全力で盛り上げたので、全員が可愛いことで落ち着いた。
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パート先の職場、ホワイトなはずだったのに私が毎朝30分早く出社して好き勝手にそこらじゅう掃除したり車ピカピカに磨いたりしてるのを美人上司が朝礼で「皆さんも見習ってください」なんて仰ったものだから、全職員の出社時刻が半強制的に早まってしまうというという最悪の結果をもたらしました。
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なんとも頼りない儚い感じの経営ではあるのだけど、超絶シャイな店主の焼く食パンはきめ細やかでなめらかな食感で、焼きたての時なんか手でむしってそのままワシワシ食べるとどうにも止まらないくらいに美味しいし、翌朝トーストするとサクサクでまた美味しくて、他のパンが食べられなくなってしまう。
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話をしようにも聞こうにも一方的に罵詈雑言を怒鳴られ威圧され続けて危害を加えられるおそれがあるから通報してんです。話せばわかる方だとか警官目線のコメントされても困る。こっちは丸腰で低血圧で慢性運動不足の中年事務員だし、負の感情が後からくるタイプなんだ。でも、ありがとうございました。
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長女「ままち、今日○○ちゃんにぶたれて頭のてっぺんが痛い」私「○○ちゃんはどうしてぶったのかな。嫌なことがあったのかな」長女「あっ、まだお仕事の人だ」
5分後の長女「○○ちゃんにぶたれて頭のてっぺんが痛い」私「よーし、どこのどいつだ名前と住所を教えなさい」長女「ままち、おかえり!」
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せっかく本を読もうとスタバ来たのに、背後の席で香水ムンムンまき散らしてる20代後半テカテカツーブロックが、おそらく彼の高校の後輩あたりと思わしき朴訥そうな若者2人を相手にネットワークビジネスの勧誘トークを朗々とおっぱじめたので、盗み聞きに忙しくて本どころかコーヒー飲むのも忘れてた。
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パン屋さんのレジで店員さんが袋詰めしてくれる間、買ったパンからチョコチップやレーズン、チーズが焦げたカリカリなどがポロポロと落ちると、悲しくて「もういいです」って叫んで泣きながら店を飛び出したくなる。でも、もう大人になってしまった私は黙ってお会計を済ませて、静かにパンを食べます。
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「花が咲いたから」っていうの、人間が酒を飲む理由の中で最も愛すべきやつ。
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同じビルの別の会社からマヨネーズ届けてくれたこの紳士、すごいエラい人でした。マヨネーズ忘れをきっかけに仲良くなり、最近では週に1、2回ランチご一緒してる。何がどう転ぶかわからない。楽しい。
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ワーワー泣いた後、ダンナにメールだかメッセンジャーだかで面談の内容を「○○と○○と○○ができない。○○もできないし○○もダメだから就学に不安があるって」報告したら「全部、次男くんの可愛いところだ!」と朗らかな言葉が返ってきて、そうだよそれが次男の可愛いとこじゃんねって立ち直った。
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晩ごはんの時に次男がガールフレンドについて「勉強ができる運動ができるとか優しいとか可愛いとか、それもまあそうなんだけど、そんなんじゃないの。ああいう人が他にいないから言葉にできない」とモジモジ語る目がキラキラ輝いていた。誰かや何かを好きになることは誰かの目をキラキラにしますね。
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小学校5年の頃の折り合いが悪かった担任のことを恨んでいないのは、修学旅行先の旅館で就寝時間を過ぎて廊下に出たら泥酔した担任が座り込んでいたから、ここぞとばかりにスリッパで頭を何回か引っぱたいてスッキリした後、学年主任の部屋に行って「○○先生が大変なんです」と告げ口をしたからです。
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これゴールデンウィークにピッタリの情報だと思うからメモ取ってもらいたいんですけど、イカの塩辛をごはんにのっけたとこに粉チーズと黒胡椒かけると意外と美味です。あればパセリなんかちょろっと散らすと彩りも香りも良く、そりゃもうごはんが進んで進んで、そして我々もまたごはんと共に進むのだ。
