126
今の感染の波を越えたら娘ふたりにクリオネ柄のワンピースを着せて京都水族館に行こうと計画中「俺、家でゆっくりしとく」と言う中学生の息子は想定内だったけれど、たわむれに言ってみたんですよ
「オオサンショウウオのでかいぬいぐるみ買ってあげるから行こうよ」
「えっ、行く」
行くんだ。
127
2月の手術から半年になる娘の定期健診。
術後ひどく肥大していた心臓が随分小さくなり、心不全の数値は目標値。自然に閉じればベストと言われていた心臓に人工的に開けられた孔は結局閉じなかったけど、ECMOと人工呼吸器と人工透析器に繋がれていた半年前を思えば、結構頑張ったと思う。
偉いぞ3歳。
128
娘②、ほんの少し状態が安定してきた様子、週末の補助循環装置離脱を目指すそう。昨日の普段はとても朗らかな執刀医先生には珍しい暗い表情は、今日はほんのり柔和で依然厳しい状況を口にするものの
「ホラ、ウチの娘は心臓以外の内臓は超屈強ですから」
私の言葉に笑いながら頷いていたから、多分
129
うちの4歳が
「おうじさま(羽生結弦さん)がおはなしをしているのやから!」
と言ってちっともお風呂に入ってくれません。
多分ですけれども、初恋が盗まれた瞬間を見ました。
現場からは以上です。
130
術後42℃を最高値に38℃からほとんど熱が下がらないままの娘②は、鎮静を減量して徐々に覚醒中。挿管の為に痰が酷く30分に1回の頻度で吸引して痰を取る。それをとても苦しそうにしながら
「コノシウチ、ワスレマイゾ...」
そんな闘志の片鱗をナースに見せるのが凄くこの子らしい。強い、そして怖い。
131
医療者に感謝のライトアップ素敵なんですがただ重病者のケアユニットは窓が無いか外を眺める造りになっていないのに加えて私の知っているドクターやナースは頑健な心身に対して叙情性が仕事してないタイプの人が多いのでやはり感謝を示すにはお手当とかお手当とかお手当がベストかとあとご飯とフトン。
132
昨日の痙攣の原因は明確にならず。点滴の調整をして様子を見るらしい娘②は熱も下がらないまま、瞳だけはくるくると動くもののまだ手も足も末端が不規則に動くだけ。手を握って、足を動かしてという言葉に反応しない、ただ
「末娘ちゃん、痰取る?」
そう言った私の手を振りかぶって叩いた、大丈夫。
133
PICS、集中治療後症候群が強く疑われる娘②は、座位の維持と歩行が困難、嚥下はヨーグルトをひとつあとは経管栄養、身体機能がずいぶん落ちた。
何より一言も喋らないし笑わないし、始終物悲しい顔をしていて、死線を超えた人間は強いと言うけれど多分それは違う。
3歳児も、こんなに傷つく。
134
小児循環器の方の主治医、娘②を3年担当してくれている先生が
「外科の先生と話したけど抜管はまだ微妙でもSpo2は肺の調子が整ってからまだ伸びる。あの子、動き出したら相当暴れるで」
院内で偶然会った私に『いつでも付き添い出来るように準備しといて』と言った本日ICUから小児病棟PICUに移動です
135
娘②の閉胸完了。以前とは違う抜糸が必要な縫合で主治医からは
「傷は目立つかもしれません」
でもとにかく閉じられたのだからそこは。
ICUのナースが持ち込みのドキンちゃんのぬいぐるみを見て「好きなんですか?」と聞くので「性格がソックリ」と伝える。これから徐々に覚醒したら大変ですよ。
136
身長約170cm3人の子を産み終わり骨盤周りは若干隠したいお年頃なので普段マキシ丈のスカートかガウチョを着る民なんですがアレ階段昇降の際、裾を踏むのを防ぐのに片手でスカートをほんの少しつまみ上げて楚々と階段を駆け下りたりしてその時だけほんのり乙女になりませんか、ならないですかそうですか
137
『音楽は一生のお友達』と仰ったのはうちの10歳のピアノの先生ですが、楽器というのはほんのひととき一緒にいただけでも多分ずっと優しい友達でいてくれるのであって昔々吹奏楽部だった私の友達はコントラバスです。好きな楽曲は『宝島』。
