大学の翻訳クラス(2年生・3年生が半々ぐらい)では、余った時間に「誤訳しそうな英文クイズ」を出しています。 きのう、13人のうち、ひとりも正しく読めなかった文。 All the people that admire a person who paints like Renoir.
仕事中に萎えたシリーズその2。 某書店のサイン会で。 越「お名前は入れますか?」 客「あ、いりません」 越「(贈り物にするとか、事情はいろいろだと思いながら)そうですか」 客「名前がないほうが、ヤフオクやメルカリで売りやすいって聞いたんで」 越「……そうですか。つぎの方、どうぞ」
「ぼったくり男爵」が今年の流行語大賞に輝くかも。いや、Baron von Ripper-off をそう訳した人に名訳大賞でもいい。
両親のもとに接種券が届き、何百回電話をかけてもつながらないとのことだったので、必要事項を教わってこちらでネット予約を試みたところ、どうにか30分ぐらいで申込完了。しかし、これ、高齢者だと、よほどネットに慣れてる人以外は最後までたどり着けないと思う。この仕組み、なんとかならないのか。
機械翻訳、AI翻訳を過信してはいけない理由が、ここからの一連のツイートにとてもよくまとまっています。とりわけ、「わからないときはすっ飛ばして滑らかにしてごまかす」タイプの機械翻訳は、すぐには誤りに気づきにくいので、さらに要注意だと言えます。 twitter.com/bumicchu/statu…
amazonの書籍レビューについては、何よりまず、「梱包がひどい」とか「届くのが遅い」とかいうやつを即座に排除する(配送へのレビューとはっきり分離する)仕組みを作ってもらいたい。最初のレビューがそういうやつで★ひとつだったときに本の作り手がこうむる損害はけっこうなものなんだから。
金原瑞人さんが、出版翻訳報酬の「最低保証額制度」導入を提案していらっしゃいます。 英文ワード数か原稿用紙枚数かはともかく、自分の感覚でもこのあたりの金額かな、と思います。 ハーパーコリンズ・ジャパンについて補足すると、「あとがき料」が出ることも大きいです。 blog.kanehara.jp/?eid=716
読んでいる本に「目の前の人物の心の中の風景」という表現が出てきた。「の」が5つ続いているが、ストレスを感じない。1通りの意味にしか読めないからだ。 一方、「きみの写真」は「の」が1つしかないが、意味が2通りある。 大事なのは「の」の数ではなく、誤読される可能性を減らすことだ。
『推し、燃ゆ』を読んだんだけど、文の「体幹」みたいなものが強固だから、ちゃらいことが書いてあっても、逆に2行ぐらい読点なしの文になっても、ぜんぜんぶれないんですよ。リズムがいいし。これって、小説の翻訳において自分がめざしているものでもあるわけで、この人の書くものをもっと読みたい。
表記の統一をどうするかが話題になっていますが、とりあえず文書全体から表記の乱れを見つけたいときには、一太郎の「表記ゆれ」機能をお勧めします。こんなふうに、一瞬で五十音順にすべて洗い出してくれます。統一するかどうかは自分で決めればいい。わたしは入稿前にかならずこれでチェックします。
エラリイ・クイーン『十日間の不思議(新訳版)』、本日刊行です。刊行記念を兼ねて、一昨年《ミステリマガジン》に寄稿した文章をnoteで公開しました(版元了承済)。なぜ『フォックス家の殺人』と『十日間の不思議』の新訳にこだわりつづけたかも、最後に書いてあります。 note.com/t_echizen/n/n3…
エラリイ・クイーン『十日間の不思議』、いよいよ明後日(17日)あたりに書店に並びます。 いまから読む人は『災厄の町』『フォックス家の殺人』『十日間の不思議』『九尾の猫』の順にお読みになることをお勧めします。 まさか自分がこんなに訳すことになるとは思いませんでした。
前にもちょっと書きましたが、電子書籍だって紙の本と同じで、版権が切れれば絶版になります(数年で版権が切れるケースが少なくありません)。一度絶版になったものが復活する可能性はきわめて低いです。読みたい作品はぜひ早めに購入してください。 twitter.com/futami_honyaku…
