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ただあの夢の中で、1人だけ皆に反対した人がいた
「食べさせてあげましょう?」
「皆やめて、いいじゃない」
彼女も襲撃の犠牲者
あるサーヴァントが好きで、私と揉めたことがある
「夢の中では、よかった優しい人だった、仲直り出来たって思った」
「でも違う…あの人は死んでも私が嫌いだったんだ」
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職員皆と食事
でも私の皿だけ奪われる
「駄目だ」「藤丸立香、お前は駄目だ」
頬をはたかれ 背中を押された
「絶対食うな」「出て行け」「はやく」
押され、押されて、苦しい…
「意識戻りました!」
目が覚めると病室
ずっと昏睡状態だったらしい
夢の中の職員は、全てカルデア襲撃の犠牲者だった
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周回から戻るとマシュが青い顔で近寄る
「お怪我は!?今までどこに?」
「え いつものクエストだよ」
「どなたとですか?」
「いつものメンバーだよ フニャカガホと黒髪長足とサナヤーラランと」
「…その名前のサーヴァントはここにいません」
「ほんとだよほんとだよほんとだよ」
先輩は昏倒した
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職員が藤丸立香宛のチョコを盗んだ
始皇帝からの仙丹
「…これで!」
それを飲んだ
「馬鹿な事を!」
他の職員に詰られてもこれで不老不死と笑う
「えーそなたが飲んじゃったの?」
と、始皇帝
「対象が違うと効力がなぁ
毒耐性もないし」
苦しみ出した職員
「やはり有害だったようだな!はっはっは」
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マシュとカルデアに帰る途中
後ろから声
「はやく先いってよ」
「!」
「はやくいけ」
走ってもついてくる
「はやく」
「追い越して下さい!」
「やだよ」
もう動けない、その時
「いえ、貴方が先に逝くのです」
キンッ
いつの間にか合流した頼光が俺達の背後の空を切った
それきり声はなくなった
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強敵と戦闘中
「うちに任して先いきよし」
「!?でも酒呑童子さっき宝具食らって」
「なに見てはるんだか
当たっとらんよ、ピンピンしとるさかい…早よ」
マスター達が去った後
彼女の首が ずるりと落ちた
「流石に魔性特効は痛いわぁ」
宝具は当たっていた
「戦闘続行
うちここからが長いでぇ?」
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職員が幽霊を見るように
キッチン、廊下
皆同じ姿を見てるらしい
「不思議だね、マシュ」
「はい、皆さんに特徴を伺ってきました!」
「…背は160センチ位で、痩せ型
白髪まじりの黒髪 右頬に黒子があり服は灰色のセーター…」
「うわああ!」
「先輩!?」
「母さん!母さんだ!母さんなんだ!!!」
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「そんな怖いことあったの!?」
「はい」
「う〜塩盛っとこ!塩!」
「…勿論あけてはいけないものだと分かったから拒絶しました」
「でも…去り際に」
うう…はやくどこか強いカルデアを乗っ取って…
オレのカルデアを救わなくちゃ…
「…と」
「きっと今まで乗っ取っては失敗してきたのですね」
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「おーい マシュ 開けてよ」
「この部屋に鍵はかかっていません」
「手が離せないんだ マシュ〜」
「扉は感知式の自動ドアです」
「おお〜い 急いでるんだ」
「マシュ〜オレだよ〜〜」
「私の先輩は女性です!!」
「…」
「…他の所じゃ上手く行ったのに
くそっ」
部屋の前の気配は消えた
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病室には髪の毛一本残っておらず
結局『病死』と報告書に記載した
その後彼女は今まで通り自由奔放に過ごしている
しかし違うのは、彼女のコレクションが1つ増えたこと
雅さも希少性も無い、凶骨にも劣るような薄い骨
たまに彼女はそれに酒を注ぐらしい
「死んだら下戸もなおったやろ?」
おわり
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しばらくすると扉が開いて血塗れの酒呑童子が
俯いてとぼとぼと出てきた
それはまるで、
「酒呑!?な、泣いておるのか!」
パッと顔を上げた彼女は
ゾッとする程満面の笑みだった
「茨木…まぁた
けったいなことばかり言うんやねぇ」
「鬼はなぁ、泣かへんよ
鬼は嗤うんや」
「嗤うんやよ」
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「…酒呑童子はさ、あの人のこと好きだったのかな?」
「あ〜〜!汝!なんっにもわかっておらんな!」
「愛するものか!
