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演劇人てプライド高くてシャイだから。営業が苦手だよな。頭下げてチケット売るより、企画書の言葉こねくる方が上手いし、得意だ。
でもなあ、特にこれからの若者諸君。芝居は客を呼んでナンボだぜ。まず隣人にちゃんと見てもらおう。
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ただ言っとく。文化庁の調査が出てて、助成金スタート以来、落語や音楽などが観客を増やしているのに、演劇だけが減少してると報告されてる。文化庁もそこを問題視してる。
審査員にだけウケりゃ良いって時代はもう終わりだよ。
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そんななか、助成金などあてにしないで、ほぼ自力で頑張ってたのがキャラメルボックスだったんだ。
だからこそ、胸が痛い。
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お客が少なくても、演劇的に優れたものには助成金がつく。いつからか、集客より助成取りが大切な活動になった。客ウケより、批評家ウケ。小さな小屋で長く公演するものばかりになった。批評家に来て貰う為にもね。
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新国立の研修所も、国立劇団を作る気がないなら、せめて今ある劇団のひとつを丸抱えすべきだ。
学校みたいなレッスンだけで、役者が育つはずないとみんな分かってるはずなのに、おかしいだろ。
国立の研修所から、芸能事務所に送り出すのが目的で、良いのかよ。
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たとえば、演劇科とか持ってる専門学校、大学などは、今ある劇団一個ずつ抱えるべきだ。
学校でほんの2、3年経験して、使える役者なんかになるはずないんだから。
その先の用意もなく、学費だけ吸い取って投げ出してんだから。
使えるように鍛える劇団の仕事も手伝いなさい。
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俺らが芝居を始めた頃、エンゲキは青春の光だった。
生活なんかどうでも良いし、収支も気にしたことはなかった。
ひとときの輝きだからな。
でももはや、青春じゃなく人生だからさ。
業界全体、この先どうすべきか、考えたいんだ。
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うちだって、メンバーがそれで食えてる訳じゃないしな。
生活をみつめ直して、辞める者もいる。
若い頃は、何とも思わなかったよ。
弱肉強食の世界で良いし、ショービジネスの世界を勝ち残った者だけがギャラを手にする世界で結構、って。
でも今は違うんだ。
才能を、見殺しにするのがツライ。
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義務教育の科目に演劇がないという問題は、教育的な側面での損失であると同時に、演劇界にとって演劇人の生きる道が、狭すぎるという問題なんだ。音楽界、美術界には学校の先生たちという裾野が豊かに広くある。演劇界だけが、超越した者しか食っていけない世界になっている。
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潰れるのは自己責任だけどさ、そもそも無茶なことを、情熱と呼んでる狂気と、夢と呼んでる思い込みだけで成立させてる、幻しの花みたいなものなんだよ。
咲いてる姿はほぼ奇跡だよ。
その値打ちに、世の人々にもっと気付いて欲しいんだ。
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まだまだヤル気に満ちてた老舗劇団が、こんな風に活動中断しなきゃならないこと、演劇界はもっと深刻に受け止めた方が良い。経済の論理だけで処理したら、ダメなんだって。 資本主義では語れない価値なんだって。
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今の演劇界を支えてるのは、劇作家も演出家も役者も、劇団で研鑽積んだ人たちなんだよ。 義務教育の科目に、舞台芸術がない我が国で、それらを生み育ててるのは、劇団なんだってば。潰しちゃイカンのよ。
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潰れるのは、ゼッタイにうちが先だと思ってたけどねぇ。
実は以前、知ったのよ。何万人も集めるキャラメルも、三千人でヒーヒーしてる、扉座も結局、同じようにヒーヒーしてるという事実に。
おそるべし、演劇経済。涙。
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劇団やってくってのは
ホントにホントに大変なんだよ。
好きでやってんだろ、って言われりゃ
まったくその通りなんだがね。
俺は、日本文化における、国土を守る、米作農家みたいなものだと思ってるよ。