自覚の有無に関わらず、高政はこの瞬間に「義と筋を重んじる若殿」から忌み嫌ってきた父上と同じ存在になってしまったんですよな。母上の死を守護代の座を得る策に利用してしまったわけで。本人が否定し続けてきた「血」にとうとう呑み込まれた。彼の身にも毒の血が流れている。 #麒麟がくる
「我が父にあらず」と忌み嫌い、敵意を剥き出しにする高政だけど、弟たちを始末した手口は明らかに蝮の再現だし、それに本人が気付いていない辺り、完全に「血」に呑まれている。気高いものと信奉した土岐の「血」を己で否定してしまっている。底なしに業(ごう)が深く、余りにも哀しい。 #麒麟がくる
十兵衛の判断を「どちらが正義か」という善悪の取捨で単純化しなかったのも大きい。 そんな曖昧なものでなく十兵衛自身の心の声に委ねている。 道三と高政、双方が示した国の在り方を天秤にかけた上で「初めての鉄砲に大はしゃぎする、どちらかといえば嫌いな殿」を選ぶという。 (´;ω;`) #麒麟がくる
「戦国大名たちは別に天下取りを狙っていなかった」という近年の研究を踏まえると、それまで腑に落ちなかった様々な行動に得心がいくようになるんですよな。ある種、天下取り競争という物語性からの解放であり、大名家の領国経営や「天下」との関係性が実態として見えてくるというか。
このシーン、史実を超えた政治劇の面白さが詰まっておりますな! 「美しき将軍」に武士の理想像を見て酔っている十兵衛と、「天下」の生々しさを知る政権の実務者・マキャベリストたちの温度差が本当に素晴らしい。「情」と「理」の鬩ぎ合いで、十兵衛はまだまだ政を理解できていない。 #麒麟がくる
菅田将暉さんが九郎判官義経ということはタッキー版に代表されるような「薄幸の貴公子」路線ではなく、色々な意味でやり過ぎた為に自滅していくパターンかもなぁ。同じ悲劇性でも自分にはこちらのほうが腑に落ちるので(実際、義経の政治的判断はかなりアレだったし)。 #鎌倉殿の13人
十兵衛の嘘は勿論ですが、信長が秀吉の報告を信じきっているのも最高に怖いんですよね。 この秀吉は金ヶ崎の退き陣の際に真偽不明の昔語りで十兵衛を篭絡した男なんですよ。 真実など関係なく、相手の心を突くことに長けた男なんですよ。 #麒麟がくる
近年の研究では松永久秀は平蜘蛛の茶釜と共に爆死していないという説が有力なのですが、「それならば平蜘蛛の現物はどこにあるのか?」というクエスチョンを十兵衛に対する呪いという形で人間ドラマに昇華してしまう池端先生、脱帽以外の言葉がありません。 神業の如きストーリー構成。 #麒麟がくる
「お主だけは信頼しておる」 「わしに背を向けるのか」 「何故、こうなる」 麒麟がくる世という理想に「帰依」しているかのような十兵衛は、ともすれば主人公らしく高い志から世の中を見据えているけど、一方で人間・信長が分かりやすく出しているSOSは全て視界に入らないんですよね。 #麒麟がくる
テレビの前の僕たち私たち「こんな修羅場に麒麟なんかくるわきゃねぇだろが!!!!!!!!!!!!!!(※次回最終回)」 #麒麟がくる
視聴者は岸谷直弼の悲哀を見守ってきたので桜田門外の変にとてつもない喪失感を味わっていますが、江戸から遠く離れた場所にいる栄一たちはそのようなことを知る由もなく、「悪い大老」という風聞を頭から信じ、鬼退治の快挙と喜ぶ。 「対比の群像劇」としての完成度が飛び抜けている。 #青天を衝け
改めてこの大河は「幕末の狂気」の一番恐ろしいパターンを真っ向勝負で描いているな、と。しかも、「狂気」という激しいものを感情だけで処理せず、ロジカルかつラディカルな筋立てで多面的に表現している。大森美香さんの脚本、全身が震えるくらい凄い。 #青天を衝け
