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あと5時間、本日23時から約50分間、NHK総合でSONGS出ずっぱりです。ライブ性が高すぎて、めちゃくちゃ緊張してます。コンサートのほうがずっと楽です。でも、もう引き返せない。行きます! ジェットコースターが落ちる直前みたい。ツイッターとインスタ両方開いてお待ちください。不安とともに。
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あ、30分! それくらい緊張!
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千鳥は、簡略化された鳥の模様。布や食器の「和」の柄は、図形と線が並ぶ、抽象画のよう。西洋の食器の写実的な絵に比べ、日本の昔のデザイナーたちは、禅僧のように深く考えて、自然や動物の本質をとらえ、最小限まで絵を簡略化した。そのままを描くのではなく、深く考えて、そぎ落とす、日本っぽさ。
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NHK・SONGSの打合わせで焼き鳥屋さんにいるが、店のマークを見て、物を簡略な絵にするのは、漢字がそうだからか、とも思う。が、中国の湯呑みは、日本のようにすっきり簡略ではない。うーむ、なぜだろう? と、しつこく考える。その、しつこく考える傾向こそが、日本っぽいと思う。
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日本の便利モノとか、超しつこく考え抜いてあって、驚く。ご飯のしゃもじだって、ついにご飯粒がくっつかないところまで持ってきた。木のしゃもじから、あの白いブツブツのやつまで、何百年。平安、鎌倉、室町、江戸を越え、明治、大正、そして白いブツブツへ。どんだけしつこく考えるの! と思う。
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インターナショナルスクールから純日本の学校に移った友人の子が「日本の学校って自分で掃除するんだよ!」と驚いていた。米国のほとんどの学校では、子供は掃除はせず、プロの大人が掃除をする。「掃除なんか、子供の学ぶ権利の邪魔」か。でも掃除は、実は学校で学ぶ大切なことの一つなのではないか?
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米国でも、私立のエリート校では、生徒は掃除をさせられる。やはり掃除は、人生に大切なスキルなのだろう。言いかえると、日本の学校には、米国ではエリート校にしかない、スキル獲得のプログラムがある、ということ。それは「掃除の時間」笑。
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米国式の社会の理想像は「うまく投資して、35歳までに引退して、ヨットを買う」的なこと。あくせく働くのは負け組、という見方。しかし、何か変だ。世界中の子供は「将来〇〇になりたい」と、働くことを夢見る。「将来投資して、早く引退したい」という子供はいない。働くことは、憧れだったはず。
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米国式のグローバル社会が広がると、米国式の考え方、働き方は広がる。「仕事を道として考えるなんて、古い考えだ」と。でも、米国式の考え方や働き方は、米国を幸せな社会にしてきただろうか? 僕は、また多くの米国人は、そうは思わない。むしろ、米国式でない、新型の日本式があれば、と思う。
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“失敗図鑑”という、歴史上の失敗を集めた本がある。日本人が書いた、とても日本っぽい本と思う。米国では、”私はこうして成功した”的な「成功の本」が売れる。しかし日本の僕らは、失敗に惹かれる。成功した源頼朝よりも、失敗した牛若丸、義経が好き。失敗した織田信長も、失敗した新選組も、大好き。
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米国式のグローバル社会の世界観は、強いリーダーが、成功によって世界を導くイメージ。一方、日本伝統の世界観は、多くの人々が失敗をし、耐え忍ぶ姿を、あはれと愛するイメージ。僕は日本式は、実は勇敢な、進んだ感覚と思う。だって現実の宇宙は、成功よりも、無数の失敗でできているから。
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失敗はおもしろい。失敗はあるある。子どもの生活は失敗だらけ。そして僕ら大人も、ひそかな失敗がいっぱい。成功なんて、馬の鼻の先にぶらさげられた人参だ。馬は全力で走るが、絶対に人参にとどかない。でも、その失敗のユーモアとあはれは、美しい。成功は幼稚、失敗は成人。失敗は、真実の美。
