1001
息子に教科書を見せてもらうと掲載されていたのは
列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし
シャボンまみれの猫が逃げだす午下がり永遠なんてどこにも無いさ
でした。上が寺山修司、下が穂村弘。
1002
1003
暑さに弱い4歳と昼の日差しを避けてやっと今くらいの時間、夕方の外気と共に金色の夕暮れを踏んで散歩してると昔
「いつ夏が始まっていつ終わったかわからんような生活はもう嫌や」
と言って誰が聞いても「へぇ」と驚くようなええとこのお勤めを辞めて突然鰻屋さんになった先輩を思い出すんですよ。
1004
アリゾナだってこう暑くないだろうと思いながら信号待ちをしていた今日の昼1時、青になるのと同時に期末考査明けらしい高校生の男の子達が横断歩道を駆けて行くそれが全員制服のシャツのボタンが全開の上、片手にファンタの500ml缶を持っていて、空は抜けるように青いしなんだかすごく夏だった。
1005
昔々、まだ私の子どもたちが影も形もなかった学生のころ、深夜のロイヤルホストに自転車でよく行ったけど、そこの暇そうなウェイトレスもチョコレートパフェを食べる男の子も外がとっぷり真っ暗で宇宙のさい果てみたいに見える京都の町もひとつも歯が立たないドイツ語も全部まとめて結構好きだったな。
1006
スーパーの『ねがいごとを書こう』と短冊の置いてある笹飾りのコーナーに
「おひめさまになりたい」
「おばあちゃんが元気になりますように」
「せいかへいわ」
いくつもの幼い文字のささやかに壮大な願いごとの中にひときわ大きな文字で3枚
「タイガース日本一」
があった、君ら友達やな。
1007
私「質のよい子ども」というすごい日本語を聞いてファッ?となった疾患児の親ですけれど、それをネタに書いたショートショートと雑文です。ところで「びっくりするほどユートピア」って除霊の言葉なんですか、今知りました。
7月の世界、反転せよ。|きなこ @3h4m1 #note note.com/6016/n/nfa793a…
1008
大人になった今も「東の空が遠くひかり朝のくるとき」とかいう文章を作る際「太陽は天才バカボンの主題歌の反対に昇って沈む」と思い返すのですけどこの程10歳の娘も太陽の昇沈を「何の歌か知らないけど『西から昇ったお日様が東に沈む』の反対で覚えた」と言い出してあなたの赤塚不二夫はどこから。
1009
『サラダ記念日』の日だそうです
短歌って世界すべてが31文字に圧縮されているものでそれの解凍が私には酷く難しいのですけど俵さんは私の最初の現代歌人。そしてこれは「サラダ記念日」の収録歌ではないけど娘のNICU時代幾度も唱えた
『生きるとは手をのばすこと幼子の指がプーさんの鼻をつかめり』
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散々日焼け止めを塗っているのにじわりじわりと日焼けしている4歳が帰り道、まだ入院中のお友達のいる大学病院を見上げて
「みんなは?びょういん?」
退院してわたしだけ病院の外なのは悪いなあとか4歳児は思うのか、あの子もあの子もあの子もみんな、来年は夏のひかりの中を走れ。
1011
2日お休みして幼稚園に行ったらその間もの凄い勢いでマリア像の前の花壇の向日葵が咲いていて幼稚園中に蝉の抜け殻が集まっていたんですよね、それでビニール袋いっぱいの抜け殻を見せてくれた子にすごい数だねーって言ったら
「夏やからさ」
夏やからね。
1012
正義って何のことよとミートローフを食べながら13歳の子が私に聞くもので、それは暴力の対極にあるもののことやと思うと答えながらよそった飯が妙に山盛りになっていて、今日みたいな日はしっかりご飯を食べなさい、そして一体何が正義であるのか考えられる大人になりなさい。
1013
昔々幼稚園に通ってた頃のお兄ちゃんのプールバッグの中からセミの抜け殻が沢山出て来ておかあさん超びっくりしたことがあったんやでと話をしながら平日のいろいろを片付けていたら、その妹4歳のプールバッグから砕けたセミの抜け殻がざらざらできてきてなにこれどういうことそういう遺伝?
