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日本では、遺伝子組み換えトウモロコシは家畜の飼料となるケースが多いが、それを餌とした牛や豚、鶏の精肉だけでなく、卵や牛乳などの畜産品も、遺伝子組み換えという表示義務を負わない。遺伝子組み換えトウモロコシを食べて育った家畜には、何らかの影響があるはずなのに、その検証もされていない。
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1999年、南米ボリビアのコチャンバンバ市で水道が民営化された。米国企業が民営化を請け負うと、水道料金が値上げされ、それを払えない貧困層の人々が次々と死亡する事態となった。これに対し、市民は激しく抵抗、ゼネストを起こして、ついに民営化契約を破棄させた。日本も水道民営化が狙われている。
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2018年暮れ、改正水道法が国会を通過した。水道民営化につながる法案だった。日本の水道民営化をめぐっては、フランスの多国籍企業ヴェオリア社が日本市場を狙っていると言われてきた。注目すべきは麻生財務大臣の娘婿がヴェオリア社の重役だということである。水道が利権の対象にされてはたまらない。
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原発を止める。これが世界の趨勢だ。3.11福島原発事故を経験した日本になぜそれができない。 twitter.com/ReutersJapan/s…
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ドイツのバイエル社がモンサント社を買収し、米国デュポンとダウ・ケミカル社が経営統合。また中国化工集団公司がスイスのシンジェンタ社を買収。このモンサント・バイエル、デュポン・ダウ、そして中国化工集団公司・シンジェンタ、この三大グループが今、世界の種と農薬のシェアを支配している。
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遺伝子組み換え作物に対する流れが変わりつつある。米国連邦裁判所はバイエルなどのジカンバ(除草剤)の農薬登録を無効とする判決を下した。今後はジカンバを遺伝子組み換え作物に散布することも、販売することも違法となった。バイエルの売上げ損失は2020年だけでも最大1億ドル(約105億円)になる。
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遺伝子組み換え企業が次々と訴訟を起こされ、賠償額が巨大になっている。バイエルは、米国における除草剤ラウンドアップをめぐる訴訟の和解で最大109億ドル(約1兆1000億円)を支払うと発表した。陪審員が企業の安全審査よりも、独立した科学者たちの安全審査を信頼するようになったことが背景にある。
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コロナの感染が広がるエクアドルで、伝統的なトゥルーケ(食料交換)が復活している。外出禁止で食料入手が難しくなった人々に全国農民運動が有機栽培の食料パッケージを届け始めた。運動の代表者は「これが私たちの食料主権。食料は商品ではなく、すべての人の手に入るべき人権である」と述べている。
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コロナの影響で、世界各地で食料に対する不安が広がっている。日本だけでなく、米国もヨーロッパも農業現場は外国人労働者によって支えられていた。人の移動制限でこうした労働者が農業に従事できなくなっているのだ。すでに、ロシアやベトナムでは食料の輸出制限を発動している。
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韓国では学校給食に有機栽培の食材を使用しているが、今度はベジタリアン(菜食主義者)の食事を提供するという。韓国メトロポリタン教育局は、公立学校の給食にベジタリアンの食事を提供する計画を発表した。環境に優しい食事を生徒に推奨するのが目的だという。2024年までに全ての学校で実行される。
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スワヒリ語には「持つ、所有する」という意味を表す言葉がない。「私は本を持っている」と日本人や欧米人が言うところを、スワヒリ語では「私は本と共にいる」「私と本とが共にいる」と言う。私たちが「所有」の観念で捉える関係を、スワヒリ語では「並存」の観念で表すのである。
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コロナの感染拡大で世界各地で食料が手に入らない人々が増えている。やむを得ず、都市住民が自分たちで野菜を作る動きが各地で広がっている。タイでは1200万世帯が「野菜を育てる運動」に取り組み始めた。パレスチナでは「100万本の野菜の苗を植えよう」キャンペーンが始まっている。
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韓国の小中学校の学校給食では、すべて有機農法の野菜が使われている。また韓国政府は、今年だけで8万人の妊婦さんに有機農業の食材を提供したという。有機農業は、今や世界の流れになりつつある。未来を担う子供たちに、安全な食べ物を食べさせるという考えを持たない日本だけが取り残されている。
