東畑 開人(@ktowhata)さんの人気ツイート(古い順)

76
「居るのはつらいよ」が大佛次郎論壇賞を受賞しました。この賞は過去に、国際関係など大きな社会の問題を扱った著作に贈られていますが、小さな場所で行われているケアの本がその対象になったのは意味深く感じています。応援いただいた方々、深く感謝申し上げます。asahi.com/articles/DA3S1…
77
この一年、心理士、経営者、学部生など多様なメンバーで勉強会をしているのだけど、その中にひとり哲学者がいるだけで議論が異常に盛り上がる。それぞれの現場感覚の話を、古今東西の賢人が既に考えてきたことに繋げてくれるので視野が強烈に拡大する。どんな会議にも哲学者を一人常備すべきではないか
78
イルツラのじんぶん大賞、感慨深いです。この本の半分は、臨床心理学を学ぶ人の多くが共有している基礎的な知で出来ていて、それが「人文」という文脈で評価されたのは嬉しい限り。これを機に「人間が生きていくこと」についての臨床心理学的人文知が多くの人に届けば幸いです。
79
「疲労とは休息への欲望が活性化された状態」とジャネが書いているのだがあまりに完璧で、深い定義だ。しかし、酸欠時に酸素をなんとしてでも吸おうとするようには、疲労のときに人々は休息を得ようとしないのは不思議なことだ。なぜか疲労のときに快楽を処方しようとして、より疲労が濃くなる。
80
色々な業界を見てて思うのが、若手を育てるために年長者がなすべき最も重要なことは、雇用を作ることですな。教育プログラムや訓練ももちろん大事だけど、きちんと生活することができて、学んでいるものを実践する仕事があることが、若手を育てる。雇用なしの教育はしばしば搾取のようになりますし。
81
この前授業で「自分を好きになるにはどうしたらいいですか?」というベタな質問をされたのだけど、自分という曖昧なものを直接好きになるのは至難の技だから、先に他者を好きになった方がいい。それは嫌いな自分を和らげる。とはいえ、リアルな他者を安定して好きでいつづけるのも大変なのだけど。
82
「将来の夢」についての卒論。面白かったのは子供たちが夢を語ったり、発表したりするとき、「自分のレベルにあった夢」を言わねばならぬという強い圧力を感じていること。夢みたいな夢を語ると人の目が怖いので、夢を語るためには現実を見ないといけないという諦めの装置としての夢教育。いや悪夢か。
83
「お金にならないけど素晴らしいこと」が世の中には色々あると思うのだけど、それを収益化しようとした瞬間にその素晴らしさは消し飛んでしまう。だけど、「お金にならない」と継続するのが難しいし、徐々に虚しくなりやすい。「お金にならない」にかかっているこの深い呪い。
84
先日の朝日新聞に書いた文章、こちらで全文読めるようです。 大佛次郎論壇賞・東畑開人さん受賞記念寄稿 ケアの価値見失う大きな社会|好書好日 book.asahi.com/article/130655…
85
長谷川和夫「ボクはやっと認知症のことがわかった」面白い。認知症の権威である医学者が認知症になったという時点で既に面白いのだけど、患者さんに今までデイサービスを勧めていたが、実際に自分も行くようになったらお風呂が気持ちよかった、王様気分だった、とほのぼのしてて素晴らしい。
86
思い切って「オックスフォード英単語由来大辞典」を買ったのだけど、素晴らしい。例えば“cry”はもともと「熱心に要求する」「声高に求める」という意味だったらしい。赤ちゃんが泣くとき、彼らは何かを求めてるし、よく考えたら大人が泣くときも、実はそこには何かを求めてる気持ちがあるなと思う。
87
“care”と“cure”が語源が違うのも面白い。前者は「嘆き」とか「悲嘆」の意味で、「病床」という含みもあるらしい。後者は「世話」「心配」「責任」の意味。“care”は苦しんでいる側で、“cure”はその周りで世話をする側だとのことで対照的。語源は深層を見せてくれる感じがして、素晴らしいな。
88
