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5月が相当きつくて狂うほど『シン・ゴジラ』を見続けていたんですよね。あの大義も正義も利権も真実も清濁すべてを攪拌して「誰かの生命を守る」ことだけを目的に淡々と任務を遂行する人々を見ていると死ぬ気も失せるというか庵野秀明氏にこんなに励まされる日がくるとは思わなかったですよ私は。
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娘らの髪が随分伸びて出かけた美容室の待合の赤いソファで中学生くらいの女の子がかばんから取り出したのが新潮文庫の『銀河鉄道の夜』、同じタイミングで私がトートバッグから出したのが角川文庫の『銀河鉄道の夜』
お互いに「あっ」って微笑んで、私が13歳だったらお友達になれたかもね。
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「外出にはマスク」が定着してもう3年目の今、雨の降り始めた今日の昼に娘が
「あめのかおりなんかしないよ」
と言いだして少し困った。雨にも香りがあるよ、遠くに雨が降り始めた時に風にのって来る6月のにおいが。
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子どもの入院前は毎回必ずPCR検査を受けるのですけれど、いちいち厭世的なもので検査用の長い綿棒を鼻の奥に突っ込まれて
「ハイ、このまま10秒待っててくださいねー」
と言われている間に大地震が起きて綿棒が鼻腔に挿入されたまま圧死して発見されたら嫌だなとか相当どうでもいい想像をする。
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ついこの前、4歳を幼稚園に送ろうと思った朝の駐輪場で迷子のコクワガタを拾ってそのままレッスンバッグにブローチみたいにくっつけて幼稚園に連れて行ったのですよね。そうしたら人生史上最高にちいさい人類にモテまして、真夏の使者、森の王、クワガタすげえなと思ったことでした。
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あたしが72歳まで健康に生きているのに4歳の孫娘が入院ばかりしているのがせつないという私の母は、この一番末の孫である4歳が成人する卒寿まで生きることにしたのだそうで、この人は孫が増えるたびに予定の寿命がどんどん延びる。
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ふらっと高速に乗って思いつきで立ち寄ったSAで大して美味しくない醤油ラーメンとやや割高のソフトクリームを食べてから特に必要ないキーホルダーを眺めたりするって、そういう退屈な旅行がしたい、よくある地方都市の一望できる小さな展望台で双眼鏡を覗きたい、1回100円のやつ。
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『シン・ゴジラ』の後半46:24、ゴジラにより都内が壊滅的被害を受けた後、災害対策本部予備施設事務室での矢口副長官の訓示の際、高橋一生の瞳に薄い涙の表面張力があってただそれだけで『あ、この人も大切な誰かを失ったひとりだ』と分かった瞬間、高橋一生って恐ろしい役者だなと思ったのですよね。
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私の凄く好きな看護師さんの話、当然仮名だしややいろいろの人の複合体というのかままフィクションと思って読んでくれさい。
仕事はできるけれど本当は相当優秀だけどなぜか損するタイプの人。私のとても好きな彼女。
とにかく私はあの子が好きなので|きなこ @3h4m1 #note note.com/6016/n/n4af050…
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娘の2度目の手術前、術前最後の心エコーをするために出向いた診察室で主治医、執刀医、担当医数人にあと研修医たくさん、とにかくみっちり医者の詰め込まれた空間に私ひとりが市井の主婦で
「お客様の中に専業主婦はいませんかって言われたら私ひとりか」
と思った事があって、疲れてたんやな私。
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うちの4歳もシモの話と言葉を大変に好む時期にはいりまして毎朝登園中に出会うオリーブグリーンのミニクーパーにもジャックラッセルテリアにも白いマリア像にすら向日葵のような笑顔で
「おはよう!うんこ!」
幸福そうにそう言うもので、なんだか日常の煩雑な色々がどうでもよくなってくるの。
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10歳が明日学校で『環境問題』について発表するのだけれどスライドがまだできていないのと言うもので、じゃあママが何か手伝ってあげようかと言いかけた私に
「Googleスライドでつくるねやけどね」
頬杖ついてそう言ってきて、その時の私の頭にあったものはオーバヘッドプロジェクタ、OHPでした。
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駅前、大学生っぽい女の子が「今更見た目が好みじゃないし別れたいって何なん、やばない」という話をしながらあと2人、計3人がこの雨の中チョコモナカジャンボをばりぼり食べていて、雨の雫かなという程度にその子が頬がほんの少し濡れていて、そいつは増水している淀川に流そうぜと思った次第です。
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院内ただひとりの小児心臓外科医が退職しそして誰もいなくなって治療環境が大きく変わり秋に決まった入院も前途多難というか、面倒なことが多くて私は辛い。それと小児外来で先生のいた6番目の診察室をじっと見つめて「Kセンセイはどこに行ったの?」と聞く4歳児。K先生はきっとどこかで元気だよ。
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「ママのすきなものってなに?」と聞かれたもので好きなものを並べてみると
春雷、彗星、満月、冥王星、プラネタリウム、プラタナス、観覧車、天井桟敷、夏の夕立、冬の初霜、秋の夕闇、春の曇天、4歳のあの子の癖毛、10歳の貴方の小指の形、13歳の君の肩甲骨。
それから不細工な猫と黒い犬。
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2学期、4歳は幼稚園に週5で登園するという体力不足の心疾患児にはかなりの荒業を貫いて昼間は私が家に1人でいるものでクロネコさんと佐川さんから
「あの…いつもいてた女の子、どうしてます?」
というお問い合わせが相次いでいますが親の手に負えないくらい元気です。
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昨日の話ですけれど44歳になっちゃったんですよ44歳だなんて当たり前だけど初めてなりました。四捨五入したら40歳の最後の年、30歳年下の息子と精神性が変わらない気がするし、しかし掌のカサカサする44歳。宝石も香水も今特にいらない44歳は正岡豊の歌集とニカラグアの珈琲豆と靴下を買いました。
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4歳と、同じ手術を受けた子にあいに行く。
きょう初めて会った4歳の手を取って階段を駆け上がって飛び跳ねてここから遠い海のさらに向こうにだって翔けて行ってしまいそう。長い手術を越えてきたのだよねえ、さみしいICUの中たった1人で頑張ったのだよねえ、うちの子だけじゃ、ないのだよねえ。
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人には決して破ってはいけないこの世の則というものがあって、それはあなたの愛する誰かを裏切ること、無辜の子どもの心身を傷付けること、誠実に汗して働く人々を貪ること。
そして雪見だいふくのふたつのうちひとつを相手の許可なく食べることです。
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4歳児によると幼稚園という世界線ではいま男女共に
『ピカピカどろだんごをつくるのが一番上手な子が一番かっこよくて人気者』
ということらしい。いいなあ、お母さんもちょっとだけそっちに行きたい。
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毎日大体同じ時間に毎日大体同じ道を必ず同じ娘と酸素ボンベを自転車にのせて通園していると、ちょっとした顔なじみができるもので、同じ時間に信号待ちをしているヘルプマークの女の子とその子のお母さんかな、その2人が今日は話しかけてくれた。
「あついね、なんさい」
「あついね、よんさい」
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息子が私の本棚を見て
「穂村弘って知ってるわ俺、寺山修司も、この人ら何?友達?」
など言うのでその2人どこで知ったんと聞いたらそれは国語の教科書で、ふうん令和4年の中2の教科書は「抒情の算術家」と「ニューウェーブ短歌の旗手」ふたりを並べて教えてくれるんや、やるなあ義務教育。