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農民連食品分析センターが昨年行った調査では、学校給食のパンから発がん性のある除草剤グリホサートの成分が検出された。学校給食のパンには輸入小麦が使用されていた。ただ、埼玉県の学校給食のパンからはグリホサートが検出されなかった。埼玉県の学校給食のパンは国産小麦を使っていたのである。
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千葉県いすみ市は2017年、市内の全13の小中学校の給食で使用するご飯について、全量を有機無農薬米を使用することにした。2018年からは、学校給食に有機野菜を使用しはじめた。市は、最終的には学校給食の食材をすべてオーガニックにする方針だという。こうした動きが全国に広がればいい。
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韓国の学校給食は無料であるとともに、食材はすべて有機農産物だ。国が子供たちの健康を守るために全力で支援しているのである。韓国の有機農家たちは、「学校給食は一般の野菜よりも30%も高く買ってくれるのでありがたい」と言っている。韓国では、学校給食が有機農業を広める役割も果たしている。
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発がん性のある除草剤グリホサートが市販のパンに残留していることが、農民連食品分析センターの調査で分かった。残留していたのは15製品中13製品。原料は輸入小麦だった。国産小麦を使用した2製品からは検出されなかった。調査では、一般のパスタやシリアル、カップ麺からも検出された。
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農民連食品分析センターの検査では、全粒粉を使ったパンからより高いグリホサートが検出された。輸入小麦はプレハーベストにより、外皮にグリホサートが残留する。そのため外皮ごと粉状にした全粒粉は残留値が高いと推察された。全粒粉パンは「健康」を売りにしているのに、この結果は皮肉である。
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除草剤グリホサートは発がん性だけでなく、様々な健康影響が指摘されている。今年5月、千葉大学の橋本謙ニ教授らが行った実験では、妊婦マウスにグリホサートを投与すると、生まれてくる子マウスに自閉症の症状が起きた。海外の動物実験では、肝臓や腎臓などに悪影響を与えることも分かっている。
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ロシアは2017年から、全ての種子を国内自給することにした。2014年のクリミア危機以来、西側諸国から経済制裁されているロシアにとって、自家採種できない外国企業の種子を毎年買わなければならないのは、大きな負担だった。また、種子を外国に依存すれば食の安全保障を守れなくなると考えたのだ。
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ロシアは全ての種子を国内自給することに決めた。先の国会で先送りになった種苗法改正案を、日本政府は次の国会に再び上程しようとしている。種子を外国に依存することは、自国の「食の安全保障」が脅かされることだと、プーチン大統領は断言している。なぜいま種苗法を改正する必要があるのか。
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2017年、スイスは憲法を改正した。新しく書き加えられたのは「食の安全保障」だった。国民へ安定的食料供給を維持する、農地を保全し、地域の資源が最も生かされる形で食料を生産する、フードロスを減らし、国際貿易は農業を持続可能な形で維持するように行う、等が書き加えられた。日本も学びたい。
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2018年に廃止された種子法は、米、麦、大豆などの主要農作物について、国や都道府県の管理のもと、各地域にあった品種を開発したり、優良品種を指定したりする役割を果たしてきた。その結果、農家に優良で安価な種子が提供され続けてきたのである。そんな種子法をなぜ廃止したのだろう。不可解だ。
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種子法が廃止され、都道府県が種子生産や管理に関わらなくなれば、農家が購入する種子が高騰し、農家の経営が苦しくなると予想された。例えば、民間の三井化学の「みつひかり」は、種子の販売価格が20キロ8万円で、都道府県が開発した米の品種の約10倍の価格である。なぜ種子法を廃止したのか。
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種子法廃止は、日本農業に重大な影響を与えるだろう。実際、インドでは今世紀に入ってから公的種子事業の予算が削られ、種苗研究が民間に委ねられた結果、コットンの種が多国籍企業の遺伝子組み換え種へと統一された。そのため価格が上がり、多くの農民が生活苦から自殺を追い込まれたと言われる。