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『ちりとてちん』で師匠が旅立つ地獄八景。『ちかえもん』で近松が泣きながら描く虚実皮膜。藤本さんが描く嘘とホンマの境目はいつだって優しく美しい。
逆に言えば、優しく美しい”嘘”でくるまなければ、とても語ることができない”ホンマ”を描くからなんですよ…
#カムカム
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小豆の匂いに誘われ見た幻で、見送らなかったのを後悔してた算太に、妻と母を死なせたことを許される優しさとともに、その幻=父の認識の中で相変わらず算太は人を騙して金を取ってるし、それを許すほど父は帰還を喜んでる(それぐらい弱ってる)という、この一滴の毒を入れる藤本脚本な…
#カムカム
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当代の神田伯山さんが二代目伯山を演じるの、桜田門外の変回で当代の茂山千五郎さんが九世茂山千五郎を演じていたのと同じ趣向ですね。こういうキャスティングで、幕末~明治が案外近い時代だと実感できるのも面白いなあ。
#青天を衝け
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美都里さん、戦争中も夫の事業への雉真の奥方らしい心配は一言もなく、ただ自分と自分の可愛い子の心地よい生活にしか関心がないお嬢様気質に徹底して描かれてたのが、稔の結婚を渋々許す時はいいほうに作用したし、また稔が死ねば恨みをぶつける先が手近な所にしかないのも一貫してる。
#カムカム
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ああ… むりに岡山へ連れ帰る強引なことはしないけど、おはぎの薄利多売でるいに相応しい教育と生活を今後させてやれるかと、その言葉が安子を無茶な忙しさに駆り立て、そして怪我と諦めに繋がってしまうのか。
再婚話のときといい、千吉さんの優しい正論はいつも隙がなく安子を追い詰める。
#カムカム
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ああ、そうか。ずっと良き娘、妻、嫁、母だった安子が、何もかも奪われるという理不尽な目にあって内側に燻ぶらせていた怒りや疑問、哀しみ、そして自らも気づいている矛盾を初めて言語化して叫べるのが「英語」なんだ。言葉を、言語を獲得するとはこういうことだ。自我に関わることだ。
#カムカム
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ちなみに安子の英語ですが、本当にNHKラジオ だ け で韓国語を独学してたら、うっかり知人の民間交流の通訳に駆り出され、しかも案外通じて相手にも自信をもって!と励まされたので、そのあと語学活かせる職に転職し、今も元気に働いてる友人が実際いるので、そんな突飛な設定とも思わんかったです。
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推しの光を浴びて幸せに死んだ岩倉様の翌週に、推しを浴びてみるみる回復する栄一(なお91歳まで生きる)を描く #青天を衝け
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西南戦争はひたすら国家予算と人材を消耗する内戦の無益さ、日清戦争は分捕れる賠償金額ゆえ「アジアの一等国」へ遂に手を掛けたと無邪気に喜ぶ不穏さから描いてきた #青天を衝け だから、日露戦争もポーツマス条約で”悲憤慷慨”する民衆の恐ろしさに焦点合わせて描けるんだなあ。経済大河たる背骨。
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生き残りの悔恨を抱えて奮闘してきた淳忠兄ぃの長い幕末後が、慶喜公の労いでようやく終わった、そんな冒頭から始まる回に、かつて「直参舐めんなよ」な平岡様たち幕府方の奮闘も知らず”悲憤慷慨”し勝手な攘夷を掲げてた栄一たちと同じく、日露講和条約を売国と怒る民衆を出す構成の巧さ。
#青天を衝け
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貴方様の功績を広めると熱くなる栄一と、持ち上げられたくない慶喜の対比は、慶喜を将軍にしようと勝手に動いたかつての平岡らと似ているけれど、雨の日に「尽未来際」と呼びかけた栄一が死の淵から戻る様は、平岡が死んだあの日のやり直しでもあり。慶喜が長い沈黙を破るに十分の理由だ。
#青天を衝け
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ドラ息子の算太が生きて帰ってきて、いちばん謝りたかった両親が既に死んでるその遣り場のなさを救えるのは、他でもない、息子が戦死して半分正気を失い、今も哀しみの中に浸りきってる美都里さんだったという、この巡り方がすごいな…
#カムカム
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「母さんのそういう態度がみんなを追い詰めとる」と息子の勇にさえ責められた、実際視聴者から見ても孫のるいにじわじわ棘を刺してるように映ってた、強すぎるゆえに自分も周囲も苦しめる美都里さんの愛情が、まさかこういう形で誰かを救うことになるとは思わんじゃない…