ああ、でも「嘆き」ということは、お世話してるのだけど、何もできないということでもありうるのか。辛い人を前にして、なんかできそうだと“cure”で、なんもできない人だと“care”なのか。
89
心理学にとって文体というのは中核的な問題だと思う。例えば、認知行動療法と精神分析、論文を一読してわかるのは文体が全く違うこと。語彙も、文の運びも全然違う。心には本質的に形がないからこそ、形を描くことを使命とする文体にこそ理論が宿る。
90
中学受験の合格発表の場で、大学受験の業者がチラシを配っているのを見るとつらい。マラソンのゴールの瞬間から次はトライアスロンを始めようとするようなもの。受験はたとえ受かったとしてもダメージがあるわけだから、しばらく休ませてあげてほしい。進学校の中1にいかにうつっぽい子が多いことか。
91
ヘッセの「車輪の下」がまさにこれでした。一つの競争に勝った途端に、本人も周りの大人ももっと勝ちたい気持ちになってしまって、あらゆる時間が競争のための時間へと組織化されていってしまって、気づくと以前に勝った分まで失っているという話。ああ、これはこち亀的でもあるし、民話的でもあるな。
92
保健室がまさにそうなんだけど、「居場所」というのは定住する場所ではなく、あくまで避難所であるのが大事ですね。普段は隠されている苦しさが束の間現れるのが居場所。いつもいる場所とか職業にしちゃうと、居場所は居場所じゃなくなってしまう。
93
相談のたびに違うスクールカウンセラーが出てくるシステムだった結果、結局相談自体を辞めてしまった子供の事例を読んで思ったのだけど、対人援助職の本質って、なんだかんだで援助技法とかプログラムではなく「その人だから」というところにありますな。だからこそ、援助職の雇用には安定が不可欠。
94
試験監督は実は監視ではなくケアの仕事。つつがなく試験が行われるように、室温を調整して、音を殺し、体調不良に対処する。まさにケア的なのは、試験監督が活躍せず目立たないときほど試験が無事に進行しているところ。逆に活躍が目立つのは悪いことが起きているとき。まさに親の仕事そのもの。
95
同じことをグルグル考えているとき、絶対に答えが出ない気がするけど、実際には半年や一年単位で違う風に考えるようになるものです。思考とはカタツムリのようで、研究もカウンセリングもそういう営みだと思う。問題は考え続けることが難しいことなので、同じことを話せる相手がいるのには価値がある。
96
この休息に効率を求めた結果、他者が排除されてしまう感じは、まさに現代の心理療法で扱われている課題だ。家族やパートナーに効率を求めてしまうと人は孤独になる。そして、孤独は疲れる。それで余計に休息に効率を求めてしまうという繰り返しをどうするかという課題。 twitter.com/ktowhata/statu…
97
大学生になぜ本を読まないのかを真面目に聞いてみたら、インターン、授業課題、アルバイトで忙しい中、本を読むのはコスパが悪いから、瞬間的に楽しめることや好奇心を満たせるものをつい求めてしまうとのことだった。本人たちもそれで良しとは思ってないだけに、大学改革とはなんだったのかと思う。
98
これ、チンパンジーでもそうだと聞いたことがあります。遊びは集団の緊張を和らげるためになされるので、正体不明の新人がやってくると「遊ぶ」。付き合いたてのカップルがカラオケとかボーリングとかで遊ぶのは不安だからで、本当に信頼できると遊ばなくても一緒にいられる。 twitter.com/MajimeShunsuke…
99
それにしても、こう次々と催しが中止されていく現実を見ると、普段の我々が日々いかに互いに接触して、影響を与えたり、与えられたりしながら暮らしていたのかがわかりますな。「社会」という当たり前すぎて見えにくいものが、実はものすごい勢いでグルングルンと人を巻き込んで動いていたのを実感。
100
以前、多くの人にWebで協力していただいた「大学で学んだ心理学が社会に出てからどう役立ってるか」の調査結果を学生達がまとめている。ケアの職業の人も、そうじゃない人も「セルフコントロール」に多く役立てている。実は心理学は非常に個人的なところで受け止められ、活かされているという話。