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ああいうひねくれていじけた悲しいおっさんは私の中にもいて、私は自分の中のおっさんに「そんなことないよ」と伝えたいがために誰に対しても等しく最低限の親切や礼節を欠かさぬように振舞っているようなところがある。
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パート先の同じビルで働いてる感じ悪いおっさんに無視されても無視されても、そっぽ向かれても挨拶したりエレベーターの扉を押さえたりし続けてもうすぐ一年になろうという今日。おっさんの口から初めて出たのは「俺みたいなのにそんなことしなくたっていいんだよ」というなんとも物悲しい言葉だった。
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ダンナが家事できないことなんか百も承知で結婚したけど、まさかブルーレット置くだけも置けないとは思わなかった。詰め替え渡して「置いてきて」つったら一発目で中身全部トイレに流してきたダンナ可愛い!
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でもよくよく聞いたら「次男くん、東京スカリツリーとか行きたいんだ」と妙にはっきり目的地が決まっており「珍しい電波人間つかまえに」とDSのゲームで何らかのアイテム入手を目論んでいることもわかった。なんだ。お母さんドキドキしちゃったよ。
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ダンナが寝込んでて出かけられないGW初日の午後、次男と買い物に出かけたら外が爽やかな晴天で。後部座席の次男に「旅行できなくてごめんね」と声かけたら「このまま二人でどっか遠く行っちゃおうか?」という古い恋愛映画みたいな台詞が返ってきた。次男の中身はイタリア人男性の可能性ある。
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PTA総会のための有給申請を出したらエラい人から「いいですね5連休ですか」と言われて思わずそんなら貴様もPTA役員にしてやろうかあああああ!!!って心の中で絶叫しながら目を伏せて「申し訳ありません」と謝罪した時給900円ちょいボーナス無。一億層活躍社会、腹立つ!酒を飲む!
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長く精神を患っている人が「満開の桜を見ると絶望して死にたくなるんです」と語った。桜の花を見ると大ハッスルするタイプの私は、満開を思い描きながら、わかったような顔をして頷くことしかできませんでした。完全にはわからない。でも、帰り道で桜並木を通ったら少しだけわかるような気もしました。
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ご祝儀袋に水性サインペンで名前を書きました。筆ペンじゃなきゃとか字が下手とかそういうの最近やっと気にならなくなってきたよ。なんたって中身お金だもん。お金を貰ったら嬉しくてペンの種類とか字とか気にしなくないですか。私だったら気にしない。お金の力はすごいんだ。
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お散歩中して近所の桜の開花具合を調べていたら、長男が「桜の木から出てる樹液、べっこう飴っぽく見えるけど超苦いんだよ」と教えてくれた。そんなもん食うなよ…と思っていたら「昆虫ゼリーより苦いよ」と続いた。そんなもん食うなよ。
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「花が咲いたから」っていうの、人間が酒を飲む理由の中で最も愛すべきやつ。
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長い長い独居の間、テレビを見ててもラジオを聞いてても常に手元にチラシと鉛筆を置いて初めて知ったことや言葉を書き留めている祖母でした。たまに会うと書き留めた紙から面白そうなのを選んで「こんなおかしな漢字があるんだって」とか「こういう風習の国があるんだって」と聞かせてくれました。
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7歳の子供つってランドセルがデカすぎて後ろから見るとピカピカのランドセルに手足ついて歩いてるみたいになっちゃう大きさなんですよね。本当に幼くて小さい、そんな頃から一人で働いて、学校に行けるわけもなく、工場にいる年上の女工さんから字を教わって新聞紙の切れ端で漢字を覚えたそうです。
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もうすぐ101歳になる祖母に関東大震災の話を聞いたら「その頃は平塚の製糸工場の女工だった」って言うから、10代後半くらいかな?と思って計算してみたらまだ7歳かそこら。記憶違いかと思ったけどよくよく話を聞いたら、そのくらいの年齢で貧しい家庭の子供が奉公に出されるのは普通だったと。
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今うちのヒゲ猫が脱走こいたから窓から外に向かって「ヒゲちゃーーーーん」と叫んだところ、裏山で草刈りしている見ず知らずのむさいおっさんがめっちゃ手を振ってくれました。うちの猫だったらどうしよう。
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ガチガチの体育会出身の人がアポなしで母校の体育館を訪れたら後輩が全員練習を中断して駆け寄ってきて大きな声で挨拶をしてくれて、そのお辞儀が角度までピッタリで「体育会系っていいな」と改めて感じた、というエピソードを涙ながらに語ってくれたのに(うわ体育会系ってヤダ)としか思えなかった。