名門校に入学したのはいいけど数学が苦手で落ちこぼれた男子が、どうやら夜間警備の無愛想おじさんが数学得意らしいと知って弟子入りする映画を上映します。人生には解ではなく途中式が大事と教えてくれるこのおじさん、実は学問と自由を求めて北朝鮮から脱北してきた天才数学者。得意どころじゃない。
そしてこのおじさん、演じてるのは『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク。『シュリ』以来22年ぶりとなる北朝鮮の方言を使いこなして過去持つ男に説得力を持たせています。円周率から作られたπソングの精緻な美しさも印象に残る『不思議の国の数学者』5/26(金)から上映です。
少年たちの出自は様々。料理も様々。映画を観た後でどの国の料理を食べようか、どのレストランに立ち寄ろうか、どんな食材買って帰ろうか、楽しく悩みつつも移民問題に想いを馳せることになる『ウィ、シェフ!』5/5(金)から上映です。
理想を求めて「上」ばかり見ていた彼女と、強制送還されるかもしれず「下」だけ見ていた少年たち。双方の人生のこれまでとこれからが厨房で結びついて、真っ白な皿の上に鮮やかに広がっていくわけですが、言うまでもなく危険なほどに食欲を刺激する映画です。鑑賞中にお腹が鳴らないように気をつけて。
一流レストランをクビになってようやく見つけた次の職場は移民少年たちの支援施設で、そこで設備の不足よりも食材の質よりもめげちゃうのが「食」に対する(量があれば質は別に…)なマインドだったので、逆に少年たちを調理アシスタントにすることで料理にとことん夢中にさせちゃう映画を上映します。
映画スター"大将"ヴィジャイの推し活以外特にやりたい事のない青年がある日伝統楽器ムリダンガムの巨匠が叩き出す超絶技巧複雑リズムを目の前で食らってそのまま押しかけ弟子になる激熱インド映画、が好きすぎる都電荒川線沿いの南インド料理店が、好きすぎてその映画の日本配給を始めたので上映します
で、ニコラス・ケイジがピンチになります。密かに接触してきたCIAからこれを機に組織を探れと言われてるのにニコラス・ケイジが好きすぎるペドロ・パスカルがぐいぐい来るので。あと、映画のニコラス・ケイジと違って現実のニコラス・ケイジは捜査スキルをまるで持ち合わせていないので。それはそう。
ニコラス・ケイジのことが好きすぎるペドロ・パスカル(大富豪で犯罪組織のボス)が誕生パーティーのゲストに超高額ギャラでニコラス・ケイジ(金欠)を招いて強引に仲良くなろうとする映画を上映します。それにしてもこのニコラス・ケイジ役の俳優さん、とても上手く特徴を掴んでますね。あ、本人ですね。
友達からバイトの代理頼まれて「いいよ~」って行ったらアダルトグッズ店で、実戦経験ゼロで店に立つことになる映画を上映します。モンゴル映画だけど草原、出てきません。でも大丈夫。レイティングは全年齢鑑賞可だし、シータに世間を教えるラピュタの海賊ドーラみたいにカッコいいおばさん、出ます。
いくつもの丘の連なりを眼下に眺めわたす"イタリアで最も美しい村"で小さな本屋を営んでいるおじいさんが、店外から興味深そうに"本"を見つめていた移民の子にコミックを貸し与えたのをきっかけに次は星の王子さま、次はアンクル・トム、白鯨…と徐々にディープな読書沼に引きずり込む映画を上映します
サールナートゥホール(ver.2)
今泉力哉監督の最新作『ちひろさん』は4/14(fri)から上映します。それからですね、この映画のロケ地は静岡と焼津です。地元民は布教をお願いします。静岡の駒形通りとか焼津の港を知っている人は(ここに有村架純さんが…)となりますよ(なった)。
サールナートゥホール
