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ひとつここは継ぎ足しタレの、新規タレによる元タレの希釈割合がアボガドロ数を超えると推定される時間を「タレ消滅時間」と名づけて、この店のタレは継ぎ足しです(消滅時間150日)などと書くことを義務付けよう。店選びの参考になる。
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鍋の残タレ量が5割になった時点で5割継ぎ足し、これを毎日やっているとすると、三ヶ月弱で最初のタレの希釈割合がアボガドロ数を超えるので、三ヶ月前の分子は一つも残ってないことになると思う。
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継ぎ足しのタレという言葉は、「タレをいちいち新しく作り直すのではなく、現在のタレの残った鍋に新タレを追加しています」という意味のことだと思うのだが、継ぎ足しを実施するときの残タレ量と継ぎ足し量の比率、継ぎ足し周期を言わないと何を言ったことにもならないだろう。
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誰かが濡れ手に粟で公金をせしめたことに腹が立つのは当然ですが、ここで怒っては次の危機の時に政府の金払いが今回以上に悪くなる。未来の自分のため、子どもたちのため「緊急時に政府がゆるい審査でとりあえずお金を出す。不正はあとから取り締まる」を批判しないようにしたい。
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こうやって万引き対策で「レジで登録しないと有効化されない」という商品が広がってゆき、やがてコンビニおにぎりとかまでレジでアクティベートしないと食べられないものが販売される。なんか盗んで食べたら具合が悪くなる毒が注入されていて解毒剤をレジでおにぎりに注射してやっと食べられるように。
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最近買ったゲーム機は、買って家に帰ってきて電源を入れても、更新ファイルをダウンロードしたりなんとかアカウントの登録をしたり延々設定をやらされ、ぜんぜんゲームが始まらない。せっかくだからあれを店にいるあいだにやってくれるようにしたら、転売はなくなるのではないか。
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「風林火山は本当は風林火陰山雷である」はテニスの王子様が考えたよくできたフィクションだと思っていたら本当にある言葉だったので、松竹梅だって本当は松竹杉桧梅桜とかで、春夏秋冬もほんとうは正月春梅雨夏夏夏秋冬冬かもしれない。
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「なあ父ちゃん、なんで治癒魔法をかけるとアンデッドにダメージがあるん? おかしくない?」
「あのな。店の入り口にアルコールがあるだろ。あれをウィルスにかけるとどうなる?」
「ウィルスはしぬ」
「父ちゃんがアルコールを飲むとどうなる?」
「父ちゃんはげんきになる」
「そういうことじゃ」
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「ビール」というものに長いこと親しんできて、あるとき、ファンタジー小説で登場人物たちが「エール」を飲んでいたら、思いますよね。これは「ビールのいいやつがエール」であると。なにしろBルに対してAルという名前なのだ。
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世界がたいへんなときにサイゼリヤがどうとか能天気なツイートをしていていいのかと私も思うけれども、むかし上岡龍太郎が「戦争をするほうが不謹慎である」と言っていてその通りなので、戦争が始まりそうな時に能天気なツイートをしていてもよい。不謹慎なのはあちらである。
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矮星のことを「わい星」と書くとなんかネットスラングみたいだ。「わい星、質量が足りず核融合反応に無事失敗」みたいな感じ。
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素朴な感覚が大間違いな答えを出すことがある。問題は一般に複雑で、最後はできる限りの計算をして数値で比較してどちらがよりよいかを考えねばならない。感情に任せるのではなく時には苦しくても結果に従う、というのが人間の理性だろう。
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「あなたは正しい」「理解できない、難しいことを言ってくる人は信用するな」「直感が常に正しい」と言ったほうがウケるからだろうけど、飼い猫を大自然の中でのびのび遊ばせてやるほうが「よいこと」なのか、そんなことにすら感性は間違った答えを出すのだ。
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うろ覚えだけど、前にラジオで「エシカル(あるいはエコ、ロハス、sustainable、SDGs)はちっとも難しいことではなく、感性に従って自分のよいと思うことをすれば自然に達成できる」と言っていて、すごく危ない発想だと思った。何が本当に「よいこと」なのか、感性なんかに任せるとほんとに危ない。
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仮に10代に時間を戻してやり直して、同じ大学に入ることはたぶんできると思うし、おそらくだいたい同じ顔ぶれの友達に会い、ひょっとしたらいまの妻とも同じように出会い同じように結婚できるかもしれない。ただそこで生まれてくる子供は今のこの子達ではない。この子たちとは再会できない。
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バックトゥザ・フューチャーのマーティは父と母に出会った時点で(おそらくその時代に出現した時点で)生まれる可能性をほぼゼロにしてしまっていて、どんな手段を使っても再び生まれることはできない。そう気づいたら、軽々しく「やり直したい」とは想像もできないです。
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とくに人間やそれに似た生き物は、減数分裂や受精の過程が高度にランダム的なので、夫婦の出会いなど他の条件を人為的にすべて調整しても、なお生まれてくる子供の遺伝子はやり直し前と異なったものになる。生まれるのは君たちの(この世界に存在しなかった)兄弟姉妹に相当する誰かで君たちではない。
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「もしもこちらの学校に行っていたら」とか「あのとき好きだった女の子に声をかけていたら」とかとはわけが違う。「君らが存在しない現在」を夢想するのは、少なくともその人たち(私の子供たち)の前でするには、非常に失礼な想像に思える。
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子供に「おとうさんは若い頃に戻ってやり直したいと思わない?」と聞かれた。確かに高校生とか、ある時期まではよくそんな想像をしていたけど、あるとき「時間を巻き戻してやり直したら君たちとはもう出会えない」と気付いてあんまりそのことは考えないようになった、と答えた。
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「ここでマスクを叩いておくと自民党への支持を削ることができる。自分の支持する政党中心の政権ができればいい」と思っている人もいるかもしれないけど、そうやって政権をとったら「無駄遣いしない政府」になるのか。違う。ケチな政府になるのだ。
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緊急時には多少無駄に終わってもやったほうがいいことはあり、政府は図体が大きいから計画して実施して結果として無駄になるかどうかは事前にはわからない。私は次の政権も次の次の政権も緊急時に無駄を恐れず手を打つ政府であってほしい。
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かつての安倍政権への支持とか、もうどうでもいいので、政府配布のマスクが世紀の無駄遣いだった、と叩くのはやめてほしい。いまここでマスクについて無駄を責めすぎると今度できる政権がどの政党中心であっても「あのときは無駄を出して叩かれた」と緊急時のあらゆる施策が控えめになる恐れがある。
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政府が決めていたことを国民にとって有利な方に変更したのを「迷走」とか「二転三転」とか言うのをやめてほしい。そういう形容で勝利を祝うと、今後の政府が(どこの政党中心であれ)一旦決めた方針をくつがえしにくくなるではないか。もっともな反論にあったら修正したらいいと思う。
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国がマスクを一律に配ると、
「マスクを持ってない、買えない人間はいないはずなので、公共の場で入場にマスク必須を公言してもよい」という効果がありそうだと当時思った。しかも同時に「布でもよい」と。これにはマスクそのものより大きな効果があった。国はマスクではなくメッセージを配ったのだ。
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カタカナ語が氾濫している感じはあるが、コワーキングスペースはしかたがない。これを日本語でやろうとすると「集団労働所」とかになってすごくこわいかんじがするからだ。