151
これは、とある刀剣男士の話である。
その日、ある国に所属するとある本丸に、異例の事態が起きた。突如ゲートが開いたかと思いきや、この本丸では未顕現の刀剣男士が遠征から帰還してきたのである。
「凱旋だよ! ……え?」
その刀剣、信濃藤四郎は遠征用の袋に沢山の冷却材と砥石を抱えていた。
152
今日コンビニでセルフの紅茶注文したら、機械のとこに研修中って名札した若い子が寄ってきて
「そ、それ、私も飲みました!あの、美味しかったです!はい!」
って教えてくれた。店長さんがめっちゃ見守ってて、恐らく初めての声掛け的なトライだったんだろうな。私も笑顔で楽しみですと返した。
153
なんていうか、がっつり付き合ってるのも好きなんだけど、逆に付き合ってるかどうか定かにしない割に気安いやり取りをしてるとこを目撃したい気持ちもあんのよ。わかるかな、これ。
例えて言うなら、食事の時に
「それ、こいつ食えねえからこっちに回して。」
みたいな発言を聞きたいのよ。
154
イタリア人の口説き(ただの挨拶)って面白い。
「寒くなってきたね、君の美しさに太陽が嫉妬して帰っちゃったのかな?」
とか
「おはよう、朝から美の女神に会えるなんて今日は幸運な一日だ。」
とか。
これをシラフで言うんだから強いよね。
155
今何となくハイキュー脳で、北一時代及川から一度も頭を撫でられた事のない飛雄が、烏野に入ってよく頭を撫でられるようになって、そこで初めて(俺、あの人の後輩じゃなかったんだな)という認識してたらと思うと胸が痛い。
以降、及川の事を「中学が同じでした」としか言わなくなる。(飛雄なりの配慮)
156
なんか、豊前とか笹貫とか巴って、審神者や周囲からの評価をめたくそ素直に受け入れてそう。
「俺、いけめんってやつなんだろ?篭手切がいつもそう言ってくれっからな!」
「主が俺をエロいって言うから、俺多分すごいエロんだと思うよ。」
「俺は主のいつも可愛い巴ちゃんだ。」
157
鍛刀は、必ずしも狙った刀剣男士が来るわけではない。資源の数である程度の刀種は絞れるが、それだけだ。
そうして、大抵の場合狙った刀でないものが来ると、審神者はがっかりする。
「あー、そっちかぁ。」
その日も、ある本丸でそんな事が起きた。
158
今中学校の近くのコンビニに居るんですけど、隣合って歩いてる中学生くらいの男女が居て、信号で止まった時に男子が女子に真っ赤な顔して手を差し出して、女子がはにかみながら握手してた。多分男子が求めてたのそれじゃないとおばちゃんは思うんだよね。
159
本丸で、変な遊びが流行っている。
これがまた奇妙なもので、てっきり短刀ばかりがやるものだと思っていたのに、刀種関係なくやっているらしい。
彼らの遊びには、歌がある。
つきがでた
ひがのぼる
はながさく
はがおちる
やれとと様のいうことにゃ
ああかか様のうでのなか
これこれどこへゆかんとす
160
これはある一人の審神者の、いや、一人の母親の話である。
その人には、一人の子どもが居た。審神者として生きる女性にとって、結婚と出産は容易な覚悟では出来ない。なんせ、普通の形では家庭に入れないのだ。それでもその人は結婚をし、子どもを成した。三十代半ばの事である。
161
打刀の運転
・鳴狐
静かな運転をする。でも何故かBGMは必殺仕事人。毎回シートベルトの効きを確認する癖がある。
・村正
人を載せる度に「命、預かりマスね」って言う。でも安全運転。クラクションを鳴らしてみたいけど勇気がない。
・亀甲
シートベルトはきつく締める。超絶安全運転。
162
主へ
咲く朝顔に風流を感じる季節など、君はきっと暑いと一蹴するのだろう。君と言う人は、本当に残念だった。花を見ても夕日を見ても、これと言った感想を口にしないのだから。けれどね、それでも僕は君と風流を愛でたかったんだよ。
主、よく生きてくれた。
僕も共に。
初期刀 歌仙兼定
163
刀剣男士間で、稀に起こる事
・長義と国広、相手が出来ることは自分も意図せず出来てしまう
・小狐丸、鳴狐、白山で遠征を組むと、何故か座標がブレて見知らぬ山へ迷い込んでしまう
・新月になると三日月の調子が悪くなる代わりに妖刀達の調子が上がる
・一月、長谷部が日本号の傍に居る事が増える
164