浮浪者をモデルに、娼婦をモデルに、彼が描いたのは"聖人"。異端画家カラヴァッジオの生涯を大胆な解釈で再構築した1986年の映画を上映します。次々登場する名画(実物)も、オスカー受賞常連サンディ・パウエルが担当した衣裳も、これがデビュー作のティルダ・スウィントンも、一見の価値ありの美しさ。
ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスとオスカル・マルティネスが三者三様それぞれ違うタイプの一緒に仕事したくない天才を演じた『コンペティション』は4月頃に上映します。ちなみに出資者の富豪とも仕事したくないです。
傑作映画の出資者になって名を残したい富豪が、才能はあるけど癖がすごい監督と才能はあるけど癖がすごいスター俳優と才能はあるけど癖がすごい舞台俳優を集めたら、リハーサル段階で癖と癖と癖が多重事故を起こして映画賞どころか撮影にも辿り着けそうにない映画を上映します。画像4枚の癖がすごい。
"特別"になりたい彼と"普通"になりたかった彼女の物語。黒羽麻璃央と穂志もえか共演の『生きててごめんなさい』3/3(fri)から上映です。
出版社勤務の激務で小説家になる夢を諦めかけている彼と、バイトも続かず家で独りでいることが多い彼女との同棲カップルが、彼女が彼と同じ出版社で働き始めることになって、そうしたら彼女が、ダメな子だった彼女が、作家や同僚にどんどん認められていって、彼の心が軋んだ音を立てる映画を上映します
新聞にぽつんと3行「茶飲友達、募集」の文字は高齢者専門売春クラブの広告で、運営の若者たち、在籍する老婦人たち、広告を見た人たちが、寂しさを埋め合うように、空白を持ち寄るように、今日もどこかで生きている映画を上映します。実際の事件が着想源、非常に幅広い世代でヒット中の特別な作品です
この予告だけでもう面白そうですよね。だけどマダムが、ドライバーが、そしてあなたが、この小さな旅、この小さな映画の結末でどんな感情に辿り着くのか、まだまだ想像つかないと思います。『戦場のアリア』の監督が贈る最新作『パリタクシー』は5月頃に上映予定です。
エッフェル塔や凱旋門を横目に、観光客向けではない何てことないパリの街路のあそこに、ここに、マダムの喜びと哀しみと大きな秘密に彩られた過去が二重映しに浮かび上がってきて、無愛想ドライバーと一緒になって想い出話に夢中で聞き入ることに。やがてドライバーもポツポツと自分を語りはじめ…
パリ暮らしの92歳マダムがとうとう街の反対にあるケアハウスに移ることになってタクシーに乗り込んだら、無愛想ドライバーとの道すがらあの時この時の想い出が次々よみがえってきて、大通りから小路へ裏道へ、ただの"移動"が記憶とパリをめぐる寄り道だらけの最後の"旅"になってゆく映画を上映します。
落ちぶれちゃった父と一緒に貧乏暮らしなんだけど武家の生まれのおきくさんが、長屋の共同厠から肥やしを買い取ってく下肥買いさんにちょいとホの字になっちゃう映画を上映します。世の中のいちばん下(シモ)から庶民の暮らしと想いの豊かさ厳しさ哀しさ滑稽さを描き出す、観たことないタイプの時代劇。
男が一人車を駆ってデンバーからサンフランシスコまで1200マイルを不眠不休の15時間で走り切る、それだけに過ぎない40年も前の映画を上映します。つまりこれは、それだけに過ぎないのに40年古びなかった映画。疾走するスピードの中に意味と理屈が流れ消え、私たちは今もこの映画に追いつけていない。
だって百万語を費やしても伝わらないことが、このわずか1分の予告編、その冒頭数秒のブレンダン・フレイザーのまなざしだけであまりにも完璧に理解できてしまいます。彼が今の自分、今までの自分をどう感じているのか。A24最新作『ザ・ホーエル』当館では5月頃上映予定です。