伊達きよ(@kiyokiyomaroro)さんの人気ツイート(リツイート順)

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。そのくらいに視力が落ちていました。村の人達はよろよろと歩く狐に、金を返せとは言わなくなりました。むしろ「いらない病気をうつされたら困る」と近寄りもしなくなりました。狐は村の中で、不思議なほど静かに暮らしていました。朝起きて、川で顔を洗って蓄えていた木の実を食べて、運が良ければ
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きたようです。視界のぼやけを医者に相談してみようかと思いましたが、やめました。自分の体のことを相談するには、医者に「嫌なこと」をされ過ぎました。彼に相談するくらいなら、なんでもないふりをしている方がマシです。医者は何も気付くことなく、いつも通り悪さをして……そして、ふつりと現れ
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#創作BL なんらかの罰で性格極悪強面男が可愛いぬいぐるみ姿になって雨の中に捨てられまして。びしょびしょのぐしょぐしょになって子供にも見向きもされず犬に匂いを嗅がれてその飼い主に「あらっそんなゴミに触らないのよ」って言われて。「くそが」って思いながら転がってたら、なんかひょろ〜っと
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として立ってくれて、諸々の手続きも済ませてくれました。狐の寝床で「悪さ」をする時、時折思い出したように「あの子は本当に優秀だったみたいだね」「学年で一番だそうだよ」「表彰されたってさ」と教えてくれました。どうやら後継人として学園から連絡がいくようです。狐は医者に聞いた話を何度も
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狐は初めて知りました。黒猫もこんな気持ちだったのかな…と思って、心が切なく萎みました。 もうこのまま話しかけられることはないと思っていたある日のこと、「彼」が思いがけず声を発しました。「貴方の目の手術は成功しました。明日にでもその包帯は取れます」と。そして「家と、しばらく暮らせる
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だけの金を用意してあるので、もし……嫌でなければそこで暮らして欲しい」と。とても低く、重たく、黒猫とは似ても似つかない声でした。 狐はしばし黙り込みました。それからゆっくりと口を開きました。「黒猫…だよな」と。相手は黙ってしまいました。沈黙は肯定と同様です。狐はたまらず「黒猫、
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目の前はぼやけたままでした。びっくりしましたが、そのうち良くなるだろうと思っていました。しかし、何回寝て起きても目の前はぼやけたままです。どころか、日に日にぼやけはひどくなっていきました。 その頃になると、医者が訪ねてくる頻度もぐんと落ちていました。どうやら狐に対する興味も薄れて
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大きな体を両手で包んであげました。 「黒猫」 うっうっ、と泣く黒豹を、狐は「黒猫」と呼びました。「俺の黒猫」と言って額を舐めてやると、黒豹はますます泣きました。もう首に回らなくなったのであろう鈴の付いた首輪は、手首にしっかりと巻かれていました。そこにいたのは、間違いなく狐の黒猫
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ません。彼が泣いている気配が伝わってくるからです。狐の、痩せ細った腕を取って、声を噛み殺して泣いているのに気付いているからです。彼がどうして泣くのか、どうして何も言ってくれないのか、狐には思い当たるようで思い当たりませんでした。目が見えないと、相手の気持ちまで見えなくなるのだと、
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幸せになった今なら、その気持ちを口にしても許される気がしました。繰り返しているうちに、声がカサカサに掠れてきました。目の前も薄暗くなっていきます。遠くの方から、りんりん、と黒猫の鈴の音が聞こえてきました。小鳥の鳴き声より澄んだその音は、黒猫の音です。彼がどこにいてもわかるように、
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この国の○○の息子だったらしいじゃないか」と。狐は「え?」と切れ長の目を見開きました。○○といえば、国の重要な役職です。一般人はおいそれと出会えないような、そんな。「後継者争いから殺されかけて乳母と共に逃げ出して、いよいよ追い詰められて川に流された…ってさ。まるで御伽噺みたいな
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なんてありえるわけがないのに。そもそも、この村に戻ってこないように村の名前すら、帰り道すら教えなかったのは自分なのに。 黒猫は今、幸せに生きている。本当の親に巡り会えて…。それがわかっただけでいいじゃないか、と狐は何度も心の中で繰り返しました。繰り返して繰り返して…、
