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平和条約交渉は進展していたわけでもなく、また北方領土での共同経済活動も、完全にロシアの主張とペースに基づいて進められようとしていました。
今回のロシア側の措置によって、日本が失うものはほとんどないと言えます。
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明日のゼレンスキー大統領の国会演説に関連して、ウクライナのシンクタンクNew Europe Center(NEC)が作成したばかりのインフォグラフィックスが参考になりそうです。
このNECは日・ウクライナ関係の分析や政策提言に非常に力を入れています。 twitter.com/NEC_Ukraine/st…
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・ロシアは大国だが道徳は最低レベル
・厳しい被害状況。子供を含めた数千人が殺害される。遺体を埋葬することもできない
・領土封鎖に近い状況。これは周辺の他の国にとっても脅威
・こどもや孫のための将来を守らなければ
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ゼレンスキー大統領演説 要旨(走り書き)
・日本への支援の感謝
・日本はアジアのリーダー。早い段階で連帯を表明してくれた
・チェルノブイリに長めに言及(「放射能事故があった場所が戦場に」)。またザボリージャなどの他の原発にも言及
・化学兵器使用の恐れ(シリアにはっきり言及)
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・国連を含めた国際機関の機能不全について、長めに言及
・侵略者に対し、「平和を脅かすべきではない」との強いメッセージが必要
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・ここでまた日本の支援についての言及に戻る。現実的な立場をとってくれ、そして支援してくれて感謝。
・アジアでは初めて日本が制裁を行ってくれた
・制裁は継続してほしい
・ロシアに対する禁輸、企業の撤退はお願いしたい。それはロシアが戦費を得る手段につながってしまう
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・ウクライナの復興に手を貸してもらいたい
・避難民の帰還にも支援が必要
・「日本はわかってくれるはず。住み慣れた故郷に戻りたい気持ちを。」
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・2019年、大統領の妻のオレーナが、目の見えない子供のためのオーディオブックプロジェクトに参加。
・日本とウクライナは距離があるが、価値観は近い。心は一緒なのだ
・平和を取り戻すための力を貸してほしい。国際機関の改革も必要。
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・新しい紛争予防手段が必要。それには日本のリーダーシップが必要。ウクライナのため、世界のため。
・日本の発展の歴史は素晴らしい。日本には調和を作り、それを維持する能力がある。環境と文化を守る力がある。ウクライナ人は、日本の文化が大好き。
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・今と同じように、未来も、日本はウクライナと一緒にいてほしい
・ウクライナに栄光あれ。日本に栄光あれ
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注:NHKの中継を聞きながら急いで書きました。あとでトランスクリプトが出たら再度確認しますが、聞き違いや翻訳のニュアンスの違いがある可能性があります。あらかじめご了承ください。
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それから、たとえば「北方領土」など、日本人が聞くと「!?」と思ってしまう用語が同時通訳で使われていましたが、それは日本の話ではなく、ウクライナ国土の話だったはず。こうした少しずつの翻訳のずれなどもありえます。
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非常に練られたスピーチ。
ロシアに対する一層の経済圧力は要請したものの、あえて具体的な方策には踏み込んでいませんし、言及のしかたもマイルド。
国連をはじめとした国際機関がこの危機を前に機能不全状態にあること、その改革で日本の力を借りたいという部分も、よく考えられているかと。
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「日本はわかってくれるはず。住み慣れた故郷に戻りたい気持ちを。」
この部分は敢えて深読みすれば、北方領土、シベリア抑留、福島など様々な要素が当てはまります。受け止める側に「考えさせる」演説だと思いました。
twitter.com/AtsukoHigashin…
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大統領府のサイトに、早速ゼレンスキー大統領の演説の英語訳が掲載されています。
president.gov.ua/en/news/promov…
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ご自身も戦禍てくださった平野さんに敬意を表すべく、この和訳をもっと活用することにしました。
以前の私の「走り書きまとめ」ツイートでは十分にお伝えしきれなかった点を、以下にまとめておきます。
ukrinform.jp/rubric-ato/343…
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「国会でスタンディングオベーションをしてしまったのでロシアを怒らせてしまった」という指摘もありましたが、そもそもロシアは日本が対ロシア制裁に加わった段階で日本を「非友好国」指定していました。
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〆は杉村氏の「ロシアを刺激するな、ロシアとの通商関係大事、『ゼレンスキーすごい』に流されるな」というメッセージ。
繰り返しますが、そもそもロシアがウクライナを侵略しなければ、日本が対ロ関係を見直す必要も、ゼレンスキー大統領が日本企業のロシア撤退を要望する必要もありませんでした。
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仮に対ロ配慮に基づきスタンディングオベーションをしなくても、ロシアの対日認識は変わりません。
仮に対ロシア配慮でスタンディングオベーションは控えましょうということになっていたら、そちらのほうがよほど問題なのではないでしょうか。
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私が信頼を置く現地の分析者の皆さんは常日頃からこのように評価しておられますし、私もそのように見ています。
今回もおそらく「幅広く」リサーチし、その過程で、米議会における真珠湾攻撃への言及が日本で論議になったことも当然踏まえ、感謝・共感・お願いを前面に出した演説となったのでは。
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ゼレンスキー大統領のスピーチライターを探せ!という盛り上がり。
演説が高く評価されたことの裏返しであり、悪いことではないのでしょうけど、誰か一人(あるいはごく少数)の仕事と見なすのが適切かどうか。
ポイントは「同大統領は優秀な専門家集団を抱え、人の話をよく聞く」ことではないかと。
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日本では今に至るまで「コメディアン出身」(実際には企画や運営にも携わってきた)という彼の経歴を引きずりすぎている気がしており、今回の彼の演説も「コメディアンにしてはやるじゃないか」という反応もいまだにちらほら見られますが、もうそろそろ彼への理解を「コメディアン」に縛りすぎない方が
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重要なのは、この非常時において、演説を行う国をまず見定めたのち(どこでもいいから演説させてほしいと言っているわけではありません)、各国向けテイラーメイドの演説を作成するために、専門家、シンクタンク、実務担当者等からこれだけの幅広く適切な協力が大統領に寄せられているということです。
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同大統領をよりよく理解できるのではないかと思います。
今や彼は、優秀な専門家集団に支えられた、そして当選時からすれば比較にならないぐらいの成長を遂げた指導者です。