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それから変なことばかり起きた
季節外れの彼岸花が咲いたり
村はずれの廃屋が燃えたり
「あいつらのせいだ!山神さまの呪いだ!」
村中その話だった
そのうち
夏風邪が流行るのも
窓ガラスが割れたのも
誰かが鎌で怪我したのも
いじめっ子の家にカラスの死骸が置かれたのも
全部「呪い」のせいになった
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山を2人で歩いている
「先輩」
「?」
「私怪我をしました」
え、と横を向こうとすると
「見ちゃだめ!」
反対からマシュの声
「私じゃありません!」
「頭が割れました」
「足が取れました」
声は街の入り口まで続いた
門をくぐった時思い出した
「マシュはカルデア待機だ…」
隣には誰もいなかった
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#2021年自分が選ぶ今年の4枚
#FGO
「そこにいる」を描こうとした一年でした
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SNSにて
「とりあえずやってみた。初心者ばっかで余裕勝ち!聖杯あざーす。これで推しを120にできるわ!」
「勝った!結構接戦だったーってかバサカが強い!これ月に何回できるの?」
なお、負けたという報告は一件も無かった
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キャメロットの村近くの崖に揃えられた二足の靴
「まさかここから…」
でもここの人達のじゃない、これは
「私とマシュの靴だ」
私達のじゃない、なのに何故
靴の側に手紙
自分達では恐ろしくサーヴァントに読んでもらった
中は一言
「私たちは世界を救えませんでした」
崖下を覗く勇気はなかった
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「はやく逃げなきゃころされる!」
玄関に走ってドアノブを掴む
が
「ぎゃっ…!?」
ドアノブは真っ白に凍り付いていた
握った手はそのまま貼り付き動かせない
(スキル 凍える吹雪)
不気味に優しい声が窓から響く
「どーれーにーしーよーうーかーなー」
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まずい、まずいといいながら彼女は骨と肉を食べ続ける
「や、やめろ!」
あまりの事にマスターが止めようとする
すると
「旦那はん、邪魔したら
あんたはんでも手加減できへんよ
いねや!!!」
普段ならありえない彼女の語気に肝をつぶし、全員部屋を飛び出した
誰も彼女を止められなかった
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「あああわらわの!
わらわのマスター!今も冷たい土の中か!
よくも!よくもよくもよくも
これもわらわの滅びの業の定めであるならば!
消え去る前に焼き尽くさねば!
全てこの身も燃やした後にあの子の骸を抱きしめてやらねば!!
ああ可愛い いとしいそなた
まっておれ
この茶々がすぐゆくぞ」
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映画「陰陽師」が好きなので
蘆屋道満の戦闘ボイスが明かさせた暁には、ぜひ戦闘不能の時に
「安倍晴明イィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
や
「おのれ晴明イィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
などと大絶叫して退場してほしいです
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異聞帯で訪れた家で
歓迎をうけ食事が出た
喜んでマシュの分まで食べ切ったぐだこちゃん
お礼を言ってすぐ家を後にした
「どうしたんです?親切ですし、もう少しいれば話も聞けるかも」
「…舌が痺れたの あれ 毒が入ってた」
「食べる所ジッと見てた ニタニタしながら」
そこには二度と戻らなかった
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人理修復を進めるうち
強敵が分かるようになった
なんでかって
びっしり纏わりついてんの
倒された私やマシュ達が沢山
キャメロットの騎士達なんか姿が見えないくらい覆われてた
別に害もなければ益も無かったけど
勝った時彼らがいっせいに
「「「いーーなーーー」」」
って叫んだのは流石に怖かった
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「肉も焼かないと…」
「生で平気や
あんの牛女、バクバク食べてピンピンしとったさかい」
口に入れた肉は生臭かった
肉を食わせられる日が何日か続いた頃
「まぁそろそろ頃合いやね」
