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心理的安全性はお金では買えない。それを得るには、誰も取りこぼさないように努力する、孔子の弟子が見せた不断の努力が必要。その努力を放棄し、見捨てることを当然視したとき、心理的安全性は崩壊し、法は守られる保障を失い、社会は不安定化する。社会は、社会に生きる人達で支えられるのだから。
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そんな機能不全に陥った法に守ってもらえると安心するとしたら、それは甘すぎる。歴史は、法が社会の一部のヒトだけをえこひいきする形でしか機能しなくなったとき、国家は大きく揺らぐことを教えてくれている。法は万人のために機能するものであり続ける必要がある。
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しかし法が金持ちを守る盾となり、貧困に苦しむ人達を突き落とし這い上がることを拒む断崖絶壁として機能するなら、法は守られるべき動機、理由をすでに失いかけているのでは。法は万人を守るときに皆に大切にされるが、一部の人間だけが尊重されるなら、法は貧困層を突き落とすものでしかなくなる。
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いま、富裕層の人達、あるいはそう自認してる人達が、平気で貧困層を見下し、見捨てる発言を繰り返していることが気になる。自分に危険が降り掛かってくることはないとタカをくくっているのだろう。犯罪を冒して罰せられるのは貧困層の方なのだから、と、法の壁に守られていると安心しているのだろう。
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私のツイートに対しても、実力ある者が豊かになり、能力に欠ける者が貧しくなるのは仕方ない、と語りかけてくる人が今年になって数多い。弱肉強食なのは仕方がない、それは世の習いなのだ、と。しかしそうして貧困層を見捨てる心理は、翻って富裕層を見捨てる心理を呼び起こす。報復心理を惹起する。
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ウィルキンソン氏がプレゼンで指摘しているように、他国より自国が貧しいことはさして問題にならない(不満は起きにくい)が、自国内で格差があることは、妬み、恨みを増幅させ、社会を不安定化させ、富裕層さえも引きずり下ろされるように安心を損ねることになるという。
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もちろん事件を起こせばその人は罪に服さねばならず、メリットはない。しかし貧困は、犯罪へのハードルを下げる。なぜなら、貧しい暮らしがすでに苦しく、牢獄の生活とさして変わらない印象になりやすいから。同じ苦しいのなら、自分たちを見下す存在に一矢報いたい、という気持ちを起こしやすい。
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自分達だけ豊かな生活を守ろうという心根は、貧しい人を切り捨て、どこかで蔑む心理を生むことになる。そうでなければ良心がチクチクして痛いから。しかしそうして心理的に見捨てた過程を減ると、貧困層の人にベビーシッターを頼むときにも侮蔑的な態度が現れる確率は増えるだろう。仮に気をつけても。
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アメリカではベビーシッターによる赤ちゃんへの虐待が問題視されているという。富裕層はお金があるからベビーシッターに赤ちゃんの世話を頼む。他方、ベビーシッターを引き受けるのはしばしば貧困層。もしお金持ちが貧しい人に差別的な考え方をしていたら、事件が起きる確率はかなり上がるだろう。
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「昔はお手伝いさんがお金持ちの子どもを殺したって事件が相次いでね」。祖母の知人に小人症(背が子どもくらいしかない症状)の人がいた。その人の家は大変お金持ちだったけど、叱られて腹を立てたお手伝いさんが赤ちゃんだったその人を床に叩きつけ、命はとりとめたものの背が伸びなくなったという。
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リチャード・ウィルキンソン「いかに経済格差が社会に支障をきたすか」というプレゼンでも示されているように、格差を放置すれば富裕層も引きずられるようにデメリットが起こる。乳児死亡率はどうしたわけか、格差のある社会では富裕層でも高くなる。
digitalcast.jp/v/11187/
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これから起こる大変化に対し、富裕層は自分たちだけでもこれまで通りの快適な生活を維持しよう、そのためには貧困層がますます貧困に苦しむことになってもそれは弱肉強食の世の習いだからやむを得ないことなのだ、と割り切ろうとしている様子を感じる。しかしことはさほど容易ではないように思う。
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この記事、竹中平蔵路線の誤りを指摘してるようなものだと思う。ようやくこういう記事が出てきたか。 toyokeizai.net/articles/-/622…
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と思ってたら、ナイチンゲールがこんなことを。
『経験をもたらすのは観察だけなのである。観察をしない女性が、50年あるいは60年病人のそばで過ごしたとしても、決して賢い人間にはならないであろう。』
観察していなければ、ウン十年の経験も「経験」たり得ないのだという。
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とある野菜研究者が語った言葉を、今も忘れられない。
「野菜を作る農家って、昔はみんな貧乏だったんだよ」
え?今やコメ農家は儲からず、トマトなど野菜農家の方が売上大きいのに?
「コメを作れない農家が仕方なしに作るのが野菜だったんだよ」
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山梨県の取り組みは面白い。県内の製造業に就職したら、就職した翌年から、借りた奨学金の8分の1のお金がもらえる。県内で8年勤めたら奨学金を全額返済できる。これは地域に若者を根付かせるとても面白いアイディア。
日本経済新聞211204
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大手畜産グループが倒産。輸入飼料が値上がりし、肉は売れず。深刻。 news.yahoo.co.jp/articles/f047c…
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畜産に詳しい方から、ついに子牛が殺処分されるようになったとの情報。子牛が売れないようです。
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興味深いのは、欧米先進国でも農家は人口の1%強しかいない。なのに、残り99%近くの非農業の人たちが、農家の生活を支えるだけの補助金を出すことに同意しているのはなぜだろう?他方、日本は農家や農協に補助金を出すことに渋り、非常に批判が根強い。
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前にもまとめたが、日本は農家への補助金が意外に少なく、欧米先進国は日本より大幅に補助金が多い(日本は15.6%、アメリカは26.4%、フランスは90.2%)。これは、穀物価格を国際価格で売っても農家が生活していけるよう、所得補償をしているからだ。
note.com/shinshinohara/…
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こうした意見を聞いてから、農協批判を耳にしても、鵜呑みにするのではなく、その「前提」を問うところから始めよう、という気になった。
今の日本では、農協悪者説が主流。農協ならいくら叩いても構わないといった状況。農協が話題に出れば、とりあえず耳にしたことのある悪口言っとけばよいような。
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中国には小規模農家を守る組織がなく、農家自らが発言していく組織もないという。中国にも農協のような組織をつくれたら、と、その中国人農業研究者は語った。
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90年代の頃から農協は絶大な権力を誇りながら旧態依然としている組織だとして、批判されていた。そうか、農協はいろいろ問題のある組織なんだな、と思いながら2001年に中国に行ったとき、目から鱗の発言が飛び出た。中国の農業研究者は「農協がある日本か羨ましい」と言った。
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自分の食べるものを買って食べる。それができるようにするのが政治であり、経済だと思う。経済とは本来、経世済民(世を経(おさ)め、民を済(すく)う)からきている言葉。ところが今の日本では、貧困を構造化しようとしている。しかもその人たちから搾り取ったお金を配当でむしり取っている者も。