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それで黒猫の目がなおるように手術を受けさせてやるつもりだったのです。狐は「ずっと黒猫と一緒にいたい」という願いを箱に仕舞って鍵をかけて、縄でぐるぐる巻きにして心の泉に沈めました。代わりに、「黒猫を立派にしてやりたい。素晴らしい生活を与えてやりたい」という願いを掲げました。
続く。
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をつけました。村一番の金物屋で仕入れた上等の鈴です。まるで澄んだ小鳥の声よりまだ美しくリンリンと鳴る鈴の音は、美しく愛らしい黒猫にとても似合っていました。代わりに狐の毛皮をごっそりと売ったので、狐の尻尾はさびしくなりましたが、狐はそれでも満足でした。黒猫には見窄らしい尻尾も見え
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#創作BL
なんかこう上流階級の人間たるものパートナーと恋人を別にするのが当たり前、なDom/Subの世界。「恋人に自身の膨れ上がった醜い欲望をそのままぶつけるなんてはしたない」とされてる、みたいな。で、金持ちボンボンなDomが苦学生Subとパートナー協定結んで楽しくやってたんだけど、
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ませんから、いいのです。黒猫は誇らしげに鈴を鳴らして狐に聴かせてくれました。狐が「あぁいい音だ。そこにいるのがすぐわかる」と言うと、黒猫は「いつでも側にいます」と言いました。狐は少し大きくなった黒猫をよいしょと抱き上げて、その腹に頬を当てて「うん」と頷きました。
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んだろう。そんな金があったら親父の罪滅ぼしにあてたらどうだい」と嫌味を言ってくるほどの成長っぷりです。狐の父が村人から騙し取った金は、狐が返していました。というより、返しきったはずでした…が、まだ利子が残っています。狐は後何年、後どれほど金を返さなければならないか知り
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黒猫は健やかに育ちました。柔らかな毛はなめし皮のように艶やかに硬くなり、丸っこかった鼻先はつんと尖って、ゆるりと持ち上げた頬から見える牙はすらりと尖っていました。狐の足先ほどの大きさしかなかったのに、今はその半身ほどの高さまで背が伸びました。村人が「よっぽど良い物を食わせている
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黒猫を拾ってから3回冬が来ました。黒猫は元気に育っています。いつの間にか、狐と同じくらいの大きさになってしまった黒猫のために、狐は新しく寝床をこさえてやりました。が、それぞれの寝床で寝たはずなのに、朝になると隣には黒猫がいました。黒猫は「あなたの側にいないと眠れない」と言いました
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ませんでした。村人の誰も、狐にそんなことを教えてくれなかったからです。狐はきっと、自分が生きているうちに返せる額ではないのだと思っていました。昔はそれでいいと思っていました、が、今は少し違います。村で父親の罪を償って生きていくより、黒猫とどこか遠くでのんびり暮らしたいと思うように
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イケてる(と自分で思ってる)リーマン。いつもはきっちり髪を撫でつけてスーツでビシッと決めてるけど、休みの日はよれよれスウェット。んで、ボーッとスーパーに行ってカップラーメンを吟味してたら「あれ、先輩?」って話しかけられて。振り返ればそこには後輩(めちゃくちゃ営業成績が良くて
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なってしまったのです。もちろん、そんなこと誰にも言えません。
黒猫には、「大きくなったら村を出て生きていくんだ」と言うつもりでした。黒猫は上品で美しく愛らしいのです。目さえ見えれば、きっと立派な職に就いて、素晴らしい人生を歩めるはずなのです。狐は、金と毛皮を貯めていました。
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メス堕ちさせられた後に歳取って捨てられたメスおじさん、かわいそう。「ずっと家にいてよ。俺が帰ってきた時笑顔で迎えてくれるだけでいいから」とか言われて仕事もまともにさせてもらえなかったので、無職期間が長すぎるし、そうなると就活も中々難しく。あっさり若い子に乗り換えていくらかの
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あげるように何度も何度も頷きました。それでも黒猫が不安そうにしていたので、狐は言いました。「君が鈴を鳴らせばどこにいてもわかるから」と。「どこにいてもきっと見つけてあげるから」と。黒猫は狐を見上げて、はい、と頷きました。黒猫はとても賢くて、とても聞き分けのいい子です。黒猫は、