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部活の大会前で帰りが遅くなった次男が、家の近い先輩女子と一緒に暗い夜道を歩いて帰ってきたという報告を受けて「でかした!ジェントル!レディファースト!青春!夏休み!エモい!甘酸っぺえ!」など合いの手を入れながら盛り上がったら「親なんだからもうちょっと落ち着いて聞いて」と厳しかった。
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ブッコフで買った100円の古びた文庫本にどう考えても自分がした買い物のレシートが挟まってた時は驚きました。私が売って私が買うブッコフ。私とブッコフの間で揺らぐ本。ブッコフが私の本棚。そうしていつしか自宅とブッコフの境界線が曖昧になって、いつかは全人類が清水アキラと親戚になるという。
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わりと山奥に住んでいます。ここらにはヤマビルっていう厄介な吸血ヒルが出現します。って聞いたことはあったし注意喚起の看板なんかよく見かけるものの実際に遭遇したのは先週でした。山から降りてきて足がムズムズするな?とズボンの裾めくったら、細長いナメクジみたいなのが脛を這っておりました。
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次男がモジモジしながら「学校の先生に手紙を書く時のお作法を教えて」と言うので理由を聞いたら「その先生の教えかたがすごく上手で、先生のおかけで苦手教科の入試問題で満点が取れたから、お礼を伝えたい」だって。お作法よりも何よりもそれそのまま書いて届けたら先生きっと嬉しいよ。私も嬉しい。
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職場の上司、コロナに感染休暇に入る部下からの電話に「全然、謝らなくていいです。っていうか謝るのホントやめて。いつ誰だってなりうる事だから。どうにかするから」って明るく受け答えしててカッコよかった。そう伝えたら「だって私が休む時あんな謝りたくないもん」と笑っててまたカッコよかった。
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夏休み明けから不登校気味だった長男が今朝は何事もなかったように登校してゆきました。玄関まで見送ってドアが閉まった瞬間、そのままへナッと座り込んでしまった。たった数日でも子供が学校に行けない状態というのは大変な緊張状態で、その緊張が本人に伝わらないようにまた別の緊張をしているから。
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人間の、おそらく誰もが持って生まれるどうしようもない孤独とさ、ある程度の年齢で折り合いというか諦めというか決着がついて、すとんと落ち着いちゃうじゃないですか。あの孤独と一人で戦って、モガモガもがき苦しんでる期間を若さと呼ぶのかもしれないと最近やっと落ち着いた私は思ったりしました。
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昔、地元で有名な高級蕎麦屋さんに行って一人前オーダーしたら店員さんが「一人前でいいですか?うちの一人前は量が少ないから皆さん二枚ずつ頼みますよ」って言うから、なんか腹が立ってキャンセルして出てきたことがあってさ。誰もが少ないと認める量を一人前って言うのはなんかむかつくっていう話。
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好物のシャインマスカットを食べながら「しょっちゅうシャインマスカット買ってるね」と不思議そうな次男に「あなたたちが小さかった頃と違って、手っ取り早く喜ばせる手段が少なくなって、それでも喜ぶ顔が見たい私は、ない知恵とパート代を絞り出して好物を与えているのです」と正直に説明しました。
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どうしても「攻殻機動隊」が思い出せなくて「なんだっけ?あの貝殻戦隊みたいなやつ」と口走って以来、我が家では貝殻戦隊になってしまったから実写版はスカーレット・ヨハンソンが胸に帆立貝くっつけて出てきそうで楽しみ。
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「親から大切にされてるとか可愛がられてるとかってあんまりわからないかもしれないけど」と話しかけたら子供たち全員「わかる」と口を揃えたので、伝えたかった「おまえたちが本当に大切で可愛い」は中止して「わかってるならチューさせろ」と叫びながら追い回し、子供たちが逃げ回る遊びをしました。