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この20年、「日本の人材力は失われた」という人がいる。でも、将棋の藤井聡太、フィギアスケートの羽生結弦、大リーグの大谷翔平がいる。経済成長が止まったこの20年でも、多様な方面での文化の発展、多様な方向での個人の能力追求は続いてきたのだ。
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家族農業はこれまで非効率な農業と言われてきたが、実は持続可能な農業として見直され始めている。家族農業は、世界の農家の9割以上を占め、資源エネルギーは25%しか使わないのに世界の70%の食料を供給している。一方、工業的大規模農業は資源エネルギーを75%も使って30%の食料しか供給していない。
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作物に病害虫が発生するのは、多くの場合化学肥料や畜糞堆肥の窒素が過多なためである。大学の農学部では、農産物を作るには肥料が欠かせないと教える。無肥料でできるなどとは教えない。では、山林の樹木は肥料もやらないのになぜ大きく育つのだろうか。
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種子法が廃止されたが、もう一度、国は種子を守る姿勢を見せてほしい。農業にとって種は命である。種が手に入らなくなれば農業が成り立たない。それでは、国民の命も保障できない。種子は国の責任で守ってこそ国民の命も農業も守ることができる。
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種子法が廃止されて、多国籍企業による種子の寡占化が進んでいる。かつて日本では1993年、「平成の米騒動」があった。冷夏の影響で米の作況指数が74まで下がった。各地でいろいろな品種が栽培されていなかったら、もっと低い数字になっていたであろう。種子の多様性が失われることに危惧を感じる。
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学校給食に有機農法のお米を入れたい。全国の水田の2%を有機にすれば、全国で100%有機米給食が可能になるという。
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世界の種子市場の約7割弱、農薬の8割弱をたった4社の遺伝子組み換え企業が握っている。遺伝子組み換え企業から種子を買わなければ農業ができない時代になろうとしている。人類共通の財産である農民のタネが奪われようとしているのだ。
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キューバの著作家ホセ・マルティは、「食料を自給できない人たちは奴隷である」と述べている。高村光太郎も「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」と語っている。未来を予測する力のある人は皆、食料自給の大切さを訴えている。自給率37%など恥ずべきだ。
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ウクライナ戦争で世界の食料が不足しつつある中、政府は今なおコメを作るなと言い続けている。一方、麦、大豆、野菜、そば、餌米、牧草などを作る支援として支出していた交付金をカットするという。農業支援というより農家を苦しめる政策ではないか。このままでは耕作放棄地が拡大するだけである。
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日本の食料自給率はなぜ下がったのか。よく言われるのは、日本の農地と農業生産力は限られているのに、食生活の変化に伴う食料重要が増大したため、対応しきれなくなった、というものだった。しかし、本当は貿易自由化を進め、輸入に頼り、日本農業を弱体化させる政策を採ったからだったのだ。
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3.11の福島原発事故の恐ろしさを目の当たりにした国民は、誰もが「もう原発はやめよう」と思ったはずだ。それが再稼働、新増設に政策転換するという。再生可能エネルギーを増やす努力もせずに、ウクライナ危機を口実に燃料高騰や電力不足を言う。二度とあんな事故は許されない。
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1973年、当時のバッツ米国農務長官は「日本を脅迫するのなら、食料輸出を止めればよい」と発言している。また、米国ウィスコンシン大学の教授は「食料は武器で標的は日本だ。直接食べる食料だけでなく、日本の畜産のエサ穀物を米国が全部供給すれば日本を完全にコントロールできる」と発言している。
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コメは日本で唯一自給できる穀物である。世界的食料不足が予測される中、日本はもっとコメの生産に力を入れるべきだ。水稲には連作障害がまったくないので、安定した持続的農業生産を維持できる。また、コメの生産向上は農家の経営基盤を安定化して、農業者の自信や志気の向上にもつながるだろう。
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お金を出せば食料と生産資材が海外から買える時代は終わった。不測の事態に国民の命を守るのが「国防」というなら、国内農業の振興も立派な安全保障である。国防費を5年で43兆円にするというなら、農業分野にも年間で5兆円くらいの予算をつけてほしい。
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全国の小中学校給食を国が負担しても年間5000億円。コメ農家を支えるためにコメ1俵9000円の販売価格と生産コスト1万2000円との差額を主食米700万トン全てに補填しても3500億円。全酪農家に生乳1キロ当たり10円補填しても750億円。防衛費5年で43兆円に比べたら微々たる金額だ。食料も安全保障である。
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鈴木信弘東大教授が指摘。グローバル種子企業に便宜供与をした案件。
①種子法廃止
②種の譲渡
③種の無断自家採種の禁止
④遺伝子組み換えでない(non-GM)表示の実質禁止
⑤全農の株式会社化
⑥GMとセットの除草剤の輸入穀物残留基準値の緩和
⑦ゲノム編集の完全な野放し
⑧農産物検査規則の改定
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国産レモンにはポストハーベスト農薬(防カビ剤)の使用は禁止である。しかし、輸入レモンにはポストハーベスト農薬の使用が許可されている。日本は米国の圧力に屈して二重基準を作った。「禁止農薬でも収穫後にかけると食品添加物に変わる」というウルトラCの分類変更で散布を認めた。
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日本ではジャガイモの収穫後農薬散布は禁止されているが、米国産ジャガイモについては、2020年、農薬(殺菌剤)ジフェノコナゾールを、生鮮ジャガイモの防カビ剤として食品添加物に分類変更して散布を可能にした。その残留基準値も0.2ppmから4ppmへと20倍に緩和した。米国からの圧力の結果だった。
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日本が輸入する米国産牛肉には成長ホルモンが使用されている。しかし、米国では牛肉に「オーガニック」とか「ホルモン・フリー」と表示された牛肉が売られていている。米国でも、国内向けやEU向けの牛肉のホルモン・フリー化が進み、日本が選択的に「ホルモン」牛肉の仕向け先となりつつある。