526
しかし「儲かる農業」の大合唱で、世論を味方につけられない農水省も、コメを守る姿勢を続けられなくなった。コメ優先の政策を諦め、儲かる農業推進にカジを切っている。しかしこれ、カロリーの稼げる穀物生産から手を引かざるを得なかったアフリカの二の舞いになる恐れがある。
527
そう考えると、農水省はこれまでうまく立ち回っていたと言える。アメリカの安すぎる小麦には200%の関税をかけ、パンが安くなりすぎないようにすることで、コメの生産を守ってきた。アフリカのように穀物生産から手を引かざるを得ず、飢餓の発生しやすい状況になるのをなんとか回避してきた。
528
給料が下がり、ヤスカツタはずのアメリカの穀物も買えなくなる。しかしアフリカの穀物農家はアメリカの安すぎる穀物のせいでいなくなっている。こうして飢餓が発生しやすい国情を生んでいる。アメリカの安すぎる穀物は、アフリカで飢餓が起きやすくなる原因とも言える。
529
それだけ安く販売する穀物は、アフリカの貧農でさえ太刀打ちできない。アフリカの農家は、腹の膨れる穀物を作っていては、安すぎて生活できない。やむなく穀物を育てるのを諦め、コーヒーやカカオなどのプランテーションで賃仕事で働かざるを得なくなる。しかしそうした商品作物の価格が下落すると。
530
もう一つは、外国の胃袋を握ること。アメリカの輸出する穀物は安い。アメリカの平均的農家は、四人家族を養うことができないくらいにしか売上がない。妻に働きに出てもらい、農家の自分は政府から所得保障をもらってなんとか生活。なんせ、トウモロコシの価格は生産に必要な経費さえまかなえない。
531
一つは自国の食料安全保障を高めるため。アメリカで消費しきれないほど大量の食料を普段から作っておけば、いざというときに不足する心配はない。補助金つけて安く輸出するという出血大サービスをしてでも、普段から大量に生産することで食料安全保障を高めている面がある。
532
アメリカから食料輸入してる国からしたら、アメリカ政府はわざわざ自国の予算で小麦やトウモロコシが安くなるように補助金を出してるようなもの。出血大サービス。なんて気前のよい。こんな気前のよいことをなぜアメリカは行うのか?2つ理由があるように思う。
533
つまり、アメリカはトウモロコシや小麦生産で儲けるつもりがない。コンピューターやインターネットなどの他の産業で儲けたお金の一部を農業につぎ込み、農家に補助金出して、穀物を安く販売させている。なんでそんな気前のよいことをしているのだろう?
534
では、世界一の農業国と言えるアメリカは、あれだけ世界中に食料輸出するくらいなのだから儲かる農業なのかというと、そうではない。小麦やトウモロコシなど穀物は、政府から所得保障という名の補助金が出てるから農家もなんとか生活できてる状態。つまり作れば作るほど政府からの持ち出しが増える。
535
農水省はコメばかりにこだわるのをやめ、儲かる農業を推進しろ!という声がこのところ、大きかった。国民からも政治家からも批判の大合唱で、さしもの農水省も世論に負け、コメを優先する政策を改めようとしている。そしてコメも、アメリカに対抗して安く作れるよう、生産性を高めようとしている。
536
日本はこのところ、「儲かる農業」ばかりを目指してきた。儲かるといえば野菜などの園芸作物。野菜の売上は、もはやコメの売上を超えている。コメは作っても儲からず、トマトの方が高く売れる。なんせ、同じカロリーならトマトはコメの100倍高く売れるのだから。
537
「ほめる」は教育界で、「疑う」は思想界で市民権を得た言葉。ほめて育てることは文句なしにいいこと。合理的精神を得るために疑ってかかるのは大切なこと。そう信じられている。しかし私は、教育界で「ほめる」という言葉は滅ぼしたほうがよいと考えている。そして思想界での「疑う」も。
538
自分に批判的精神があると思う人ほど、何でも疑ってかかる人ほど信じ込んで疑わないという状態に陥りやすいこと。
