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ウンベルト・エーコの名著『中世の美学:トマス・アクィナスの美の思想』の翻訳が刊行されます。エーコの処女作です。エーコが後に生み出す作品群を理解するためにも、西洋中世の美の思想を理解するためにも必読の一冊です。私も「解説」を寄稿しています。
amzn.to/3UUWyaG
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アリストテレスの「奴隷」概念が、大航海時代における「新大陸」の「発見」のなかで、「原住民」の奴隷化にどのような役割を果たしたか。そしてその奴隷化に対抗するためにもアリストテレスがどのように生かされたか。実に刺激的な『アリストテレスとアメリカン・インディアン』の復刊は実に喜ばしい。 twitter.com/Iwanami_Shinsh…
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書物を読む時に線を引くことに意味があるのは、単に重要な箇所を目立ちやすくするためだけではない。むしろ、いかに自分が大事な箇所に気づいていなかったかということを、次に読むときに気づきうるためにこそ、線を引くことの意味がある。線を引かなった箇所にこそ真の宝が眠っている可能性が高いのだ
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『神学大全』の日本語訳は、今年度末で新刊では買えなくなります。いずれ役に立ちそうな巻は買っておきたい人におすすめなのは、第9巻(人間の目的・幸福)、第10巻(感情)、第11巻(徳)、第12巻(悪徳)、第13・14巻(法論)です。哲学・神学・西洋思想史に関心のある人には必ず役立つ時が来ます。
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「結論の出ない無意味な議論」という意味で「神学論争」という言葉が使われることが多いが、実は「神学論争」ほど明確な結論を生み出してきたものはない。神が三位一体であることやキリストが「神性」と「人性」を有することなど、古代末期の「神学論争」を経てほぼ不可逆的な仕方で決定的に確定した。
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ハロウィンは古代ケルトに由来する祭儀で、もともとキリスト教のものではないので、多くのキリスト教事典には項目自体が存在しません。その中で、『岩波キリスト教辞典』には「ハローウィーン」という項目があります。四方田犬彦による『デビルマン』という項目さえ含んでいる辞典だけのことはあります
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聖書の理解を劇的に深める簡単な方法がある。聖書を、「思想」を語っている書物としてではなく、「出来事」を語っている書物として読んでみるというやり方だ。キリストの「誕生」という出来事、「奇跡」という出来事、「死と復活」という出来事。聖書はこうした「出来事」についての証言の書物なのだ。
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リーゼンフーバー先生がお亡くなりになりました。信じることと哲学することの双方を極限まで突き詰めて統合し、たたずまいそのものによって信仰と知恵の光を周囲へと分かち与えてくださる本当に稀有な存在でした。先生が与えてくださった実に多くのものに感謝しつつ、その永遠の安息をお祈り致します。 twitter.com/JesuitsJapan/s…
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岩波文庫版の『神学大全』の稲垣良典先生の翻訳(「徳論」と「法論」)は、『神学大全』完訳版(創文社)に基づいていますが、今年はじめに先生がお亡くなりになるまで手を入れ続けたものになっています。トマス研究に生涯を捧げた稲垣先生がこの世に残された最後のお仕事といって間違いないものです。 twitter.com/201yos1/status…
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サザン『ヨーロッパとイスラーム世界』(ちくま学芸文庫)いよいよ発売されました。キリスト教世界とイスラーム世界の相互関係を理解するための基本書中の基本書です。岩波現代選書から出ていましたが長らく品切れでした。入手可能なうちに手に入れておくことをおすすめしますamzn.to/35DFFX9 twitter.com/201yos1/status…
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キリスト教の「異端」の立場は大抵、「正統」よりもわかりやすい。それは不思議ではない。「異端」はそもそも、多面的な考え方を含みこんだ複雑な「正統」の立場から、複雑な面を捨象して、一つの面のみを選択してそこを過度に強調していくものなので、一見したところシンプルで分かりやすいものになる
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上田閑照先生がお亡くなりになりました。西田幾多郎、西谷啓治の系譜を受け継ぎ、ドイツ神秘主義と禅仏教のはざまで続けてこられた探求は、宗教・宗派の境を超えて、宗教的探求に従事する多くの人々にとって文字通りの導きの糸でした。『エックハルト』など数々の名著があります。ご冥福をお祈りします
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実は、その本のその部分は読んだことがなかった。別の大変優れた研究者がその部分について紹介したものを読んだことがあったので、その程度の内容だと思いこんでいたが、遥かに豊かだった。書物は誰かの紹介とかではなく、そのものをきちんと読まなければいけないという基本中の基本に改めて立ち返った
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「神」が何であるかが解明され尽くしたとすれば、それはもはや「神」ではない。また「神」が何であるのか全く分からないのであれば、それを「神」と呼ぶ理由はもはや存在しない。この両極を避けながら、人間の把握を超えた「神」の常なる新鮮さを現前させるところに、神学という学問の存在意義がある。
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「キリスト教は世界宗教だ」ということを逆の観点から言えば、「キリスト教はいつどこにおいても外来の宗教だ」となる。それは、常に、人々が当たり前のものとして受け止めている文化や文明、世界観や人間観を根源から問い直させる、「世界の外」からの教えだからこそ、「世界的」たりえてきたのだ。
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家で過ごす時間が長くなっている今、子供にも大人にもお薦めしたいのは、『ナルニア国物語』です。とにかく面白いので一冊手に取ると、自ずと次の巻に手が伸びます。しかもキリスト教に対する絶好の入門書にもなります。いつかこの書物を読む講座を開講したいと思っています。bit.ly/2IhMtRa
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「読解不能な文字」で書かれたトマスのテクストを見て気付かされるのは、彼の思考が何ものかの迫力によって驚異的な仕方で促され続けていたという事実です。普通の活字読むと忘れてしまいがちな緊張感に満ちた思考の現場へと、「読解不能な文字」で書かれたトマスの自筆原稿は立ち戻らせてくれるのです twitter.com/201yos1/status…
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キリストが死刑になった事がキリスト教の原点にある以上、キリスト教が死刑に反対する事には、かなり大きな神学的問題が含まれている。キリストが死刑になった事が死刑反対の根拠になるとも言えるし、死刑がなかったらキリスト教が今のような仕方では生まれなかったとも言えるbit.ly/2OTz9o7
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「この本だけは役に立たないだろう」と長らく思っていた本に、ふと眼を通してみると、一気に新しい視野が開けてくることがある。それは実は何ら不思議なことではない。「この本だけは役に立たないだろう」と思い込ませる根っこにあった先入観こそが、新しい視野の開けを阻害する主な要因であったからだ
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「悪魔」など荒唐無稽な幻想に過ぎず、そんなものが実在するわけはないと人間に思い込ませることこそが悪魔の基本的な戦略だ、というルイスの非常に有名な見解が『悪魔の手紙』では開陳されます。日本語訳は二種類あります。誰もが楽しみながら読めるキリスト教書の一つです。amzn.to/2YTGqs3
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アウグスティヌス『神の国』全五巻は、この機会に入手しておかないと、当分手に入りにくくなるかもしれません。キリスト教神学の古典中の古典というだけではなく、歴史哲学という分野を確立した画期的な著作です。 twitter.com/iwabun1927/sta…