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防衛大学校初代校長の理念として「すぐに役立つことはすぐに役に立たなくなる」という言葉があります。学校を卒業し、社会に出てからは「すぐに役立つこと」ばかりすると「将来性のないその場しのぎ」ばかりになるなぁと実感しました。すぐ役に立たない知識や行動のほうが人生を豊かにすると思います。
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メンタルが強いことが素晴らしいと言われることが多いですが、メンタル弱い人のほうが絵や文章が上手かったり、思慮深かったり、人の気持ちがわかるケースがあります。経済的に稼ぐにはメンタル強いほうが良いことが多いと思いますが、メンタル弱い人には他の才能があることが多いと最近思います。
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南九州の部隊に転属になったら甘口の醤油に慣れる必要がある。彼らにとっては醤油は甘い口こそが故郷の味であり、しょっぱい醤油は異端なのだ。そんな九州で先輩から宴会の際「醤油2種類あるけどどうする」と言われ「あっ、甘口と辛口があるんだ」と思ったが「甘口」と「本格派甘口」の選択肢だった。
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地下鉄サリン事件の後、警察がサティアンに突撃する時に「防護服を貸してくれ!」と自衛隊に依頼があった。自衛隊は心よく貸したが、警察は防護服の心得がないので、腕章を防護服の安全ピンでさして止めてしまった。穴の空いた防護服は二度と使えない事になってしまうのでこの辺りの認識が非常に大切。
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これは警察が悪い話ではなく、緊急時に各組織で装備や物品などを貸し合うときはしっかりと運用までも抑えておかないと上手く効果を発揮できない教訓です。
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陸自の格闘教官に「街で歩いていて一番怖いのはどんな人ですか?」と聞いたら「一見普通の弱そうなおじさん」だそうだ。理由を聞いたら「殺気のあるチンピラや不良は警戒して対応できるけど、弱そうなおじさんが急にナイフ刺しに来たら避けれない」とのことだった。だからSPはお婆ちゃんにも警戒する。
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戦場で指揮官が倒れると次点が指揮者になる。そのため最後は陸士長が指揮をする可能性もある。実戦的な訓練でベテラン陸曹が次から次へと倒され、最後には防大卒の新米小隊長とまだ20代前半3曹と新隊員の陸士だけになった。その時の状況を「機動戦士ガンダムみたいな展開だった」と同期は語った。
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僻地に勤務してる隊員に移動内示が出たと聞いたので「次の勤務先はどこ?」と聞くと「次は大都会東京!」
と返ってきた。「よかったね?市ヶ谷?それとも練馬?」と聞くと「東京都 硫黄島」というパンチのある答えが返ってきた。
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自衛隊研修があると研修先から「優しめでお願いします」「かなり厳しめでお願いします」と研修内容に対する細部依頼があることある。担当幹部は「自衛隊はココイチのカレーじゃねえ」とボヤいてた。
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世の中には「私の意見が絶対正しいマン」「異論は絶対に認めないマン」がいるのでレスバはしません。そういう人に理論整然と話しても、例外の例外を引用して反論してきます。だから「そうだねぇ~」と思い心が大切です。そして会社の上司や同僚でないことを感謝しましょう。
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戦闘訓練中に懐中時計持ってる新隊員がいた。「今どき懐中時計は不便でしょ」とツッコミがを入れると「懐中時計に弾丸が当たって助かった設定が憧れなんです」と言った。毎年一人ぐらいはこの手のタイプがやってくるのである。
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陸上自衛官は認識票(ドッグタグ)を首につけるが米海兵隊は足首に巻きつける。理由は「首は吹っ飛ぶから識別票もなくなる」と言っていた。また米軍は入れ墨が許可されている理由も「爆弾で吹っ飛んでも誰の肉体かわかるから」という意味もあると聞いた。彼らは常に実戦と死と隣り合わせなのだ。
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知り合いの自衛官は自分の子供に仕事を説明する資料として「シン・ゴジラ」を見せていると言っていました。自衛隊が登場すると「ほら、これがパパの仕事だよ」と言うそうです。こうして官品(自衛官の子供が入隊)が仕上がっていくのです。