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話だ」「君、川であの子を拾ったんでしょ?」なんて、笑いながら話す医者は、まるで他人事のようです。いや、他人だからしょうがないのですが、狐にとっては黒猫は他人ではありません。「とても優秀で学園でも目立っていたからね。ずっと息子を探していた○○と感動の再会さ。あぁ、私もいくらか謝礼を
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ました。狐は黒猫のことを聞きたくてたまりませんでしたが、医者の機嫌を損ねると「悪さ」がひどくなるので黙っていました。が、いくら経っても黒猫の話をしてくれないので、狐はついに耐えきれず黒猫の話をねだりました。すると医者は思い掛けないことを言いました。「あぁあの子ね。あの子は凄いね。
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噤みました。黒猫であるはずがないと気付いたからです。どうして幸せに暮らしているはずの黒猫が帰る家も教えずに放り出した狐など探し出すでしょうか。…その部屋は薬品の匂いがしましたので、狐は躊躇った後に「××…?」と医者の名前を口に出しました。すると、息を吸うような音がして、それから、
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ドアがバンッと力強く閉められました。鈴の持ち主は部屋の外に出て行ってしまったようです。狐はどうしようもないまま、寝床に体を埋めました。それ以外、狐に出来ることはなかったからです。 それから、狐は一日のほとんどを寝床の上で過ごすようになりました。薬を与えられているからか、日がな一日
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がくがくと揺すぶられて、包帯が緩みました。久しぶりの光に目を眇めた向こう側に、黒い何かが見えました。耳には、りんりんと軽やかな音が絶え間なく響きます。「そりゃあ、怒ってますよ……、いや、嘘、怒ってない…、怒ってる。悲しい、そして、悔しい……。違う、僕は、僕は……」「貴方がこんなに
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なったせいかどうか、最近は現実にはない音を聞いてしまうようになりました。それはどれも、黒猫に関する音ばかりです。寝床に入って、ちりちりと可愛らしいあの鈴の音を聞いた…気がして何度飛び起きたことでしょう。今や黒豹として立派に自身の仕事を務めているだろう彼が、あの「黒猫」に戻ること
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ことを伝えました。黒猫が狐と話さないのは、きっと狐に腹を立てているからだ、と。いつでも帰ってきていいなんて調子のいいことを言って姿を消した仮の…保護者に怒っているのだろう、と。ごめんな、ごめん、と繰り返す狐の肩を大きな手が掴みました。「怒ってますよ!」という怒鳴り声とともに。
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目が覚めると、やはり視界は真っ暗でした。しかしぼやけているのではなく、強制的に真っ暗闇の中にいるようです。目に触れると包帯が巻かれているのがわかりました。どうやらどこかの寝床に寝かされているのだとわかり、狐はよろよろとそこから出ようとしました。が、力のかけどころが上手くわからず、
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魚を釣りあげ焼いて食べて。そしてまた寝床に入って寝る。その繰り返しです。たまに川の淵にぼんやりと座り込んでいると、小さな鳴き声が聞こえてきます。その度に「黒猫」と叫んで狐は川に飛び込みます。しかしもちろん、川に籠は流れてきませんし、黒猫もどこにもいません。狐の幻聴です。目が悪く
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ごめんな」と謝りました。「黒猫、ごめん。お前を放り出した俺を怒ってるんだろう。なのに目を手術してくれたんだな。ありがとう、…ありがとう。でも、家なんていいんだ。金なんて…そんな。目が治ったらそれでいい。俺はあの村で暮らしていけるから。だから、お前は幸せに……」狐はずっと思っていた
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をして一日で起き上がるようにしていましたが、本当は二日でも三日でも寝込んでいたい気分でした。そんな最悪の日々でしたが、狐はそれでも幸せでした。黒猫が元気に学園に通っていると知っているからです。 医者はきちんと約束を果たしてくれました。黒猫は全寮制の学校に通っています。医者が後継人
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うとうとと眠気が消えません。 ふと起きると、よく人の気配を感じました。部屋には何人か出入りしているようでしたが、狐に判別がつくのは一人だけでした。あの、鈴の音をさせる人です。彼はよく部屋にいるようでした。時折、寝ている狐の毛を梳いている気配がします。狐は目が覚めていても、何も言い
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隣に住む兄弟の、弟の方のことが小さい頃から好きで好きで、でも「男同士だし、歳も離れすぎてる。こんな気持ち悪い感情には蓋をしておこう」と思ってる男の子。ちなみに兄の方は同級生で親友。でも何かのきっかけでその気持ちが兄にバレて「男なら誰でもいいん?それともうちの弟だけ?本気?」って