これは恐らく、傲慢さが生まれるからだろう。批判や疑うことは、辛く苦しい。これは信じていたいというものまで疑いの目を向けるのだから。そしてそんな辛い試練をくぐり抜けた自分は。
539
「批判」とか「疑う」は、合理的な精神の持ち主なら必ず行うべきものだと思われている。新聞やテレビなどマスコミの言うことを鵜呑みにするな、疑ってかかれ、とも言われる。鵜呑みにする人間を合理的精神に欠けた人間としてバカにする風潮もある。しかし、これらには困った副作用がある。
540
まとめました。
日本酒との出会い、日本酒での出会い|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
541
他のぐい呑みだけど、どうしたわけか日本酒の味が変わるというのも教えてくれた。そのぐい呑みに酒をつぐと、どんどん味が変わっていく。「なんだこれ?」器で味が変わることがあると知った私は、そのつもりで自宅で探すと、あった、あった。それにサイダーをつぐとあっという間に炭酸が抜けてしまう。
542
その先生は他にもおかしなことを教えてくれた。備前のぐい呑みを2つ。よく似てる。「片方はビールが不味くなるんだよ」。いやいやそんなことはあるまいよ、と試しに飲んでみたら、そのぐい呑みで飲むと確かに不味い。もう片方の似てるデザインのは普通にビールなのに。
543
カップ酒を二十年寝かしたら美味くなる、というのを二十代のときに思いついたその先生の感覚もどうかしてるし、口にした途端、尾鷲カラスミが合うと見抜くその舌に驚かされた。その中国茶の先生の味覚は卓抜していて、ルタオのケーキに合う抜群の中国茶を出したり。ちょっとおかしいレベル。
544
菊水は実は、私の中では苦手な部類の玄人好みなお酒なのだけど、一口飲んだら、まるで紹興酒!「きっとあれが合うよ」と持ってきたのは、尾鷲のカラスミ。一緒に古酒を口に含むと、ものすごい相性!うまい!
試してみたら、紹興酒と尾鷲カラスミの相性はさほどでもない。古酒と台湾カラスミも。
545
三重の地元で彩酒会というのに誘ってもらった。中国茶の先生が大変なグルメで、お酒にも異様に詳しかった。一番の驚きは、古酒。「菊水」のカップ酒を二十年前に買っておき、寝かせていたという。「そろそろ美味しくなってきた頃だと思うから、みんなで飲んでみよう」。
546
日本酒は「ポン酒」のベタベタした過去の印象がなかなかぬぐえず、冬の時代が長く続いたけど、十年ほど前から女性にも人気となり、かなり親しまれるようになってきた。東日本大震災、新型コロナで再び痛めつけられたが、今も美味しい酒造りが行われている。世界に誇ってよいお酒となった。
547
当時、「夏子の酒」という漫画があって、友人同士で日本酒のことをその漫画で学んだり。
当時の私の好みに合ったのは、「能勢山田錦」「槽口直汲」「無上盃」「亀亀覇」「幻」「南部美人」など。しかし中には、人気が出だしてから味が落ちたものも。桶買いして混ぜるようになったらしい。
548
それから私の日本酒探しが始まった。本来日本酒は美味しいもの。あの味に近いお酒はあるはず。そう思って探し始めると、友人もいろんな情報を集めてくれて、試飲会みたいなのをよく開くように。あのときの飲み物にはかなわないが、かなり近いと思える日本酒に出会えるようになってきた。
549
全壊した酒蔵の木を薪にすることも許可してくださり、おかげで運動場で暖をとれるように。私はその火に当たりながらあの飲み物を頂き、「震災が落ち着いたら、ぜひあの酒蔵のお酒を買おう」と心に誓った。
しかしその酒蔵は翌年、廃業することになったという連絡があった。残念でならなかった。
550
聞くと、そこにある大きな樽は、大メーカーに買い取られ、混ぜられて大メーカーの名前を冠したお酒として販売されるという。こんな美味しい飲み物があんなに不味いお酒にされてしまうの?と衝撃を受けた。
少し瓶に分けて頂き、ボランティアたちで飲んでみた。みんな一様に感動していた。