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母の姉で私の伯母である人が退院したらしい
でもそれは快癒による退院ではなく「最期は自宅で」という意味の帰宅で、1歳違いで生まれて結婚した後も近所に暮してきた優しい姉がいなくなるのだと、うちの娘が死にかけていた時さえ「しっかり」と私を叱咤してくれた気丈な母が電話口で泣くもので私は。
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昔々『花とゆめ』の読者だった方にとって「ぼくの地球を守って」はどんな作品なのか、私も同時期に連載していた「動物のお医者さん」と一緒によく覚えていて、聖人とか天才とか障害についてコラムと短い小説を書きました。
聖人も天才も普通に困る|きなこ @3h4m1 #note note.com/6016/n/na54a01…
1016
今日久しぶりに小児外来で会った主治医(その②)が、4歳の日焼けした手を足を顔を見て
「うわ、日焼けしてんなぁー」
と言ってマスクの下が丸わかりに笑顔だった。去年の春一時は死を覚悟した程の容態だった子が「せんせい!」と笑いながらみずいろのワンピースで廊下を駆けてきたもので。
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「今日雨やからプールなんかないって」と思っていた上の子の体育の授業はまさかの水泳でプールの中に温かな雨の落ちる中、25mのレーンの中を若い魚みたいにざぶざぶ泳いだクラスの全員は「雨やで?」とゲラゲラ笑い大変にやばい授業であったと聞いていやべつにお母さん羨ましくはないねんけどな。
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今年は再びの入院の年らしくて、4歳は夏の終わりにまた入院の予定ですが、特殊な治療環境を必要としますよという子どもは、いつも同じ環境で医療が受けられるわけではないんですよねえという最近の日記のようなもの。
ほんとは自分でなんとかしたい|きなこ @3h4m1 #note note.com/6016/n/n373dba…
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清水玲子『月の子』白泉社
佐々木倫子『動物のお医者さん』白泉社
山岸涼子『日出処の天子』白泉社
大島弓子『ロストハウス』白泉社
吉野朔美『いたいけな瞳』集英社
白泉社摂取量の多い娘はこじらせているの何かを。あの頃の花とゆめは凄かったし『ぶ~け』は復刊して
#わたしを作った少女マンガ5冊
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2階が吹き抜けになっているスーパーの反対側からにこにこと手を振るおじいさんがいて、4歳がそれに気づいて手を振って、よく見るとおじいさんは4歳と同じ酸素ボンベを携えていたのできっとあっちの星から「仲間ですよ」と交信しているのだって、そういうことだった。元気ですか、元気ですよ。
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実家の姉と電話中、自分も電話をしたい人間4歳と姉に構ってほしい実家の黒柴13歳が
「かわってってばッ!」
「バフッ!(要求のある時の小声)」
そういって煩いもので4歳と13歳(犬)の耳元にスマホをあてたら犬はニンゲンの姪の声に嬉しそうに尻尾をふっていたとか。こんにちは犬、こんにちは人間
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4歳、9月にまた入院があるのですけど最近とてもお気に入りの絵本の新作が9月に出る事を知り「じゃあカテからちゃんとかえってくるね」と自分は血管造影室では死ねない(死にません)なんてことを申しまして、いくつであっても推しへの愛は生への燃料であるなと思うのです。
prtimes.jp/main/html/rd/p…
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『故郷の町か村か島のどこかで一等美しい夕焼けを見ることのできる場所を知っていている人はその人生にどんなことがあっても全て乗り越えて生きられる』
というのは私が今作った勝手な話ですが、明確な原風景のようなものを持っている人はきっと強いし4歳のそれは入院中病院から見た夕焼けだそう。
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今の感染の波を越えたら娘ふたりにクリオネ柄のワンピースを着せて京都水族館に行こうと計画中「俺、家でゆっくりしとく」と言う中学生の息子は想定内だったけれど、たわむれに言ってみたんですよ
「オオサンショウウオのでかいぬいぐるみ買ってあげるから行こうよ」
「えっ、行く」
行くんだ。