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#創作BL
なんか目覚めたら「キスしないと出られない部屋」ってデカデカと書かれた部屋に閉じ込められてた男。やれやれ俺とキッスするのはどこの子猫ちゃんだい?って振り返ったらズンッ…って感じのエイリアン的な生物(?)が立ってて「ギャーーー!!!」ってなる。阿鼻叫喚のち
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。狐はそんなはずはないとわかっていましたが、何も言わずに黒猫を受け入れてやりました。黒猫の願いなら、どんな小さなことでも叶えてやりたかったのです。
黒猫の体がしっかりとしてきたということは、手術を受けるだけの体力もついてきたということ。狐はこっそりと街に出て、医者に事情を説明しま
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ではなかった愛しい黒猫を思い泣きました。医者はそんな狐を見下ろし弾けるように笑いながら「あの子は黒猫ではないよ。獰猛で優秀な黒豹さ」と言いました。
狐の黒猫なんてものは、この世のどこにも存在しなかったのです。
続く。
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狐は「ありがとう」と言いました。どうしてこんなに大事な言葉を忘れていたんだろうと不思議に思いながら、「ありがとう、黒猫」「ありがとう」と何度も何度も繰り返しました。こんなにも透き通ったありがとうを言うのは人生で二度目でした。
初めて混じり気のない「ありがとう」を聞いたあの時のよう
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した。医者は狐の話を親身になって聞いてくれました。そして狐の顔や毛皮をジッと眺めてから、狐の手に自身の手をするりと絡めてきました。「手術後は、その子を手放す気でいらっしゃると?」どうして手を触られているのかわからないまま、狐は正直に「あぁ」と頷きました。黒猫は見た目もいいけれど
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頭も賢いので、しかるべき教育を受けさせてあげたいと思っていました。もっと大きな街の全寮制の学園に入れてあげられれば、それが一番いいと。しかし、手術も受けさせて立派な学園に入れてやるには、金も毛皮も足りません。とりあえずは目の手術を優先して…、と語る狐に、なんと医者が「よければ私が
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狐はいつも寝物語に外の世界の素晴らしさを語りました。「美味しいものがたくさんある」「狐さんのご飯が一番美味しいです」「綺麗な人や物がたくさんある」「僕の目には見えません」「金が…、何も不自由しないくらいの金が稼げる」「貴方と楽しく暮らせるだけのお金があればいいのです」しかし、
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黒猫を抱き締めました。黒猫も、同じだけの力で狐を抱き返してくれました。狐は泣きました。黒猫に悟られないよう、静かに、ほろほろと。
父の罪を償うためだけにあると思っていた自分の人生に、もうひとつ、それとは比べようもない立派な意義が与えられたのです。狐は生まれて初めて「ありがとう」
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なるまで助けることができなかった僕自身に……怒ってる、嫌いだ、苦しい……」眩しい世界の中で泣いていたのは、黒猫とはまるで違う、大きな黒豹でした。大きな大きな体を丸めて、おいおいと泣いています。どこからどう見ても黒猫ではない彼に、しかし狐は手を伸ばしました。思い切り伸ばして、その
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援助しましょうか」と申し出てきました。狐が驚いて顔を上げると、医者は「今のお話に胸を打たれました。良ければ私がお金を出しましょう」と。「本当に?」と驚く狐に、医者は「ただし」と話を付け加えました。「全額は援助できません。一部は狐さんにもご負担していただきたい」と。そして「やぁ、
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返すのはお金でも毛皮でもなくていい。貴方自身で払っていただければ」と。狐は最初意味がわかりませんでしたが、手首を這う医者の手が二の腕まで伸びてきた時に、ようやく気付きました。狐はほんの少しだけ悩みましたが、ほんの少しの後にしっかりと「わかった」と頷きました。そも、狐には一生
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かかっても返せないだけの借金があるのです。それが少し増えたところで痛くも痒くもありませんでした。自分の体で黒猫を素晴らしい世界へ送り出せるなら、それ以上に良いことなどないと思ったのです。狐は用意周到な医者と契約書を交わして、来た時と同じようにこっそりと家に帰りました。
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と心からの感謝を、誰にともなく述べました。
続く。