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話題のサイゼリヤ、第1号店跡看板に「経済民主主義」「社会貢献企業」とあったので、「ペガサス理論」だな、と思ったらやはりそうだった。チェーンストア大手が軒並み影響を受けたこの理論、70sには非営利の生協の運動理論として使われたはずで、現に各地の生協が「クラブ」に参加している。
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資本制生産を超えることを目指していたはずの生協の展開理論が、小売りチェーン大手を次々に生み出したのを皮肉と考えるべきか、それともこの小売りチェーンの大展開と万年デフレ状態が結びついているのを考えれば、こうして消費資本主義は円寂すると考えるべきなのか。
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昔に比べて学生の知識の幅が狭いなと思うことはある。だから大学院行って勉強した方がいい、という意見も分かるが、専門家と学校秀才ばかり増えてもな、とも思う。今の若い人に決定的に欠けているのは、失敗してもやり直せるチャンスであり、その失敗を経験にすることを許す社会じゃないか。
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しかしなあ、大江健三郎は、たしか小林秀雄伝来の、ある作家を読むときには全部読め、という教えも忠実に守っていたのだから、そこいらの下手な専門家などとても立ち打ちできないくらいたくさん本を読んでいるんだよな。 twitter.com/kunitachiman/s…
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『法の精神』では、個人の自由が刑罰との関連で論じられている。一つの焦点が「風刺」である。それによると、風刺が最も厳しく罰されるのは、風刺で支配層が揺らぎうる貴族政である。民主政においては権力者の抑制のため、風刺は全く自由にされる。日本の現行体制がどちらに近いかは明らかだろう。
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個人に対するネット上の書き込みで拘禁刑というのはちょっと考えられない重刑である。法律は常に弱者保護の大義名分で作られ、支配の道具となる。
ネット中傷抑止へ侮辱罪厳罰化 懲役・禁錮、「拘禁刑」に―刑法改正案を閣議決定:時事ドットコム jiji.com/jc/article?k=2… @jijicomより
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フランスが特殊なのだろうが、ウクライナ侵攻のような時事的な政治問題について、すぐに「哲学者」がコメントを求められる。共和主義の下、政策論の理論的正当化が常に要求されるからなのか。この点、哲学者が政治について語るのを回避するか、語ってしくじる(笑)日本の伝統とははっきり異なる。
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ジジェク。「ネオファシスト」プーチンに対立し、平和を求めるだけでなく、TVの向こうの惨状を生み出したのは「われわれ」であるとわきまえ、ロシアの反戦派とともに、言葉ではなく行動を変えよと呼びかける。現代の「帝国主義戦争から革命へ」テーゼ。
@franceculture franceculture.fr/emissions/la-g…
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浅田彰が、自分がウクライナにいたら、学生には逃げろと言うと思う、と言っていた(浅田が言うのは橋下のような議論とはちょっと違う)。自分も同じような立場に立ったら、学生には逃げろ、と言うだろうなと思う。他人に命懸けるのを強制したりできない。教師の分際であればなおさらである。
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公園のベンチでホームレスの排除のために記の仕切りが打ち付けられているのを見る度に、公園にホームレスの居場所も作れないで何がダイバーシティだと思う。
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ブルガリアで学卒のタクシー運転手が、社会主義時代は自由がなくて外国に行けなかったが、今は自由はあってもカネがないので外国に行けないと嘆いていた。自由主義はカネが回っているときには機能するが、ひとたびカネが回らなくなると、自由=富から排除された者たちの激しい異義申し立てに曝される。
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大分・高崎山で近年メスのボスザルが出て来たという。サルがジェンダー平等に配慮したのではなく、エサをイモから穀物に代えたのが決定的だったらしい。イモの取り合いには腕力が物を言うが、穀物を拾うのには単に手間がかかる。こうして生存のために性差が無意味になったのが大きかったのだとか。
