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院内食堂のおばちゃんが,米と切り干し大根をどこかから自力で調達してきて,7日目から食堂が再開.事務方のひとも手伝って,無料炊き出しみたいな感じでだしはじめました.おかずの切り干し大根がとてつもなくうまかった.
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震災直後はなにも食べるものがなく,ナースステーションに行っては,おかしをもらって飢えをしのいでいました.沿岸の被災地に支援物資を運ぶためたくさんのヘリコプターが病院の頭上を通過していくのを,うらやましげにながめていたものです(一機くらいここにおちてこな、もとい、おりてこないかなと)
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常位胎盤早期剥離(早剝)について話題になりましたので,ちょっとだけ解説いたします.胎児に酸素や栄養を供給する胎盤が分娩の前に先に剥離するもので,進行すれば児には致命的です.また組織成分が母体血中にはいり,DICとよばれる大出血をおこし,しばしば母体の命すらも奪う本当にこわい病気です.
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UNSCEAR2020 最終報告書の最後に,「甲状腺調査は過剰診断をひきおこしている可能性が高く,超音波による検診はやめるべきだ」と明記されていることを,明石眞言先生が検討委員会のなかでまちがいないと明言されたことが,本日の最大の成果だったとわたしは思います.甲状腺調査の終了を検討すべきです
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われわれ遺伝専門医は、なにもない妊婦に出生前検査を行うと、その人に害をもたらす可能性があることを知っています。甲状腺専門家も感染症専門家も同じことをいいます。だから出生前検査も、甲状腺超音波検査も、コロナPCRも、本当に必要な人だけにたいして慎重に行うようにする必要があるのです。
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福島原発事故では被曝そのもので健康被害はおこらなかったというUNSCEARの報告は,国内の専門家も一致して認めるところです.おきたのはメディア報道の過度のあおりによる社会不安でした.不安に思う住民が甲状腺調査の継続を求めるのは,センセーショナルな報道によって生じた情報災害によるものです.
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混乱しているひとが多いようです。福島の被曝で甲状腺がんが多発していて甲状腺調査を続けるべきと主張するのが市民団体、革新系野党、TBSなどのマスコミなど/まったく増えていないが調査は継続とするのが福島県、国、検討委員会/増えておらず調査は過剰診断で非倫理的と考えるのが過剰診断派です。
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検討委員をもう8年やってますが,TBSが取材に来たのを一度もみた記憶がありません.特番つくるのに依拠したひとたちがあまりにかたよっていて,HPVワクチンの轍をまた踏んでますね.専門家にひとこと聞けば,過剰診断に与するか否かにかかわらず,被曝による甲状腺発がんは明確に否定されたでしょうに.
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甲状腺がんの過剰診断とは誤診ではありません。病理学的にはがんにまちがいないのですが、進行がきわめておそく生涯でまったく症状を示さないなどです。残念ながら個々のがんにおいて過剰診断と判断することはできません。検診をおこなう群とおこなわない群で生存率に差がなければ、それは過剰診断です
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がんにも過剰診断があるなんてふつうは考えづらいかもしれません.がんはおそろしい病気で,全身にどんどん転移して治療しなければ必ず死にいたると信じられていました.そしてがん治療の最善の方法は早期発見早期治療しかない.このことは一般のひとだけでなく,医者の多くもそう考えてきたのです.
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しかし1990年前後に前立腺がんのPSAスクリーニングが登場してから,そういった見かたはかわらざるをえなくなりました.前立腺がんは検査すればするほどみつかるようになり,がんにも過剰診断があることがあきらかになったのです.スクリーニングとは何の症状もないひとにがんを系統的にさがすことです.
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これらの男性はがんと診断されたことで,かなりの不安と苦悩を感じたことでしょう.しかしより深刻だったのは,ほとんどのひとが手術や放射線治療を受けた結果,インポテンツ(50%)や排尿障害(33%)などの後遺症を残したことです.過剰診断によって過剰治療がなされ,悲しいほどの害が生じたのです.
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2000年代には過剰診断の害があきらかになって,PSAスクリーニングが推奨されなくなったため,新規診断数はさすがに落ちついてきました.そもそも前立腺がんの進行はきわめておそく,高年男性を死後解剖すると30%くらいに組織的な前立腺がんがみつかるといわれています.これをラテント癌といいます.
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このように「早期発見」という強力なパラダイムがゆらいできたのはこの10年あまりのことにすぎないのです.いまだ認識がおくれている医者もすくなくありません.スクリーニングにはメリットとデメリットがあり,それを認識して検診を受ける必要があります.甲状腺がんにおいてもまったく同様なのです.
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たいせつなことをくりかえしますが,あるひとりのひとが過剰診断されたかを知ることはできません.しかし集団でみると,がんによる診断率と死亡率を比較すれば,過剰診断がおきているかは容易に知ることができます.がんの診断が増えているにもかかわらず死亡数がふえていなければそれは過剰診断です.
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前立腺がんや甲状腺がんが例外なのではありません.最近のさまざまな疫学研究によると,がんのスクリーニングでは必ず過剰診断がある一定割合でおきており,程度の問題とわかっています.そうなると個別のがん検診のメリットデメリットを理解したうえで受けるかどうかを決める必要があるのです.
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そうか。いまひとつ気がついたのですが、ふつうのひとは、検査が高精度になればなるほど過剰診断はすくなくなると考えがちなんですね。事実はまったくその逆です。検査が高精度になればなるほど過剰診断は増えていきます。甲状腺超音波検査もコロナPCRもまったくそのとおりなのです。
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福島甲状腺がん集団訴訟で気になるのは、弱者を運動のなかにとりこむことで代弁者的な立場となり、自分たちの活動に利用としようとしている支援グループの存在です。当初は弱者救済をかかげていたのに、次第に主旨とはかけはなれた主張に走りだす様子は、HPVワクチン訴訟とおなじ構図です。
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無症状のひとを調べるがん検診に意味があるかを判定するには,どちらが長生きするかを対照試験で比べる方法しかありません.神経芽細胞腫という乳幼児におこる悪性腫瘍はカテコラミン(CA)を産生しますが,乳児の尿のCAを検査し,早期発見により死亡率が低下したという日本語の論文が1984年にでました
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日本ではこの思いつきで莫大な予算をかけて全国規模の検診をはじめたのです.ところがカナダやドイツで200万人!!規模の無作為比較試験(RCT)を15年かけておこなったところ,検診群では神経芽腫の発見が激増しましたが,対照(無検診)群との死亡率とまったくかわらないことがあきらかにされたのです.
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神経芽腫のスクリーニングは膨大な数の過剰診断を生むことがRCTにより証明されました.しかし莫大な予算と数多くの小児手術を生んだ全国スクリーニングは,一度はじまるとそれをとめるのはなかなかむずかしかったのです.2002年に一流誌のeditorialで痛烈に批判され,2004年にようやく中止となりました
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20年も結果的には無意味な検診がつづけられ,膨大な数の過剰診断によりもともと不要な乳幼児への外科手術がなされてきました.RCTによって無効が証明されても,基準をかえて過剰診断が防ぐといった研究班の発表など専門家の抵抗のなか,一部の良心的な小児科医や小児外科医の力により中止となりました.
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その後,神経芽細胞腫は悪性腫瘍のなかでも自然消退がもっとも多いことがあきらかにされました.このように一度開始された検診事業は,その後エビデンスで無効ないし有害が示されても,なかなか中止させることが政治的にできないことがわかります.これは福島での甲状腺スクリーニングを彷彿させます.