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最初の1ヶ月は、危険がない範囲で、なるべくたくさん失敗してもらう。失敗したら叱られるという経験ばかりしているので、とても失敗を恐れる「呪い」がかかっている。私は「あ、そうなんですよ。皆さん方ここで引っかかるんですよねー」と言って、一緒に失敗の観察を楽しむ。
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「なんでこうなっちゃったんでしょうね?」と聞いても、たいがい、「わかりません」が返ってくる。そこで「ここ、どうなってます?」と着眼点を伝える。すると「こうなってます。あ、だからか!」と気づいてもらえる。「なるほど。ではどうしたらよいと思います?」と尋ね、仮説を立ててもらう。
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こうしたことを繰り返すと、失敗してもむやみに恐れることはなく、失敗したときはよく観察し、何が原因なのかを推定し、次はどうすればよいのかを仮説立てればよいのだ、という姿勢が身についてくる。すると、失敗しちゃいけない、という「呪い」が徐々に解除できる。
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私は新人指導の際、「うまくやれること」を目標に置いていない。失敗への恐怖という呪いを解除し、むしろ失敗を楽しみ、失敗をよく観察し、仮説を立て、新たな工夫を考える、という姿勢を身につけてもらうことを重視している。呪いを解除でき、失敗を楽しめるようになれば、当然仕事もできる。
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まとめました。
呪いを解除し、失敗を楽しむ|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
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今回、プーチン氏が「裸の王様」であったことが明らかになったことで、世界の潮流が変わるように思う。
このところ、専制的独裁的な国で元気な国が目立ち、日本でも「独裁が必要だ」なんて言葉が出るようになっていた。独裁への憧れが強まっていた。
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ドラッカーの「マネジメント」、確かエッセンシャル版だったと思うけど、日本型経営で面白い指摘が有った。
欧米企業はトップの決断が速く、すぐに契約に至れる。ところが日本企業はなかなか契約に至らず、イライラするという。いろんな部局の人間が話を聞きに来、「持ち帰って検討します」ばかり。
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それも、一度で済まず、違う部局の人間が一から話を聞きたがるので、何度も説明しなきゃいけない。なかなか契約に至らない中、一通りの部局が話を聞いた後、ようやく社長がお出ましになり、契約。ともかく契約までに時間がかかる。これがいわゆる「決断が遅い」という話。
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ところが。ドラッカーは意外な評価を与えている。確かに契約に至るまではどえらく時間がかかるのだけど、各部署の疑問が全部解けているので迷いがなく、企業全体が有機的に動き、不測の事態も織り込んでいるので臨機応変に問題に対処でき、納期を確実に守る仕事の速さ、確実さがあるという。
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他方、トップダウンで決める企業の場合、確かに決断は速いのだけど、決められてから各部署への説明がなされるから「え?この問題が起きたらどうすんの?」という疑問も差し挟めないまま事業がスタート、案の定、現場がアタフタしながらやってるものだからトラブル続出、仕事が遅々として進まない。
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決断の速さは事業遂行の速さとは限らない。日本企業は決断こそ遅いが、組織全体に認識が共有されてから動いているから、事業が確実に進められるという。ドラッカーは、この点、日本企業に見習うべきところがある、としている。
だがしかし。
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小泉ブーム以降、強いリーダーシップとやらが大流行、海外企業は決断が早い、日本は遅いと批判が続き、日本も決断を速める改革が進められた。その結果、組織全体で緻密に詰め、有機的に動け、臨機応変にも問題に対応できる柔軟さが失われた。欧米企業の劣化版になってしまった。
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日本の社長は、昔は現場の意見をよく聞き、仕事を進めやすいように配慮した。現場は社長の期待に応えるため、あらゆる問題を考えつくし、確実にやり遂げるよう、各部署とも綿密に協議して計画し、有機的に動けるようにしていた。
しかし今の日本の経営者は、現場の声を「抵抗勢力」とでも思うのか。
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海外企業のトップダウンをマネし、現場に丸投げ。現場は「無茶や!」となり、大混乱。海外企業の悪しきマネジメントを真似た感がある。
もし、決断が速く、現場を混乱させないようにするには、社長が現場と密に連携し、現場をよく知る必要がある。
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どうも2000年代に入ってからの日本の経営者は、現場からの声に耳を傾けず、ただ命令だけすればよい、という独裁的なやり方をする人が増えた気がする。しかしそれでは現場がついていかない。まるで、五感からの情報を遮断した脳のようなもの。五感の情報なしに体をうまく動かせるはずがない。
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組織を有機体で捉える必要がある。ドラッカーの見識を踏まえれば、「決断の速いカッコいいリーダー」は、本当にカッコいいのだろうか?独裁的システムを完全に構築したとき、リーダーには、心地よい情報しか届けなくなる部下ばかりになる。裸の王様になる。独裁は、裸の王様を目指す道。
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部下の、現場の力を引き出すリーダーこそカッコいいのでは。部下や現場の言うことを聞かず、疲弊させるリーダーのどこがカッコいいのだろう?もう少しよく考えた方がよいように思う。
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まとめました。
ドラッカーによる日本型経営の意外な評価|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
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親が知らず知らずにかけてしまう「呪い」について、私も十分に言語化できていないことに気がついたので、ちょっと考えてみる。
昔の親は、子どもに評価を下すことを何とも思っていなかったので、結果的に「呪い」にかかる人は少なくなかったように思う。たとえば。
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全国の農業研究者が参加するメーリングリストに質問したことがある。「江戸時代より進んだ技術が何かありますか?ただし石油に頼らないという前提で。」
議論がしばらく続いた結果、「ない」という話に落ち着いた。現代農業の技術のほとんどは、石油などの化石エネルギーに頼っている。
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カナダの研究者、バーツラフ・スミルは、化学肥料にいっさい頼らない場合、どのくらいの人口を養えるのか試算した。30~40億人。現在の世界人口は77億人。半分しか養えないことになる。
現代の有機農業は、化学肥料が作り出した余剰の有機物のおかげで有機肥料が手に入る面がある。もし石油がないと。
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これは素晴らしいと思う。父方の祖母はデイサービスが大嫌いだった。私も付き合ってみると、男性たちの多くも「子供だましなことやらせやがって」とものすごい不満顔。確かに、幼稚園のお遊戯かいな、と思うような内容ばかり。
yomidr.yomiuri.co.jp/article/202203…
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人間って、知らなかったことを知ることができた、できなかったことができた、という喜びが、いくつになってもあるものだと思う。そうした知的好奇心を刺激するようなデイサービスがあれば、絵描きや遊戯に不満な男性や私の祖母みたいな人でも、満足度高いのでは。
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気力が湧かないとき、次を気を付けている。
①意識的に余裕をこじ開け、休むこと。
②気力はそのうち湧いてくるもんだ、と、待つこと。
③気力のない自分を許すこと。
④気力が湧いても使い切らないこと。
トシをとって、何度も無気力にさいなまされた結果、そうするほかないということに気がついた。
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百円ショップに行くと、前まで百円だったであろうサイズのプラスチック容器が二百円に。三百、五百円も多い。価格がかなり混在。店の様子を見て「ああ、これ、三十年前の雑貨屋、金物屋だな」と感じた。