内田樹(@levinassien)さんの人気ツイート(古い順)

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勉強したけりゃ、ひとりでやればいいということを言い放つ人は学問というのがただの情報のことではなくて、自由な言明が行き交い、その当否を専門家たちが長期的かつ集団的に判定する力動的な場の働きのことだということがわかっていない。
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Nature の読者向けニューズレターで本日日本学術会議の会員任命を政府が拒否したことが報道されました。「説明のない拒否は会議の存否に関わることだ」という前会長の山極先生のコメントが伝えられています。日本政府の恐るべき後進性が世界の科学者館の知るところとなったわけです。
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山崎雅弘さんは今は1930年代に近づいていると指摘されていますけれど、今は統帥権も治安維持法も特高も憲兵隊もないんです。それにもかかわらず1930年代に近づいているとしたら、日本人の権力に抗う力は1930年代よりもはるかに衰えているということです。その事実をもっと恐れるべきだと思いませんか。
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どんな反政府的なことを言ってもいきなり逮捕されたり、拷問されたりするリスクは今の日本ではとりあえずはありません。でも、それにもかかわらずこれだけ言論が萎縮している。何を怖がっているんでしょう・・・
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なぜ菅政権は最初にいきなりこんな「悪手」を打ってきたのか?それについて納得のゆく説明をまだ聴きません。学術会議にマウントしてみせることにそれほどの政治的優先性があるとは思えない。おそらく「学者は恫喝すればすぐに縮み上がる」という成功体験が官邸の気を緩ませたのだと思います。
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2014年の学校教育法改正でほとんど一夜にして日本中の大学教授会は「教授会自治」の権利を奪われました。そして大学は限りなく株式会社に似たものに改変された。でも、それに抗議して辞職した学者も、罷業した学者もいなかった。「なんだ学者ってまるでヘタレじゃないか」と政治家たちは思った。
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「大学人」は本質的に「サラリーマン」です。だから我が身大事で黙って「上」に従う。でも、「学術共同体=ギルド」に属する学者は「職人」的エートスを色濃く残す前近代的な存在です。その違いを政治家たちは見落とした。そして「職人の矜持」という虎の尾を踏んだ。という仮説はどうですか。
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学者の会では日本学術会議の件で政府に対して抗議声明を発した学会のリストを作成しました。どうぞご覧ください。anti-security-related-bill.jp
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『潮』では「どうして階層が二極化し、中産階級が空洞化するにつれて国民は権力に服従するようになるのか?」についての仮説を提示してみました。 「中産階級が厚みを増すと市民の政治意識が高まり、民主化闘争が起きる」というのは歴史の法則です。 東アジアでそのプロセスを逆走した国はありません。
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国民が無気力になり、権威に服従すれば統治コストは最少化できます。でも、そんな国からは新しいものはもう何も生まれない。経済力も、文化的生産力も、学術的発信力も失われる。盛運の国は統治コストが嵩み、衰運の国は統治コストが安く上がる。どちらを選ぶか。日本の為政者は後者を選んだのでした。
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日本学術会議への攻撃は「学術的発信力を犠牲にしても政権の安定を優先する」という政治的判断の結論です。国力が衰微しても政権が安定すればよいというのは一つの考え方です。それでいいという国民が過半数ならどのみち日本に先はありません。
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これはふつう「辞職願」を出すレベルの大失策でしょう。ただのうっかり事実誤認ではなくて、世論を日本学術会議に敵対するように誘導するためのネタを探して、フェイクに釣られて、それを報道をしたんですから。 twitter.com/yurikalin/stat…
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新聞の電話取材は日本学術会議の件。なぜ官邸はこのような政治的緊急性のない事案に手を突っ込んだのか。なぜ学術共同体からの烈しい反発を予測できなかったのか。「政治的に無能だから」というのは一つの解ですが、それよりは彼らなりに合理的な根拠があってしたことだと考えた方が生産的です。
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政府の最優先課題は「統治コストの最少化」です。前政権で権力者が学んだのは、異論を無視して政治に対する諦めと無力感を蔓延させ、イエスマンを重用して反対派を日干しにし、中産階級の没落を加速すると、社会的不満が醸成されるどころか反対勢力は一層弱体化するということでした。
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国民が無気力で虚無的になればなるほど統治コストは逓減する。その目的を実現するために「反政府的な言説をなす者はいかなる公的支援も期待できない」という新ルールを国民に教え込んでやろうとした。先制の一撃で学者たちをなぎ倒すつもりだったのです。そして、学者が一番弱そうに見えた。
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この診立ては部分的には正しかったのです。実際に90年代からあと日本の大学人は教育行政に押し込まれて譲歩し続け、ほとんど有効な反撃ができなかったからです。「学者こそがこの社会の最弱の環であるから、ここを突破口にして知識階級を全面降伏に持ち込む」という楽勝のシナリオを官邸は描いた。
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でも、このシナリオは破綻しました。世界の科学者の懸念を呼び起こし、国際世論を「日本の新しい統治者は反知性主義の暴君らしい」という方向に導いてしまった。失ったものはあまりに多い。なぜ、こんな「バカなこと」をしでかしたのか。続きはまたのちほど。
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日本学術会議問題、首相が「自分が決裁した文書ではすでに6名は排除されていた」と言い出しました。「総合的俯瞰的に見て」たんじゃなかったんですね。官僚が勝手に忖度してつくったリストを中身を見もせずに「はんこ」を捺しただけという話に落とし込むつもりなんでしょうか。
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「嘘つきの陰謀家」とみなされるのと「官僚に振り付けされている中身のない神輿」と見なされるのとどちらがいいかという二者択一を迫られて、首相は断腸の思いで後者を選んだ、ということでよろしいのでしょうか。
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「管理コスト・統治コストの最少化は絶対善であり、あらゆる政治目標に優先する」と信じている人たちのことを僕はこれから一種の「カルト」とみなします。政治理論というよりは信仰ですから。日本の指導層の半分以上はこの「カルト」の信者で占められるようになりました。
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今の日本のシステムを冒しているのは「管理コスト最少化主義」です。あらゆるシステムをトップダウンの「効率的」な組織に改変することに過去20年間、優先的にリソースを投じてきた結果、「暴君とイエスマン」だけで構成される単素的な組織が出来上がった。確かに上の指示は末端まで届きます。
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学者の会の記者会見だん。佐藤学、浅倉むつ子、大沢真里、小熊英二、山口二郎、久保亨、戒能通厚という諸先生方の間に「日本学術会議と縁もゆかりもない学者」が一人混じってしまいましたが、学術共同体の独立性は日本の国力回復に必須であると僕は信じていますから全力で政府に抗議します。
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関西の学者の会も抗議声明を出しました。 kobe-np.co.jp/news/sougou/20…
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学術会議問題で新聞からメールで取材があったので、そこに書いたことをそのまま転載しておきます。 今回の政権の行動の意味するところは? 政権発足と同時に「反対するものは容赦しない」というハードなイメージを国民に誇示する目的で行った「デモンストレーション」的な行動だったと思います。
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しかし、学術共同体全体からの予想外に強硬な抵抗に遭遇して、政権発足早々に政策的優先性の特にない日本学術会議問題に政治的リソースを割くことを余儀なくされた。「学者風情は一喝すれば縮み上がる」というふうに考えていた官邸の読みの甘さが露呈した。政治センスがひどく悪いと思います。