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今年の初め、CMのために、自分の昔の色んな曲のマスターテープを聴き返した。それは昔住んでいた部屋に、また住むような時間だった。当時考えていたことや、一緒にいた人たちが蘇ってくる。26歳でアルバム”LIFE”を出して、いっぱいの愛を受けて、有名な先輩たちと遊べるようになった頃の自分を思う。
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今の僕は、当時遊んでくれた先輩たちと同年代。10代20代の人から見ると、51歳なんて遠い人だろう。けれど今の僕から見ると、子供でさえ、この宇宙に一瞬、一緒にいる仲間に見える。あの先輩たちも20代の僕をそう見ていたのだろう、と気づく。当時一緒に録音したメンバーや若いメンバーと、演奏します。
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今年の2月、1995年から今までを思いながら作業した”強気強愛 1995 DAT Mix”という作品を仕上げた、1週間後。気になっていたアーティストのライブに行った。自分が1995年に初めて演奏した武道館につくと、そのライブのタイトルはなんと”1995”。ありゃ!と思った。そういう偶然って、ある。
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その後メールをやりとりして、彼女が1995年生まれとか、色々を聞いた。その中で、”彗星”の歌詞の焦点が合ってきた。そういう、人と一緒に生きている中の偶然はかけがえがない。1995年生まれの人が、僕の曲を聞いて、今は曲を書いて、僕にも届く。それはまたくり返す。言葉は、続いていく。
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どんな言葉も、過去に誰かが言った言葉の続きだし、未来に誰かが言う言葉の、前にある。言葉は言語を超えて、宇宙をぐるぐる回っていて、その中で一瞬、スロットマシンの目が揃うように、ガシャッと言葉が揃う。その時、宇宙を貫く何かが生まれる。そしてスロットマシンは、また回り出す。
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前回のSONGSの最後、僕は「今、東京で見えるものを作品にしたい」と大きなことを言ってしまった。そして言った以上、やってみて、新しいアルバムができた。アルバムの最初の曲”彗星”も、最後の曲”薫る”も、日本で暮らしていて、みんなから貰ったものへの、お返しと思う。
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今の僕は、人は一緒に生きていて、君が僕をつくり、僕が君をつくる、と思う。
君は僕を作ってくれる。それが僕が、お返しに、作品を作りたい、つまり、君を作りたい、と思う理由です。
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子どもにとって「重力」は敵なのだなぁと思う。滑って転ぶ。イスから落ちて舌とか噛む。何かが倒れてきて足の上にガーン。So kakkoiiのジャケになってる6歳長男が先日、立ち上がりながら言った。「なんで世界はこんなにハイテクなのに、重力安全装置つくれないのっ?」
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ホットテイクhot takeとは、世間が大方合意している時、わざと反することを言って、トラフィックやフォロアー数の増加を狙う意見のこと。10人のうち9人が賛成だとすると、賛成を言うと目立たないが、1の反対意見を言うと目立ち、名前を覚えてもらえる。目的は自己のブランド増強。内容はどうでもいい。
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発音はハッテイク笑。最近のUS日常会話ではジョークで”I got a hot take on that”(じゃあ、hot takeを言うね)と言って、わざと物議を醸す意見を言ったりする。確かに10人のうち9人と同じでは「またあれか」と、誰も注目しないものね。1を言って目立つのが得策、というわけ。今どきの行為、と言葉。
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書店で文庫本にかけてくれるカバー。NYCの地下鉄でカバーをかけて読書してる人は見たことないが、日本の電車では毎日、カバーの下は隠され、推測される。同様に冬の日本でのマスク着用率は、非常に高い。あれだ、冬のマスクは、保湿だバイ菌だと理由をつけるけど、きっと自分という文庫本のカバー。
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秋の日の #スッキリ、生本番が終わって楽屋に戻ると「小沢さん、『いちょう並木のセレナーデ』トレンド入りしてますよ」。僕でなくて、楽曲が。最高。
25歳のオザケンくん。君が一生懸命書いた曲、51歳の僕が歌っても良い曲です。そして曲名憶えていてくれて、ありがとうよ、友よ。