shinshinohara(@ShinShinohara)さんの人気ツイート(古い順)

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すると、大規模農業を支えるべき政治的支援がなくなることで、農業が成り立たなくなる、という奇妙なことが起きかねない。 なにせ、世界最強の農業国と言えるアメリカが、農業だけでは食っていけず、政府から補助金もらってようやく暮らしているのだから。
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日本は、アメリカやフランスと比べ耕地が狭く、農業の大規模化が(北海道を除いて)難しい。条件が不利な上に補助金もろくに出ない日本で、農業経営は厳しい。しかも農協の言うことはみんな既得権益のためだと批判されるから、誰も聞きやしない。かと言って、農協に代わる政治勢力もない。
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こうなると、非農家の人たちが自ら農業のことを考え、支えるつもりにでもならないといけないことになるが、普段の仕事に忙しく、農業のことまで考える余裕はない。となると、やはり農業の政治的プレゼンスは下がる。これは、日本の食料安全保障に大きく関わることになる問題だろう。
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まとめました。 農業の大規模化は政治力を小さくする?|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
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農家の数が減ることは農業の政治力の減退につながり、食料安全保障が揺らぐ原因になるかも。 通常、あまり語られない視点で、食料安全保障に関わる様々な視点を取り上げ、まとめた本。8月に発刊。 amazon.co.jp/%E3%81%9D%E3%8…
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私は、農協が農業以外の商売で儲けていたことに、意外な効果があったと考えていまして。農協にとって、農業は赤字部門でした。その赤字を、金融とか別の商売での黒字で埋めていました。つまり、農業以外の儲けで農業に補助金出す格好。おかげで消費者は食品を安く買えました。 twitter.com/tymorikun/stat…
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食料安全保障の話で、植物工場への期待の声を頂くことがある。これについて、ちょっと説明を試みる。 まず、「食料」は、「食糧」と「食品」に分けて考えた方がよい、と私は考えている。食糧は、腹を満たすことができる、カロリーを稼げるもの。簡単に言えば、デンプン。コメ麦など穀物と、イモ類。
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家族経営の農業は効率が悪い、企業化、工業化して効率を上げるほうが良いのではないか、というご意見をよく頂く。 きっと欧米では日本と違って農業の企業化が進んでいるのではないか、と思いたくなる。世界一の農業国アメリカはどうなのだろう?非家族農業は4.1%にとどまる。つまり、95.9%は家族農業。
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フランスやイギリスでも、農業の担い手は家族。日本ではどうしたわけか、農業の企業経営化が叫ばれて結構長いけれど、世界に小麦などの食糧を大量に輸出するアメリカやフランスは、家族経営が支えている。企業経営もないわけじゃないけど、中心とはとても言えない。
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企業的経営といえば、オランダの大型施設園芸がそれにあたるだろうか。ヘクタールを超える大型の温室の中で、大量の移民や外国人出稼ぎに働いてもらい、賃金を支払って、トマトを大量生産したりしている。イメージは、プランテーションが近いように思う。
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アフリカでコーヒーなどの商品作物を栽培しているのは、プランテーション。賃仕事で働く人たちが大量にいる。低賃金。日本の農業も外国人研修生の力でなんとか支えられているところも多く、プランテーション化が進んでいる面がある。
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しかし、プランテーションには気をつけなければならない面がある。人道的問題が起きやすいこと。アフリカのコーヒー園などでは、経営者やコーヒー豆を買いとる大手企業は儲かるが、働く労働者は低賃金に据え置かれることが多い。企業は利益を最大化させようとするので、安く働ける労働力を好む傾向。
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あと、企業経営になると「利益」しか見ていない。もしプランテーションによりその土地が荒廃し、使い物にならなくなっても、他の土地で新たにプランテーションを始めれば経営的に何の問題もない。荒廃した土地がその後どうなろうと、知ったことじゃない、という態度になりやすい。
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思えば、古代ローマの地主制度、ラティフンディウムもプランテーションに似ていると言える。大地主は安い労働力として大勢の奴隷を雇い、耕させて、その収益をローマなど、地主の住む都市部に送らせていた。地主はそのお金で都市部で豊かな生活を送っていた。
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地主は、自分の農地に行こうともしない。奴隷は言われた通りに働くだけで、土地が荒廃していくことに気がついていても、余計なことは言わない。余計な仕事を自分から増やす必要がないから。こうして、地主は自分の土地が荒廃していくことに気がつかずに過ごしていく。
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農地は、堆肥を鋤き込むなど、適切な管理をしておかないと、徐々に土がやせていく。土が失われるスピードは、年に数分の1mm程度とごくわずかなので、気がつかない。50年もたたないうちに世代が変わる。だから、土がやせたことに気がつかず、「生まれた時からこうだった」になってしまう。
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その結果、ヨーロッパの少なからずの地域で、石灰岩が露出し、土壌がほとんどない土地が増えてしまった。古代ローマが滅んで中世に入った時、農業の生産性が著しく落ちた原因の一つが、土壌がやせたこと。そして、土壌をやせさせたのは、ラティフンディウムという企業経営だった。
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家族経営の場合、自分の田畑の状態が改善されていくか、悪化していくかは強い関心事となる。だから、堆肥も入れてよい土にしようとする。自分の財産だと思うから、土を超えさせようという動機が生まれやすい。 ただし、家族経営でもそうはならない状況が強まってきた。原因は、「効率化」。
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家族経営でも規模拡大が当然視、効率化が進められた。アメリカで使用されている農業機械は、1958年には約4トンだったのが、2020年には約36トンに。巨大で重い収穫機で土が押しつぶされ、土壌の状態が悪化している。しかし大きな機械に乗っていると、土の状態に気づきにくい。 natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/0…
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効率化とは、少ない人数で大面積を耕し、大量の収穫を得るということ。つまり、農業人口が減少するということ。そのおかげで、世界の5%の人口の農家が、残り95%の人口を支える食料を生産している。そうした効率的経営を、家族経営も行っている。しかし。
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少人数で大面積を耕すとなると、「細かいことは気にしていられない」になりやすい。微細な変化は無視することになる。土が少しやせるかも、という心配があっても、年1%にもならない変化なら、まあ、いいか、となる。事態を放置し、それよりも効率化できるところをどんどん効率化することに。
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効率的経営は、人手が足りなくなるわけだから、やった方がいいと分かっていても、それに手を回すことができなくなる。長い目で見た経営ではなく、今日をしのぐ短期的な視点で仕事を回すことになりやすい。
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また、効率的経営で農作物を大量生産できるようになった結果、儲けが減ってしまうという、おかしなことになりがち。たとえばアメリカの西部開拓時代は、1農家で12人分の余剰食糧(家族以外の食料)を作っていたが、現在のアメリカの平均的農家なら、129人分の余剰食糧を作る。超効率的。ところが。
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西部開拓時代なら、非効率的な生産だったのに三世代家族を支えることができたのに、現代のアメリカの農家は、妻に働きに出てもらい、自分は政府から補助金をもらい、それでようやく4人家族を養える、というありさま。効率的経営で生産性が10倍以上に跳ね上がったら、養える家族の数が減った。なぜか。
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穀物がだぶつくようになったから。西部開拓時代なら、農家はどこもたいして生産性が良くなかった。だからトウモロコシを1ブッシェル分、市場で売れば、そこそこのお金になった。しかし現代では、トウモロコシの生産性は、同じ面積で10倍も量が採れるように。そうなるとどうなるか。値崩れする。