やつは酒呑を愛していたかもしれんがな!
やつは酒呑に与え、何も望まなかった
だから酒呑は奪って、奪いつくした
そうして酒呑は義理を果たした
鬼の礼を尽くしたのだ…きっと」
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ばり、ばり
「大してイケメンでもあらへんかったねぇ」
ばり、ばり
「骨も貧相やし」
ばり、ぐち
「鬼にもの渡すってのはこういうことや」
「酒や肴じゃ足りんわ どんな貧相な体でも、
命まで奪って食らい尽くす、それが鬼や!」
「あんたはんころしたのは病やない、うちや
ぜーんぶ、うちがもろたわ」
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バタバタ
「なんや騒がしいわぁ」
「旦那はん、そんな急いでどおしたん?」
「そういえばあのしつこい痩せっぽちのあれ、最近みぃひんけど…」
「…は?」
「末期症状?明日まで持つかどうか?」
「…ふぅん あ、そ」
「…なら急がなあかんね」
数刻後
彼女はスキルで周りを酔わせ侵入し事に及んだ
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「酒呑童子さん、髪飾りです」
「珍しい肴だと、よければ」
「日本の上等な着物だそうです、迷惑じゃなければ」
「…あんたはん うちに何をさせたいん?鬼だって分かっとるんやろ?」
「ええ、分かっています
でも望むものはありません
ただ、そうしたいんです」
「勝手やね
…ほんまにつまらん男」
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「…これを」
「奇奇神酒やないの」
「大切な素材やから
飲んだらあきまへん!ってマスターに言われてなぁ
…あんたはん大人しい顔して」
「盗んでませんよ!
ボーナスが現物支給になったので、頼み込んで」
「…ふぅん、それで?うちに酌でもさせるかえ?」
「いえ、下戸なので」
「…つまらん男」
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「止めないと…」
「やめい!」
茨木童子が叫ぶ
「よいか!吾も酒呑のことを全て分かるわけではない!
でもこれはわかるぞ!
あんな死にかけの痩せ細った男なぞ
わざわざころして食べるものか!
ならば理由がある
だから…」
「…わかった」
ばり、ばり
「…ほんまに、最期までつまらん男や」
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まずい、まずいといいながら彼女は骨と肉を食べ続ける
「や、やめろ!」
あまりの事にマスターが止めようとする
すると
「旦那はん、邪魔したら
あんたはんでも手加減できへんよ
いねや!!!」
普段ならありえない彼女の語気に肝をつぶし、全員部屋を飛び出した
誰も彼女を止められなかった
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「私は前ここで撃たれた…だからもう行けない
後はあんたがやるの」
「指示も下手で、トロくて、素材も足りなくて、いつもギリッギリで、危なっかしいあんたが!」
「あんたが、やるんだ!」
そう叫ぶ彼女は血濡れだった
なんとかボーダーにつき、素材を確認するとゴーストランタンが5個増えていた
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私には幽霊が憑いてる
それも、私自身
「そこはスキル使って…そう」
最初は驚いたが無害
親切だし
「勝てた!」
「…気を抜かないで」
ついに幽霊と人理修復した
しかしカルデア襲撃時にいきなり襲われた
「何で?」
「さっさと行け!」
「…じゃないと成り代わりたくなる
…世界を救え!ばーか!」
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マスターが聖職者のサーヴァントを遠ざけるように
仲の良かったジャンヌも、ゲオルギウスもマルタも
そして部屋に篭り独り言を言う
「…一体どうしたんでしょう」
「俺、聞いたよ」
ムニエルが言う
「最近死んだ両親の幽霊がマイルームにでて、励ましてくれるらしい」
「消えて欲しくない、ってさ」
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マシュと私の髪の毛が細くなり抜けた
歯もグラつき、顔にもシミがでて皺が寄る
「急速に老化してる」
外部からの攻撃の形跡はない
「一体どうして…」
調べると聖杯が1つ消えていた
「マシュ、無理かもだけど
おばあちゃんになっても一緒にいられたらいいね」
「はい、先輩!」
願いは叶っていた
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「ぐぬー!」
先輩は毎日筋トレをします
特に重いものを持ち上げるトレーニング
「そろそろ休憩に…」
「ありがと、あと二回やったら」
少し心配です
「マシュ、気持ちは分かるけどあの子の気持ちを汲んであげて?」
「?」
「あんなに頑張るのは、二度と貴方を瓦礫の下敷きのままにさせないためよ」