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性差の不平等問題について、自然人類学的にはなかなか含蓄のある話だと思う。ヒトでも、男性優位は多分に軍事の重要性ゆえであり、近代ではここに工場労働が加わる。完全に人に餌付けされて、さかんに小麦の粒を拾っているサルたちの姿はそれなりに切ないものでもあったが、面白い話だった。
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性差の平等はボスとそれ以外の不平等を解消しないのだな(そうなのだろうかーメスのボスになると何がどう変わるのか)とか、力が問題にならなくなると途端にメスがボスになるのはなぜだろうかとか、色々興味は尽きない。ー「ヒトの解剖がサルの解剖に役立つ」のであって、逆ではないにせよ。
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ソ連東欧の崩壊は、確実に知的退行を招いたと思う。社会主義の理想がなくなったからではない。違う体制下に生きている人間が、同じ現象を前にしてもまったく異なる知覚をもち、反応をするという、ごく初歩的なことさえ、いまの人類にはどうやら想像もつかなくなっているからだ。
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五月三日が憲法記念日なのは、1947年のこの日に憲法が発効したからだが、そうなったのは前年十一月三日の明治天皇の誕生日に憲法が公布されたからだ。そのことに気づいてから、国家というのはあの手この手で正統性を担保したがるものだなと思ってきた。
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しかも、やってる官僚や教育に口出す経済人たちは本気で一発逆転を狙っており、流石に一発では逆転ができないので十発十中を狙うとか、真顔で確率論も学術的発見の論理も無視したこと言うので、本当に狂っている。 twitter.com/rivereastbambo…
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アルゼンチンが没落したのは、世界大恐慌の煽りでイギリス帝国の穀倉でなくなったからで、別に立憲主義が終わったからではない。立憲主義体制のもとで続いた大地主支配に終止符を打ち、曲がりなりにも国民国家の体裁を整えたのは「ファシスト」ぺロンだろう。資本主義と自由主義の幸福など稀なのだ。 twitter.com/AtaruSasaki/st…
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「若者が先達の営為を知ろうが知るまいが、それでも、若者は、いかなる人文知よりも思想史研究よりも文学が大切なものであることを銘記しておくべきである。学問も政治も、人生に寄生するものにすぎない。学問も政治も、人生の前に跪くべきものなのだ。・・・
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英語中心主義で国民の資産が減少する典型例でしょう。
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たぶん、もう日本で全く新たに仏和辞典が編纂されることはない。第二外国語教育縮小の結果、辞書の需要が減って採算が取れない。じきに、ちょっと高等な調べ物をするには、仏仏か仏英の辞典を引かなくてはいけない日が来るかもしれない。現に、中等以上のフランス語教本の類はすでにほとんど絶版。 twitter.com/isnki/status/1…
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外国語のテクストの訳読が早晩技術的に乗り越えられてしまうトレーニングとばかり思えないのは、訳読の主眼が外国語を日本語に移すことにではなく、言葉の次元でどんなふうに思考が組み立てられているかを検証し、それによって日本語自体の拘束を反省する契機になるからだと思う。
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これでテロリズムに抗して民主主義を守れとか、みんながこぞって言い、それによってますます民主主義もへったくれもあったもんじゃなくなるんだろうなあ。
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集団安保法制の頃から、権力行使が超法規的になり、個人に具現化され、対する批判が政治家個人に集中していく一方で、政治的・法的手段による責任追求ができないなら、普通はテロかクーデタが起こるはずだと思っていた。今回のテロの動機は不明だが、日本でも物理法則は実現するんだなと感じる。
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『政治少年死す』(山口音矢)に始まり、『河馬に噛まれる』(連合赤軍)を経て『宙返り』(オウム)まで、大江健三郎はWWII後日本のテロリストたちの魂を鎮めるように小説を書いてきた。とても私的な動機に突き動かされていたらしい今度の犯人に、同じことができる作家がいるだろうか。