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防大のときに卒検教官に「日本軍は南方で銃剣突撃ばかりしたから負けた」と言ったら「なぜ日本軍は南方で銃剣突撃ばかりしたか考えたことあるか?」と問われました。この問いを分解していくとテーマが凄まじく広がります。そしてこれが研究であり学問なんだと教わりました。
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北海道にいた時に飲み屋のお客さんに畜産農家の人がいました。その人に「牛は賢いんですか?」と聞いてみたら「人間の基準では賢くないが、牛は合理性を持って生きている。だから賢い」と言っていました。賢さの尺度は一つではなく、ケースバイケースで変わるのです。私は動物からそれを学びました。
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戸愚呂と呼ばれるマッチョなベテラン陸曹がいた。食生活に気を使い、ただひたすらに筋トレに励み、スーパーボディを手に入れた。だがトレーニングのやり過ぎで健康診断に引っかかり、「筋トレ禁止令」を貰い、戸愚呂はしょんぼりしていた。若手からは「100%を超えたひずみ」と言われていた。
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防衛大学校は戦術や兵器の運用、戦闘訓練をバリバリやるようなイメージがありますが、実はあまりやりません。これは「すぐに役立つことはすぐに役に立たなくなる」という初代校長の哲学からであり、教育としてはリベラルアーツを目指しています。場所も横須賀なのは世俗から疎くならないためなのです。
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強面の陸曹達が繁華街で飲んでた時に、ぼったくりBarに入ってしまった。
ありえない額を請求されるも、静かに「俺ら、組のもんだけどいいの?」
と言うと、ぼったくり店員の血の気が引いて無事に返してくれた。
ちなみに彼らは、通信組だった。
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「女性なのに自衛官になるなんて・・・女を捨ててる」と言われるがそんな事はない。女性自衛官は「力が強くてかわいい」「ご飯いっぱい食べてかわいい」等の可愛さで評価される傾向があるので自己肯定感が上がり、むしろ可愛くなる傾向がある。先輩幹部は「可愛くない女の子などいない」と言っていた。
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恐妻家の自衛官は飲み会の際「いやー、我が家の中隊長が怒るので2次会は失礼します」と言う。
なお奥さんが幹部自衛官の陸曹は
「すみません。2次会に行くと2次会に行った思考過程を聞かれるんで失礼します」と言って帰っていった。
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自衛隊辞めたい人に出会ったら「夏のボーナス貰ってから辞めたほうがいいよ」と言い、夏のボーナスを貰ったあとには「冬のボーナス貰ってから辞めたほうがいいよ」と言います。これを繰り返せば永年勤続表彰貰えますよ。
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自衛隊は最近、乾パンではなく長持ちするロングライフパンを食べる。新隊員の一人が一生懸命食べてたので、「それ美味しいのか?」って聞くと「自分は長生きしたいんです!」と何か勘違いしてた。なお昔は力を付けるために力水飲んでるやつもいた。
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米軍は自衛隊と比較して「睡眠・休養」を重視し、リラックスできる方法やすぐに眠れる技術なども研究している。自衛隊はまだまだ「寝ずに頑張る人を評価する」風潮があり、私は自衛隊辞めてから熟睡できる喜びを噛み締めた。眠りこそがストレスに対処できる手段なのである。
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日本兵を捕虜にすると最初は緊張して「絶対に何も話さないぞ!」という感じだったそうですが、何回も顔を合わせて親切にして仲良くなると「おいおい、そんな情報いいのか?」という情報や日本軍がよく使う戦術を教えてくれたそうです。日本人の帰属意識がわかるエピソードだなぁと思いました。
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とある陸自教官が「どんなに最悪な状況だと思っても仮眠の計画だけは最初に作れ」「最悪な状況は最悪への導入に過ぎないからだ」と言っていた。特に地震での災害派遣では徹夜で活動し、一息つこうと思った瞬間に本震がやってくることがある。組織は短期決戦ばかりを想定してはいけないのである。