326
親族や友人による奴隷化は大抵「騙されて」売り払われてしまっていたようなのだ。また、裁判といっても村のリーダーが適当な理由(呪術を使った、とか)をつけて有罪判決を下し、その罰として奴隷化していたのだ。
(4/24)
327
144人の奴隷のうち、40%が誘拐、24%が戦争、20%が親族・友人によって、16%が裁判によって奴隷化されていたのだ。注目すべきは最後の2つのパターンで、これは明らかに「コミュニティの内部の人間」によるものなのだ。
(3/24)
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このように、奴隷貿易の結果としてコミュニティ内部でも「奴隷狩り」が行われた結果、その状況を生き延びる経験則として定着した相互不信が、現代でも観察出来ることが予想されるのだ。
ということで実証なのだ!
(9/24)
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一度均衡状態に到れば、そこに外生的なショックが与えられない限り変化することはなく持続し、やがてそれは「文化」として定着するのだ。そして、以前にも紹介したように文化は世代を越えて受け継がれ、現代にまで影響を及ぼすのだ。
twitter.com/bot99795157/st…
(8/24)
330
これはホッブズが言うところの「万人の万人に対する闘争」やゲーム理論の「囚人のジレンマ」に似た状況なのだ。この状況では不信が最適な生存戦略であり、社会的には相互の不信がいわば「均衡」状態となって安定してしまうのだ。
(7/24)
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こうした「身内による裏切り」はシエラレオネに限らずアフリカの奴隷供給地では幅広く見られていたようなのだ。こんな状況を生き延びるためにはどうすればいいのか?例えそれが村のリーダーや親族であったとしても、とにかく信じなければいいのだ。
(5/24)
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統計分析の結果、過去に奴隷を多く供給していた民族の回答者ほど、他者への信頼度が低いことがわかったのだ。これは全ての他者、つまり親族・隣人・政治家・異民族・自民族について一貫していたのだ。ひょぇぇ〜!!
(13/24)
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アフロバロメーターでは、
・親族
・隣人
・選挙によって選出された地方議会
・自国の異民族の人々
・自国の自民族の人々
がどの程度信頼できるか、「全く信頼できない」から「とても信頼できる」までの4段階で対象者に答えてもらっているのだ。
(12/24)
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外的なルートは、奴隷貿易が現在の制度を通じたものなのだ。これまた前回紹介したように、奴隷貿易はアフリカ現地の政治制度を破壊し、植民地からの独立を経てもなお(というか独立したからこそ)現在の制度に悪影響を与えているのだ。
(16/24)
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次にこの論文が問題にしたのは、「どんなルートで不信の文化が受け継がれているか?」なのだ。考えられるルートは内的/外的の2つなのだ。内的なルートは先に書いたように、民族内部で経験則が世代を越えて伝達されるというものなのだ。
(15/24)
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つまり、奴隷貿易の歴史が現在の制度(例えば地方議会)の機能不全を引き起こし、その結果として現在の人々が不信感を抱くようになっている可能性があるのだ。
でもどちらのルートが尤もらしいかは実証的にしか分からないから、この研究は「人の移動」に注目した追加の分析を行ったのだ
(17/24)
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そもそも信頼が何故重要なのか?経済への影響に注目すると、信用が無い相手とは契約も取引もリスキーで、そのリスクを回避する為にはコストがかかるし、取引自体を行わないこともあり得るのだ。不信に覆われた社会では経済活動は活発になり得ず、結果として低成長に見舞われると考えられるのだ
(22/24)
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分析の結果、自民族の奴隷数と現在の居住地の奴隷数のどちらも、それが多ければ多いほど、他者(親族・隣人・政治家・異民族・自民族)への不信度が高いことがわかったのだ。要は内的/外的どっちのルートもあるっぽいのだ!
(20/24)
340
ただし、効果量を比較すると、自民族の奴隷数は居住地の奴隷数の倍ぐらい大きい効果があったのだ。だから不信が継承されるメインのルートは、自分の民族の内部で受け継がれる文化や規範である、ということが示唆されていると考えられるのだ。
(21/24)
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前回の話は、奴隷貿易が多民族化や国家機構の衰退を引き起こし、その結果として経済的な低成長に至ったというものだったけど、今回の話は奴隷貿易と低成長を繋ぐもう一つのチャンネル、つまり「相互不信の文化」を見出したものとも言えるのだ。
twitter.com/bot99795157/st…
(23/24)
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今回の話は
doi.org/10.1257/aer.10…
からなのだ。
この論文は2005年のアフロバロメーターを使っているけど、2008年の調査を使った別の著者たちによる再現分析
doi.org/10.1002/jae.23…
でも結果は一貫しているのだ。計量経済学は再現分析も業績になるところが素晴らしいと思うのだ!
(24/24)
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「不信社会:奴隷貿易と他者への信頼」として追加しておいたのだ〜。
ア㊙️イさんのお尻と学ぶ統計学 - Togetter togetter.com/li/1342003
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「夫婦は子供を持つべき」という社会的圧力と「でも代理出産や体外受精、不妊治療は許されない」という社会の価値観に、極度の貧困と経済格差が組み合わさる事で富裕層向けの「赤ちゃん市場」が出来るのだ…。
「赤ちゃん工場」から妊婦19人、新生児4人救出 ナイジェリア
afpbb.com/articles/-/324…
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個人的にいま一番話を聞きたい「中の人」はコンビニ各社のデータ分析部門の人なのだ。今あえてイートインであることを申告するメリットは「法に従った」ことから得られる満足感ぐらいだと思うんだけど、どんな人が正直に申告する傾向にあるかも分析されてるはずだから、こっそりお話しを聞きたいのだ…
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うわぁ〜、ついにシンガポールでも法律になってしまったのだ…。 twitter.com/nhk_news/statu…
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気がついたら4万字ぐらい書いてしまった「奴隷貿易」について、個別のまとめを作成しましたのだ。
数日お休みを頂いたあと、次のテーマの話を始めますのだ〜!
ア㊙️イさんのお尻と学ぶ奴隷貿易(全16回) - Togetter togetter.com/li/1413102 @togetter_jpより