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日本の食料自給率は37%である。ひとたび世界的な食糧危機がくれば日本人の大半は飢える。日本はいつから農業を大事にしない国になったのだろう。日本の農業人口はこの30年、つるべ落としで減少してきた。
1990年 480万人
2008年 300万人
2016年 192万人
2019年 168万人
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ヨーロッパ(EU)は、温暖化防止の切り口から農業の25%をオーガニック(有機農業)にすることを決めた。
①オーガニックを25%といままでの3倍に。
②農薬を50%削減。
③畜産や魚への抗生物質も削減。
④肥満を防止。
⑤アグロエコロジー、有機農業、自然農法、精密農業を推進する。
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昨年12月の種苗法改正によって、種苗の開発権を持つ者の権利が大幅に強化された。種子企業に登録された登録品種を、農家は自由に自家採取できなくなった。しかし、そもそも各地の伝統的な種苗は、地域の食文化と密接に結びついた一つの大きな「共有資源」であり、私的所有になじまないものであった。
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最近、日本の中小企業を「生産性が低い」と批判し、再編して数を半分に減らすべきだと主張する人たちがいる。ターゲットは、日本の中小企業を守っていた「中小企業基本法」の改正。成立すれば、秀逸な技術を持つ日本の中小企業は淘汰され、M&Aが盛んになるだろう。中小企業の持つ多様性が失われる。
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このコロナ禍で、日本中の中小企業が厳しい経営環境に置かれるようになった。わが国には、創業100年超えの老舗企業が10万社以上もある。創業1400年の建設会社や創業1300年の旅館、創業1200年の和菓子屋などは、世界に誇るべき伝統文化である。中小企業を守り育てることは、喫緊の課題である。
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国鉄民営化について、かつて北海道のある町長がこう語ったという。「国鉄が赤字だ、赤字だというけど、消防署が赤字だ、警察署が赤字だと問題にしますか?って。『公』とは、赤字や黒字で測ってはいけないものだ。公共の交通を目先の利益だけで測ったから、過疎の拡大という深刻な結果を招いたんだ」
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コンクリートやプラスチックなど地球上にある人工物の総重量が、同じ地球上の植物や動物などの総重量(生物量)を上回ったと推算する論文をイスラエルの研究チームが発表した。20世紀初めには人工物量は生物量のわずか3%だったというから、環境への負荷もすごい勢いで増えていることになる。
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ロシアのアブラムチェンコ副首相は、遺伝子組み換え種子がロシアに入ってくるのを防ぐため、穀物や野菜など輸入種子の品質管理を強化する法律を起草したと述べた。同氏は「ロシアは大量の種子が必要である。遺伝子組み換え作物のない市場を確立することは食料安全保障にとって重要だ」と述べた。
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私たち日本人は、水と安全はタダだと思っている。だが蛇口の水をひねっておいしく飲める国は、世界中にたった16カ国しかないのだ。日本の水道の水なら、トイレの水だって安全に飲むことができる。2018年12月に水道法が改正された。日本人の命の綱である水を、安易に民間企業に譲り渡してはいけない。
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日本も学ぶべきだ。韓国のソウル市は、国公立と私立を問わず、今年から市内のすべての小中高校(特殊学校含む)で給食を無償化すると発表した。同市は2011年から学校の給食無償化の取り組みを始め、学年ごとに対象を拡大してきた。今年から小中高1348校の約83万5000人が給食無償化の対象となる。
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除草剤ラウンドアップと、その主成分グリホサートがもたらす健康被害は、発がん性だけでなく、さまざまな分野で明らかになっている。発達障害など子供たちへの影響、妊娠や出産への影響、さらには世代を超えて受け継がれる悪影響などがある。いま世界では禁止を含む規制の流れが強まっている。
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スイスのグローバル企業ネスレは、こんな警告を発している。
◯2025年までに、世界の人口の3分の1はきれいな水にアクセスできなくなる。
◯2050年になると世界の全人口のほぼ全員が、きれいな水にアクセスできなくなる。
◯人類は水の奪い合いになる。だからこれから、高い値段がつけられるだろう。
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2020年の世界の軍事費の推計額は1兆9810億ドル(約213兆7700億円)だったという。このうちのたった7%を使うだけで以下のことができるのに。
①飢餓の8億人に1年分の食料費 980億ドル
②難民2千万人にテントと毛布 1億ドル
③全世界の地雷を撤去 330億ドル
④全人類に安全な水と下水道 90億ドル
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種苗法改正で、自家増殖が原則禁止された。農家が作物の種や苗を自家採取し交換しあうのは、種や苗が人類共通の大切な資源であることを理解しているからである。この権利を奪うことは何者であっても許されない。かの米国でも特許法で守られている品種を除き、農家の自己増殖は禁じられていないのだ。
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モンサント社から突然、遺伝子組み換えナタネを栽培していると身に覚えのない通告を受けて以来、モンサント社と闘ってきたカナダの農家、パーシー・シュマイザーさんが昨年10月13日、89年の生涯を閉じた。シュマイザーさんは何度も来日し、タネが作り手である農民のものであることを訴えていた。
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飲食店が可哀想だ。「ご協力いただく。ご協力いただけない場合は命令、それでも駄目な場合は罰金」。ご協力いただくって言葉は丁寧だが、その後はまるで脅し。
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高校生の30%、中学生の24%、小学4〜6年生の15%がうつ状態にあると2021年2月10日、国立成育医療研究センターが発表した。コロナ禍だが、それにしても中高生の3〜4人に1人が「生きていても仕方がない」と思っているのは大変なことである。いまの政治のあり方が子供たちをここまで追い込んだ。
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日本の大豆の自給率は約5%。大豆は日本人の食生活にとっては欠かせないものだった。味噌、醤油、納豆、豆腐はみな大豆が原料だ。また日本人は田のあぜ道に大豆を植えた。米作りに必要なチッ素を補給するためである。こうして日本人の食と農は育まれてきた。だが、その自給体制が風前の灯となっている。
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農業が始まって以来、多様な品種を作ってきたのは農民である。「種子は農民のもの」という考え方は、これまで世界中で当たり前のことだった。その基本的な思想が種苗法改定で崩された。農民であっても育成権者の許諾なしには、以前のように登録品種から自由に種子を採って自家増殖できなくなった。
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農業が始まって以来およそ1万年の間、種子を採り、育て、選ぶことで多様な品種を作ってきたのは農民である。品種改良で作られた登録品種も、もともとは農民が守ってきた在来種が原種だ。そこには許諾料などという概念ななかった。なぜなら種子は空気や土と同じ共有財産だったからである。
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日本政府がなぜPCR検査に消極的だったのか、いまになっても分からない。
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種子法の目的は、種子を農家に安価に安定的に供給することで農作物の安定生産を続けることだった。そのことで国民への食料の安定供給が可能になる。種子法を廃止したことは、真摯に種子栽培に取り組んできた種子農家の誠意に背くものである。また、農家の生活と国民の生活を軽んじるものでもあった。
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廃止された種子法は、わが国における食料増産や良好な食料を安定供給することを立法趣旨としていた。これまで日本では、約1000種の多様な品種の稲が栽培されてきたが、種子法が廃止された結果、今後は品種が絞られていくだろう。民間の品種が中心となって市場に出回り、銘柄は集約されると思われる。
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種子法が廃止されて以降、都道府県の農業試験場の職員数が減少し、試験場の予算も削減されている事実が明らかになっている。農業競争力強化支援法8条に基づき、都道府県の種子生産や供給の事務が縮小の流れになっているとも伝えられる。日本の農家を守る国の支援がますます減っていく。