「ぼん ほなまた」
気がつくと見知らぬ道路にいた
交番に駆け込む
3日しか経っていないつもりが1ヶ月経っていた
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結局3人とも県外に引っ越した
僕はいつのまにか「よそもん」から「村の子」になった
その間もアビーと遊んでた
皆前より【通ってはいけない道】に近づかなかったから
かくれんぼ 鬼ごっこ 川遊び
本当は気づいてた
僕が来ただけで噂になったのに
金髪青い目のアビーの話を
皆なんでしないのかなって
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「あ、そのサーヴァント宝具5なんだ!」
フレンドが言う
「ねぇ、頂戴?」
「…そんなこと!出来るわけない」
「出来るよ!」
「だって…
私達は『藤丸立香』じゃないか」
そう言って同じ顔が近づく
瞬間、私のサーヴァントが相手の藤丸立香の首を切り落とした
「お前は私の『藤丸立香』じゃない」
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「かわいそうに 食わせてもろてないんやねぇ」
「…」
「お母はんと2人なんやろ?甲斐性なしやねぇ」
難しい言葉、でも母さんをバカにされた気がして言い返した
「あらぁ 立派やわぁ偉いなあ」
「偉い子にはご褒美や」
出されたのは血の光る生肉だった
「ぼんは刀使えへんから、先に切ったったわぁ」
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お巡りさんに話すが信じてもらえない
「本当だって!神社の女の人に!」
「…いいかい藤丸君
君が行方不明の間にその神社の川で大雨から鉄砲水…洪水が起きた」
「君の◯◯町は巻き込まれて壊滅してしまったんだ」
家はぐちゃぐちゃに壊れていた
母さんの遺体はどんなに探しても見つからなかった
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藤丸立香はさらに恐ろしいことに気づいてしまった
「じゃあ霊基変還された記憶も共有される…?」
恐る恐るサーヴァントに聞いてみた
「ああ、勿論!そういう仕組みみたいだからな!
なに?どういう気分なのか知りたいか?知らない方がいいぞ、プリズムに変還される感覚はその、色々と、堪える」
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きっとアビーが「山神さま」なんだ
「山神さま」は子供を誘って攫う
だからあの道は通ってはいけない
大人たちの話
アビーは僕を攫うのかな
だったら何で助けてくれたのかな
村の皆は今は優しいけどやっぱり怖いし嫌だ
父さんと母さんは引っ越してから喧嘩ばっかり
僕
僕、アビーに攫われてもいいや
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結局追い出された
寂しい 悔しい 悲しい
「あ」
あそこのカルデアはどうだろう?
マスターの魂がからっぽだ
もう一年はかえってないみたい
皆きっと『藤丸立香』が目を覚ましたら喜んでくれるよね
「あそこなら、きっと」
「私のカルデアになってくれる」
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マシュが怪我し、背負った
ナイチンゲール達と合流すれば治療が
姿が見える
「おーい!マシュが!」
パン
乾いた音
マシュの頭を婦長が撃ち抜いた
「…な、何を!?」
「あなたの精神を蝕む雑菌を消毒しました」
「まだ分からないの?彼女はカルデア待機でしょう」
マシュの死体はどこにもなかった
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「昨日学校でさ」
「さっきお母さんが」
先輩が不思議な事を言うようになった
「あの、学校とは…」
「あ、夢だったわ あはは」
だんだん『夢』の話は増えた
ある日の戦闘中
「マスター!指示を!」
「…めて」
「はやくはやく覚めてよ こんな怖い夢」
先輩の『夢』の世界はこちら側になっていた
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「皆さ、藤丸立香は間違えても令呪や石でコンテできると思ってるでしょ?
違うんだよ
あの瞬間に「負けた誰か」が切り離されるの
本体は気づかないだけで、藤丸立香じゃない何かは令呪を失い永遠に彷徨う」
「あなた今までいくつ彼らを生み出した?
数えきれないよね!
だって私もその1人だから!」
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「止めないと…」
「やめい!」
茨木童子が叫ぶ
「よいか!吾も酒呑のことを全て分かるわけではない!
でもこれはわかるぞ!
あんな死にかけの痩せ細った男なぞ
わざわざころして食べるものか!
ならば理由がある
だから…」
「…わかった」
ばり、ばり
「…ほんまに、最期までつまらん男や」