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私は娘に関わっていた医療者の多さに驚愕しつつ深々と頭を下げてその場を辞した。すごい人数の笑顔だった、歩いて退院する患者を見ることは稀だと、嬉しいと言ってくれた。会いたいけどもう来るなとも言ってくれた。毎日報道される「本日の重症者」の数字を見る時、私はいつもあのICUの人々を想う。
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「何?クミン?」
「絶対ちゃう、おまえメモどこにやってんや」
「どっか行った」
「アホ!」
スパイス棚の前で喧嘩するおつかいの兄弟が買い物かごに入れた合いびき肉と玉ねぎからハンバーグを推察した私含む3人のおばちゃんが
(ナツメグ!)
口パクで伝えようとする夕方のスーパーで。
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マスクをしているためにほぼ念力の(ナツメグ!)は空を泳ぐばかりで伝わらず、ひとりのおばちゃんが「お母さんは何作るて言うてたん?」と聞いてナツメグが判明し2人は
「おばちゃんありがとう」
ぺこんと頭を下げてレジに駆けて行きました。私の暮すのは大阪と言って、いっちょかみの多い町です。
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よしながふみ先生の『大奥』のドラマ化は、幕末の家茂と和宮の姿を緻密に精巧に描く脚本であってほしい。母親に顧みられなかったひとりと、愛されてのびやかに育ち、しかし時代の変遷の中に国を背負う運命となったひとりの、家族の愛のような、シスターフッドのような、そんな2人の姿をお願いします。
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うちの4歳の好きなもの?ひと?の話。
ところで小児科に限らずお医者様というのは中年以降、体を壊す方がいるもので患者サイドは心配で、子の入院の時外来の時つい「先生大丈夫ですか?元気?」と聞いてしまうのが最近の癖です。
大好きは元気ですか|きなこ @3h4m1 #note note.com/6016/n/nfe15e2…
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人は途方もない苦境にあるとか、底なしの孤独にある時に、それが一体何なのか正体を知れなくとも原因がわからなくとも状況だけでも言葉でつかまえることが出来るとひどく安心するものなので、方法は短歌を詠むでも小説を書くでも良いのですけれど、この140文字のテキストって多分、丁度いいんです。
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いつもなら野球部の巨大なスポーツバッグにジャージ姿で駅への道を全速力で
「やべー」
など言いながら駆けぬけてゆく近所の高校生が今日はぱりっとした白い制服にTHE NORTH FACEのリュックだけを背負って静かに歩く坂道には、夏の終わりがたくさんたくさん落ちていました。
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ご近所の、この夏生まれた赤ちゃんがママの抱っこ紐でお散歩に出ているのを見ていたら、その子が雨上がりの空がやけに澄んで高いのだとか、お顔のすぐ横をスイと横切ってゆくシオカラトンボの姿にぽかんと驚いていて、それで私も気がついたのですけれど、あの子は生まれて初めての秋なんですね。
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私がやたらと小さい人たちに過敏に反応するのは、うちの4歳が赤ちゃんという人々が好きすぎていつも見に行ってしまうからで、彼女ときたら9月の入院も
「赤ちゃんと一緒のお部屋がいい!」
と言うので出来たら赤ちゃんがいてくれると私も助かります...(いないとむくれる
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秋の涼風の吹くずっと前からくいしんぼの娘(11歳)はとても楽しみにしてたんですよ、あかねさす月見バーガーを。それで今日土曜の昼に私と2人して張り切って出かけたマクドナルドで「月見バーガーふたつください!」って言ったら
「まだです…」
水曜日からだったこの秋、さいしょのかなしみ。
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「あかねさす」月見バーガーって何よという話ですけれど
『永遠の迷子でいたいあかねさす月見バーガー二つください』
という短歌があるのです、詠み人は確か歌人の東直子さん。あかねさすのは紫野でもなく、日でも日暮れでもなく月見バーガーなんだねえという自由さよ、私の好きな秋の歌。
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間近に迫った子の付き添い入院生活の助っ人として大好きなおばあちゃん(弊母)が北陸から厳重警戒の中にやって来て嬉しくて張り切る4歳が
「ばぁばがいる間あたしがたくさんお手伝いしてあげる」
ずうっとついて回る君こそが今週、予定の処置入院なのだよって説明は5回くらいしたのだけど。