幕末大河の場合、主人公サイドで焼き討ちや倒幕活動をやるときは正義の行いのように脚色することが多いのですが、テロをテロとして描くのが本作の凄味ですね。 台詞では「天下国家の為」と義挙を唱えていますが、脚本も演出も危険分子として容赦なく突き放している。凄まじいバランス感覚。#青天を衝け
藤田東湖を失ったとき、水戸斉昭は取り乱して亡骸にすがり付いた。 平岡円四郎を失った慶喜も「どうして」と慟哭するしかなかった。 格調高く聞こえる「何故じゃ」ではなく、目の前の状況を受け入れられない「どうして」なんですよね。 この台詞を選んだ大森美香さん。#青天を衝け
ここに天狗党は壊滅しますが、これすらも悲劇の発端に過ぎないわけで。 この後、水戸では諸生党が天狗党の親族をも粛清し始めます。 天狗党の残党が勢力を盛り返すと、今度は諸生党の親族が同じ目に。水戸は比喩でなく血の海と化します。 これこそ幕末水戸は本物の地獄と呼ばれる所以。#青天を衝け
篤太夫の「何で農民たちは動かねぇんだ!? あっ、そうだよ!俺たちもいきなり仕事に駆り出されて迷惑したもんな!だよなー!」というロジック、本当に良い。これは和宮輿入れなどに伴う「労役」をちゃんと描いてきたからこそ生きるシーンですよね。苦労を具体的に描かないと成り立たない。 #青天を衝け
・荒々しい喧嘩剣法 ・幕臣にちょっと反感持ってる ・武士たらんとする立ち居振舞い ・武士としての誇りを軽んじるような物言いにブチギレる ・「百姓」という栄一の出自に反応する 100点満点100000000000000000点の土方歳三です!(昇天) #青天を衝け
「この手で何十人も命を奪った」 このとき、土方歳三は既に山南敬助を喪っているんですよ……。 #青天を衝け
「公儀(幕府)はなくなるかも知れないが、日本という国に役に立つのなら、いつか徳川のお陰で助かったと言われるのなら、それも徳川の名誉」 この台詞を小栗上野介忠順に言わせてくださったこと、感無量でございます。小栗忠順という人物の魅力を余すところなく描いてくださった……! #青天を衝け
官軍崩れと新政府の失策をきっちり描く。この辺りは「英雄たちが新しき時代を切り開いた」という過去の幕末大河ではストーリー構成上、拾えなかった部分なんですよね。 「庶民」の視点を大事にしてきた本作だからこそ強い説得力を持つ展開ですし、その取捨選択の精度が半端ではない。 #青天を衝け
「時代が変わる」というのはどういうことか。これを社会のシステムを整えるという形で具体的に、且つここまで細かく描く大河ドラマは本当に貴重なんですよね。 旧幕臣もたくさん参加してそれを成し遂げていったという維新の「実態」へ誠実に向き合っている。 渋沢大河でしかやれないこと。 #青天を衝け
最後の将軍・徳川慶喜という人物の内面をここまで深く描いた大河は本当に初めてではないでしょうか(本木雅弘さんのときは後半生カットでしたし)。そして、それを演じるのが草彅剛さんで本当に良かった。草彅さんだからこそ生まれた説得力もあるわけで。そういう意味でも完璧な慶喜像。 #青天を衝け
過去の大河では維新前後にフェードアウトするか、最終回に「懐かしのあの人」的に出て退場するだけだった徳川慶喜。 その生涯を最後まで描き切った初めての大河ドラマではないでしょうか。 それを一生に一度という当たり役で見事に演じ切った草彅剛さん。慶喜役があなたで本当に良かった。 #青天を衝け
この大河ドラマの功績: 「渋沢栄一?新一万円の人?そんなにスゴい人だったの?」という疑問を「新一万円の顔は栄一しかいねぇ」と納得に変えたこと。 しかも、功績を並べて称揚する偉人伝とは正反対の泥臭い作風で。 #青天を衝け
千鶴丸が命を奪われたことを悟りながら、「小さな子になんてことを!」と激昂しない小四郎が良い。「命が軽い時代」ということを残酷なくらい描いている。 #鎌倉殿の13人