時の政府から、散歩機能とやらの説明があった。なんでも、任意の刀剣男士一振りと共に土地を移動することで、何かしらの防衛手段を踏むのだとか。まあどこまで本当かは分からないが、多くの審神者達は活発に外へ出歩くようになったのだとか。
「お散歩ねぇ……。」
165
マジで生涯推して参る所存だしずっとそばに居て欲しいし片時も離れたくないし一日たりとて求めない日はない。間違いなく過去最高の熱意で持って推してるのに、一万円札だけ集められない。こんなに推してんのに。こんなに愛してんのに。
166
これは、とある本丸の話しである。
その審神者は、四歳で主となった。孤児であった審神者は霊力の高さのみで審神者として選ばれ、この本丸に来たのだ。
この本丸は、ほんの数日前に審神者を亡くしたばかりであった。
刀剣たちは戸惑ったが、四歳の幼子を主と認める以外に道はなかった。
167
顕現されたばかりの刀剣男士は、基本的に自分を顕現した審神者以外に忠誠を誓うことはない。好意的に対応をしていても、彼らの優先順位は審神者が絶対だ。
だから、本来顕現されれば、忠誠は自然と審神者に向けられる、はずである。
「主様はどこじゃ、人の子。」
何故こうなった。
168
学生時代に青春を全部置いてきたと笑う老審神者。その少し寂しそうな顔を見て、みんなで学生時代をやってみようと考える刀達。
身の丈の大きなものは先生を、身の丈の小さなものは各々に合う生徒役。一番広い大広間に机を運んで、黒板は万屋から借りてきた。席順を決めて、日直なるものも決めた。
169
とある本丸の未成年審神者がいじめを受けるようになったのは中学の頃だ。部活に入るわけでもないのに、特命調査などの兼合いで公欠が多い事が悪目立ちしてしまっての事だった。
私物を隠され、近くを通る度にクスクスとあからさまな笑い声を上げられ、挨拶など返してもらえない。
170
刀剣男士の中で、審神者に恋をして、審神者からも恋されて、本気で隠すつもりで準備していたけれど最後の最後で審神者の人としての命の尊さを捨てさせきれずに、それでもせめて抱きしめようとして手が届くその瞬間に政府の安全装置が作動して顕現を解かれ強制刀解させられそうな刀は誰だろうね。
171
審神者へ。
一つの額縁があります。それは力の篭った額縁で、一振のみですが、その額縁に人型のまま飾って現世へ連れ帰る事が出来ます。額縁の中の刀剣男士は会話する事が出来ます。刀剣男士は、額縁に飾られる事を誉としています。死後は、あなたも男士の隣に飾られます。
あなたは誰を飾りますか。
172
ここは、殉職した審神者達が葬られる墓場だ。死して尚歴史修正主義者に狙われかねない彼らの遺体は、政府の管理下であるこの地に安置される。彼らを埋めた場所からは四日程で芽が出て、七日程で木になる。どんな木が生えるのかは、その審神者次第、といったところか。
今日、そこに新たな墓が増える。
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とある本丸の刀剣男士達が現代への潜入任務に備え、各々の身丈に合った職種や立場に溶け込む為の練習を開始。
成功例
・男子校(工業/農業)
山伏、山姥切、堀川、獅子王、同田貫、大倶利伽羅、御手杵、和泉守、陸奥守、南泉、大千鳥、桑名、肥前、豊前、稲葉
昼休みの筋トレ対決に参加出来る
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例えば、百年に一度の恋を審神者が刀剣男士相手にしたとて。そんなもの、刀剣男士にしてみればなんの価値もないのかもしれない。だって彼らは、千年単位で在る存在だ。人の生きる数十年なぞ、どの程のものだろうか。
「恋をしてるね……若いねぇ。」
だから、老いた審神者は皆、そう言うのだ。
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歌って踊る江のすていじの知らせを受けた老審神者。しかし流行りの曲はどうにも耳が追いつかず、きっと自分が客では盛り上げられないだろうなと参加を諦める。そんな様子を見ていた老審神者の篭手切が一念発起し、マツケンサンバとまつりで本丸の全刀剣男士を投入して盛大な乱舞祭が始まる。