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夢にきり丸が出てきたんだけど、私は何故か町に居て、きり丸が物凄い剣幕で
「消費税が増税されるってのになんで反対しないんすか!?だから土井先生は婚期逃すし七松先輩は学園壊すんです!!」
って私には荷が重すぎる責任を押し付けてきた。その二つだけは私が何してもどうにもなんねえよ……。
452
これは、とある本丸の話である。
その本丸の審神者は、優等生であった。真面目で誠実、責任感のある人であった。だが、四角四面で融通の効かない人でもあった。
例外を受け付けず、定例、恒例、年中行事といったものを大事にしていた。上からの指示には従うが、自ら意見を言う事はなかった。
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これは、とある刀剣男士の話である。
その刀剣は、とある本丸で顕現された。彼は一目で主を気に入り、毎日楽しく過ごしていた。練度を上げ、近侍として主を支えていた。
その刀剣にとって、主は宝物だった。とても大好きで、とても大切で、なにものにも変え難い存在だった。
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これは、とある本丸の話である。
その本丸の審神者は、祖母の本丸を継いだ引き継ぎ審神者であった。とはいえ継いだのは一振の短刀と本丸だけだ。
「おーい、朝だぞ!」
その短刀は、包丁藤四郎。祖母が晩年になると常に懐に差していたという、形見のような刀剣男士である。
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これは、とある本丸の話である。
その本丸の審神者は、特定の部屋から出ようとしなかった。初期刀すらも殆ど顔を見た事がなく、仕事はいつも紙に書いたものをこんのすけが持ってくる。
手入れすらも、審神者は札を使って一瞬で済ませてしまう。その札も、こんのすけが持ってきて代行するのだ。
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これは、とある刀剣男士の話である。
その日、ある国に所属するとある本丸に、異例の事態が起きた。突如ゲートが開いたかと思いきや、この本丸では未顕現の刀剣男士が遠征から帰還してきたのである。
「凱旋だよ! ……え?」
その刀剣、信濃藤四郎は遠征用の袋に沢山の冷却材と砥石を抱えていた。
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これは、とある本丸に譲渡された刀剣男士の話である。
刀剣男士の譲渡は、本来そう簡単に出来るとこではない。余程のことでもない限りは、刀解か連結、習合をする事で調整出来るからだ。そして今回、その余程のことが起きた。
「なんだぁ、その目はぁ。」
不動行光が、譲渡されてきたのである。
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これは、とある本丸の話である。
その本丸の審神者は、賢くなかった。理解力に乏しく、基本的には何事も一度で説明を理解出来た試しがない。当然審神者の仕事も失敗が多く、その度に初期刀である歌仙が頭を抱える羽目になった。
だが、審神者は素直であった。馬鹿だからロクな嘘も吐けないのだ。
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これは、とある本丸の話しである。
その審神者は、四歳で主となった。孤児であった審神者は霊力の高さのみで審神者として選ばれ、この本丸に来たのだ。
この本丸は、ほんの数日前に審神者を亡くしたばかりであった。
刀剣たちは戸惑ったが、四歳の幼子を主と認める以外に道はなかった。
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これは、とある刀剣男士の手紙である。
主へ。
息災だろうか。
こちらは、まあ変わらない。
先日、鶯の声を聞いたよ。知っているだろうか、鶯は春告鳥とも呼ばれている。春が来たんだ。
主にとっての春はなんだい。
さては花見の団子、とか考えただろう。
全く、君らしい。
また花見がしたいものだ。
461
これは、とある骨董屋の話である。
その骨董屋は昔からあった。いつからあったかと聞かれれば、現店主はよく分からないと言うのみだ。なんせ現店主は前店主であった祖父の死をきっかけにこの店を継いだだけなのだから。
とはいえ、今頃骨董屋など流行りはしない。店主は試行錯誤して店を盛り立てた。
462
これは、とある本丸の話である。
その本丸の審神者は、写真を撮る事が趣味であった。プロではないし、カメラも良いものを使ったりはしていない。普通に端末を使って撮ったり、学生時代に安売りで買ったデジカメを愛用していた。
本丸へ来る時も、審神者は自分が撮った写真を持って来た。
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これは、とある本丸の話である。
その本丸の審神者は、親も審神者をしている審神者家系の出である。その為、審神者は普通の審神者よりも早い段階で刀剣男士と触れ合い、知識を得ていた。政府職員にも知った者が多く、審神者は早々に抜きん出た存在になった。
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これは、とある本丸の話である。
その本丸の審神者は、甘え上手であった。審神者は末っ子気質が強く、事実現世では年の離れた長子達から可愛がられ、親からも大切にされていたらしい。そのせいか、審神者は基本的に大切にされる事に慣れていた。根も素直に育っていた為、ありがとう、と笑うのだ。
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これは、とある刀剣男士と審神者の話である。
その本丸は少し前に閉じた。審神者が高齢になり、引退をしたのだ。刀剣男士達はおよそ半数が審神者の知り合いに引き継がれ、残りのおよそ半数は潔く刀解を申し出た。
審神者が現世へと戻り、本丸は静かに幕を閉じた。静かな幕引きだった。
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刀剣男士という生き物は、生真面目で、不器用で、そしてとても愛おしい。
その本丸には、子どもが居た。短刀のことでは無い。審神者の子どもだ。というか家族がそこに住んでいた。審神者、伴侶、そして子どもの三人家族である。
なかなかに特殊な状況であったが、彼らは割と順応していた。
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その人間は、十五で審神者となった。審神者という職が生まれてすぐ、まさに一期生と呼ばれる年代だ。一期生に課せられた使命は現代とは桁違いのもので、当時多くの審神者が心を、身体を病んだ。
それでも、その審神者は生き延びた。優秀だったわけではない。術に秀でていたわけでもない。
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これは、とある本丸の話である。
その本丸に配属された審神者は、その胸にロザリオを提げていた。初期刀の歌仙はそれを見て切支丹かい?と聞いたが、審神者は首を横に振った。
無神教の審神者にとって、クリスマスは全力でパーティーをし、盆正月はなんとなく墓参りするのが普通だった。
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とある本丸の話をしよう。その本丸を治める審神者は、優しいが少々頭が悪かった。騙されやすいと言うか、人を疑うことを知らないのだ。簡単に幸運の壺を買いそうな人種であった。
そんな審神者であるから、それはもう時の政府からも良いように扱われている。ノルマは減らさず、雑務を増やすのだ。
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とある本丸では、今まさに主たる審神者の代替わりが行われようとしていた。およそ五十年に渡り活躍した審神者の引退は、顕現されし刀剣男士達からも穏やかに受け入れられている。初期刀である陸奥守吉行が、退く審神者の隣を立った。
「これから、よろしゅうの。」
新しい審神者は、前任の孫である。