ではリプ欄にあなたの楽器と好きな楽曲、はいお願いします。
138
娘②ICU12日目。状態に大きな変化なし、絵本『ぐるんぱのようちえん』を読む。誰にも必要とされなかった不器用なゾウの子の話
「ぐるんぱはしょんぼり、しょんぼり」
の所で娘②が瞼を微かに動かしたのは「アタシ別にしょんぼりしてませんけど?」と言う意味だと思う。意識は無くても娘②、強い。
139
140
秋から冬なんだか忙しくて近所のスーパーくらいしか行けなかった私が今日突然KALDIに行けることになり、病児を丸抱えしている身としてはこれはお正月のハワイでヒルトンにお泊まり級の僥倖なもので静かに盛り上がってしまって何を買ったらいいのやら。KALDIに行ったら皆様は何買いますか。
141
入院中、病棟の廊下を駆け出そうとする娘にはいつも「チアノーゼになるから走らない!」と不穏なことを言うのですけれど、お隣の子のママの「そんなに笑うと髄液がでてきちゃうよッ!」という文言は更にパンチの効いた新鮮さで、初秋の空かと思しき程にママとその子が透明に爽やかなのもなんだか良い。
142
この夏、家族全員で車に乗って出かけた先が
『マイナンバーカード受け取りの為に子ども全員の面通しが必要だった市役所』
それしか無かったのに、3歳は兄と姉と自分、3兄妹を乗せた車の後部座席で
「オデカケタノシー!」
と言って始終はしゃいでいて兄と姉に無言で抱きしめられていた。
143
病気と闘って0歳や1歳で向こうに渡った顔も名前も知らない小さなお友達はあの子もあの子も今年が新盆かと、同じ新盆を迎えた祖母の写真の横にラムネを並べてみた。もう呼吸が苦しくなくて線も管も付いていなくて何処にでも行けるあの子達、お母さんの所に走って帰ろう、向日葵と入道雲を横目にして。
144
娘②、声帯の異常は無いと言われるも未だ発語も表情も殆どないまま。今日はオペ後初めて点滴ルートの取り直しで掠れ声を上げて少し泣く
「アカンまた嫌われる」
そう言ったのは主治医、でも反応出来てるやん大丈夫やと笑った
春休みを迎えた小児病棟は戦場の忙しさ。娘②もナースも先生も皆頑張れ。
145
ずっと同居していたお母さんを亡くしてすっかり気落ちしていた知人に、最近体調はどうですかとLINEしたら
「若い子に貢ぐためにバリバリ働いています」
とか仰るものですわ中年女性をねらった詐欺かと思ったら添付画像がコロコロの柴犬やったので、それならしょうがない、稼ぎなさい、貢ぎなさい。
146
園児に娘の状態を簡単に説明してほしいと言われて、娘が生まれつき人と違う形の心臓である事、手術をした事、でも全部を直す事が出来なくて今は酸素をつけている事、それから
『でも それいがいは いま ここにいる おともだちと だいたい おんなじです』
そんな文章を書いた。仲良くしてね。
147
半月血圧を計り続け「病院行こう」という結論になりまして先天性心疾患児でプロの病児の3歳に「病院ついて来て」とお願いしたら快諾の上
「こわくないよ」
「サイケツはされるかも」
など適切なアドバイスを頂き、採血は痛いかと聞きましたら「わりと」という忌憚の無い返答も得まして採血イヤだ。
148
入院生活と呑気な親のせいでオムツ外し周回遅れの娘②に
「娘②ちゃんトイレ行こうよ」
そう言ったらまるで宮廷でのダンスのお相手を断る女王の如く
「アリガト、キョウハイイノ」
威厳ある態度で断られましたがそうはいかないのですよ陛下。
149
150
退院カンファ(事前打ち合わせ)。主治医、看護師、医療SW、保健師、訪問看護師、訪問PT、病院PTが勢ぞろいし、上限一杯リハ入れてと言ったPTも、迫力の訪問看護マザーズも、いずれ外来も俺が引き継ぐんやしと言った主治医も
「今日は皆、私の為にありがとう」
みたいな顔していた娘②も全部凄かった