#カムカム
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美都里さんにとって「御菓子司たちばな」が、自分の意に沿わぬ女性と可愛い息子が出会ってしまった場所でなく、大阪でうっかりお土産を買いそびれた息子が、それでも何か家に持って帰ろうと商店街に立ち寄る、そんな微笑ましい心遣いの思い出の場所として記憶されて、本当によかった。
#カムカム
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前期朝ドラ主演&妹役も、大河主役も、金曜プレミアムトークでない日のあさイチご出演なのか… やはり平日スタジオパークがなくなってしまったのが改めて惜しいなあ。NHKドラマの出演俳優さんに、作品や役のことをがっつり落ち着いて聞いてくれるトーク番組の定期枠。
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アメリカに(野球でも)勝てば稔兄さんも認めてくれるはず、と信じ切って、それで安子にプロポーズする勇ちゃん。でもその稔さんが安子に託した夢は「どこの国とも自由に行き来できる、音楽を聞ける」であり、勝ち負けじゃない。この、互いに大事な稔への認識ですら顕になる徹底的ズレ。
#カムカム
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いやしかし、ここまで「安子が勇のプロポーズを受け入れさえすれば全て丸く収まってたはず」と「安子が勇と再婚することは、ここまで二十数年コツコツ積み上げてきた彼女のささやかな自分らしささえ手放し沈黙すること」を並立させているの、ほんとすごいな…
#カムカム
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主人公はもちろん、ちょっと不憫で視聴者に愛される脇役ですらそのままにしないのが、藤本脚本のこわいところだなと思っているのです。
○○系キャラ、○○属性だと勝手に見ているこちらの横っ面を張り倒すような、決して擁護できない愚かなことも含めた人間性を生のままゴロンと出してくるというか。
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こんなすぐつわりが来るわけないんだから、やはり雪衣さんと勇ちゃんは、あの喧嘩して帰ってきた夜だけでなく、実は前々から…ということですよね。「女中」の範囲を超えた態度も、勇坊っちゃんに「許してくれ」と言われて自分のほうは謝らなかった妙な関係も、つまりそういうことか…
#カムカム
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つまり、安子が妥協して「るいのため」勇ちゃんと結婚しても、結局地獄になったのでは??て話になる。
安子の考えの至らなさ、視野の狭さを突きつける一方、では作中の世間一般が(一部の視聴者も)選べと言う道も決して「ひなたの道」じゃない、安子だけ責められないと描く #カムカム の仕掛けよ…
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あーーそうか… 岡山だからベースは桃太郎。キジ=「雉真」の名にこだわれば、戦中に「鬼畜」と呼んでいた米国は退治すべき鬼。だけど、その「雉真」の枠に収まりきれないからこそ安子は、鬼の本拠地・鬼ヶ島へ行ってしまう。「雉真」の子として育てられるるいにとって、安子は裏切り者か…
#カムカム
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海の底の民はだいたい、なるほど藤本さん今回は『ちりとてちん』でなく『平清盛』を朝ドラでやってらっしゃる… と納得できる展開ですけど、『ちかえもん』や『みをつくし料理帖』あたりから入られた方は、この情念ジェットコースターを朝から浴びて大丈夫か、ちょっと不安になる藤本クラスタ。
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前もつぶやいたけど、藤本脚本の魅力は、個人個人のキャラクター性やドロドロした感情描写以上に、個人と個人のどうしようもなさが重なり紡がれ織り上げられた末に広がる、物語の構造そのもの(だから長尺物ほど活きる)なので、次世代の物語が始まるここからがいよいよ本番だと思っている。
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(だからまあ、昨日も話題に出ていた「共感」の心地よさ、まして登場人物に「正しさ」を求める人には、とことん合わない脚本ではあるんですよ本来は… 安子編序盤がそもそもミスリーディング的であったと言えるぐらい)
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愛情たっぷり育てられ幸せな少女だったるいが安子を「I hate you」でぶった切るの、しっかり者で愛される吉右衛門ちゃんが父を「あんたはケチ兵衛じゃ!」でぶった切った時を思い出す。
「お前のため」で奔走する親の”愛”に、まさかここで吉兵衛と安子が重なるなんて思わなかったですよ…
#カムカム