翻訳の仕事をするための資質として、わたしが「英語が好き」をあげないのは、英語を正確に読めなくてもいいということではなく、「なんとなく英語が好き」というレベルでは話にならないという意味です。正確に読めるという当然の条件を満たした上で、日本語や読書や調べ物が大好きな人が向いています。
3点リーダーの話その2。台詞の場合、3点リーダーとダーシ(ダッシュ)のちがいは、一般にはこうです。 ……は、自分で迷ったりして言いよどんでいるとき。 ――は、何か言おうとしたのを相手にさえぎられたとき。 先日の戯曲版『災厄の町』は両方が頻出し、原文データが見分けづらくて苦労しました。
「三点リーダー症候群」がトレンド入りしているので、改めて書きますが、英文で「. . .」と「. . . .」が使い分けられている場合、後者にはピリオドが含まれています。つまり「……」と「……。」のように訳し分けるのが原則。ただし「. . .」だけ使う英文の書き手も多いです。 #三点リーダー症候群
エラリイ・クイーン『十日間の不思議』の書影が解禁となったようですね。2月17日ごろ書店に並びます。 いまから読む人は、可能なら『災厄の町』『フォックス家の殺人』『十日間の不思議』『九尾の猫』の順に読んでもらえるとうれしいです。
英文の9割ぐらいをざっと理解できる程度の語学力がある人は、日本じゅうに何百万人もいます。一方、英和翻訳というのは、残りの1割を調べたり考えたりするために9割の時間を使い、英文を読めない人が一読で理解できる文章を作りあげる仕事です。そういう作業を心から楽しめる人にとっては天職です。
エラリイ・クイーン『フォックス家の殺人[新訳版]』の書影が公開されました。12月17日ごろ発売。 これにつづく『十日間の不思議[新訳版]』は来年2月中旬刊行予定。 はじめて読む方は、可能なら『災厄の町』『フォックス家の殺人』『十日間の不思議』『九尾の猫』の順に読んでもらえるとうれしいです。
たとえばsighはよく「ため息をつく」と訳されるけど、「ため息」はふつうマイナスの感情を表すから、状況に応じて「深く息をつく」「ほっと息をつく」などと訳し分ける。感情を見定めるには、原文の隅々まで手がかりを求めて読みこむしかない。訳出によって深い読解力がつくのはそういうからくりです。
あせってるときも喜んでるときも全部「やばい」と言う若者と話しながら、ちょっと辟易していたが、古語の「いみじ」もそうだったことを思い出し、急に楽しくなった。
オバマさんの鳩山さん評はA pleasant if awkward fellowだったのか。そりゃ褒めてますよ。 The coming of clocks caused a grave if gradual change in our social life. 時計の出現は、徐々にではあるが重大な変化をわたしたちの社会生活に及ぼした。 (『日本人なら必ず誤訳する英文 決定版』A-06)
翻訳学習の市場というのはすごくて、翻訳力を伸ばすには「大量の原文を深く読みこむ」「力のある日本語の文章に大量にふれる」「大量に翻訳して修正を繰り返す」しかないのだが、「なんとかそれをやらずにできない?」という願望により新しい学習法が生まれ続ける…のは困ったものです。
鬼滅の入手困難とは別次元で恐縮ですが、翻訳書のシリーズ作品も、完結してからとか、つぎが出てからまとめてとかではなく、好きなシリーズであれば発売後数か月以内に購入して読んでいただけるとありがたいです。翻訳刊行がいったん打ち切りになったものを復活させるのは、きわめてむずかしいので。
いま、クラス生の人たちにエラリー・クイーンの作品をどれか読んで感想を言ってもらっているんだけど、圧倒的に好評なのが『九尾の猫』。デマがデマを呼び、街がパニックに陥って深刻な分断が生じていくさまが、いまのコロナ禍や大統領選の混乱を生々しく思い出させるからだ。