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自宅に酸素の機械を設置して酸素を吸入しながら生きている人は酸素が支燃性物質なので火気厳禁であるのですが、うちの酸素ユーザーである4歳の人は「ちょっとお台所を手伝いたい気分やわ」なんて時に
「あ、酸素とめてくるわ」
と言って機械を勝手にオフしてしまうのですわ。かしこ…やめなさい。
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13歳がお友達とお祭りに行くのやと言うのを、晩夏の日暮れ、星の見える頃まで中学生が遊ぶのは大丈夫かしらんと、何せこちらは心配性なもので散々注意しながら門限つきで送り出したら帰宅したヤツの手には型抜きの景品のクワガタ消しゴムとラムネ、頭には汗対策の白タオル、昭和に行ってきたんか君は。
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コロナの時代がやって来て、それで「第7波」だなんてまるでエヴァンゲリオンみたいな時代が過ぎ去ろうとしているのか未だとどまっているのか。この7度目の終末の予感のこのときに最も受難の世界にあったのは私の知る限りでは町の、そして大学病院の、とにかく小児科の先生方であったことでした。
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台風の起き土産みたいな夕方の土砂降りの中を家から病院に戻っている途中の道に反対側から白いシャツシャツジャージの高校生が
やべえやべえつめてえやべえ
って言いながら傘もささずに駆けてきて私が知らないだけで青春という国には雨宿りが罪とかそういう決まりがあるのでしょうね(風邪ひくなよ
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かの2歳君の事故は私の実家が富山であるので、あの川あの海とそれが分かって一層哀しく、幼子の魂が安らかにあるよう祈っていますが、2歳とは病気で色々の発達が遅れている子さえ制御不能なもので、ウチの4歳が2歳の時は入院中点滴ルートを己が手で引き抜き輸液ポンプの停止ボタンを連打してました
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この度、紙の本を上梓させて頂きます
『まいにちが嵐のような、でも、どうにかなる日々。』
noteの記事と書き下ろし原稿を選んでまとめて夏中かけてこつこつ執拗に書き直しました。発売は9月28日、Amazonのカートは既に開いています。素敵な表紙だけでも見てってください。
amazon.co.jp/dp/4046058633
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入院中、病棟の廊下を駆け出そうとする娘にはいつも「チアノーゼになるから走らない!」と不穏なことを言うのですけれど、お隣の子のママの「そんなに笑うと髄液がでてきちゃうよッ!」という文言は更にパンチの効いた新鮮さで、初秋の空かと思しき程にママとその子が透明に爽やかなのもなんだか良い。
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さっきNICUからまるで南海の真珠粒のように可愛い赤ちゃんを抱いて退院されたお母さん、同じエレベーターに乗りあわせた人々が口々に
「おめでとうございます」
を告げて降りていったのに驚いたことでしょう。私達は小児病棟に入院中の子の親で、あなたと同じNICUの卒業生の親です。
退院おめでとう
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「小児病棟のいったいどこから中秋の名月っていうのは見えるのやろか」
あっちか、いや建物が邪魔して見えやんてって、点滴台をがらごろさせながら皆んなで探してやっと向こうの窓、ブラインドの隙間に見つけた白く光る月のことを、4歳もお友達もずっと覚えていられるといいね。
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今朝、4歳は予定の処置のような軽い手術のようなことの為に階下の血管造影室に歩いて行きました。途中までは私と手を繋いで、保護者入室不可の場所からは看護師さんと一緒にしかし手は繋がずにひとりですたこら歩いて行ってしまって、それが良いのか悪いのか、なんだか芯の強い娘に育ってしまって。
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4歳の予定されていた色々の処置、これがまた何もできずに終わりまして、次にまたリトライするという結果になりました。赤ちゃんの頃から4歳を知る看護師さんは心配して昨晩病室に来てくれまして、本人はぴちぴちに元気で退院します。
Queen Angio 3|きなこ @3h4m1 #note note.com/6016/n/ndf0512…
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妹の入院中、十六夜の晩に互いを想い合う宮沢賢治の童話のように優しくうつくしい姉妹だったはずがいざ退院して帰宅するとどうでもいい100均の玩具を取り合って死闘を繰り広げる姿は最早風流ですらあるし元気は結構ですけど蹴りはやめなさい蹴りは。