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リボン結びになっていた甘い日々/広瀬ちえみ
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この夏も一度しかなく空き瓶は発見次第まっすぐ立てる/虫武一俊
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こんな日が来て花束を抱いている/久保田紺
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とけていくアイスを舌でなぞるとき時間は夏をゆっくりうごく/岡野大嗣
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とけかけのバニラアイスと思ったら夢中でへばってる犬だった/岡野大嗣
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手をつなぐきみを迷子にするために/山内令南
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一本の花火持たされ生かされる/松田俊彦
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両耳がさらわれそうで立ち上がる/樋口由紀子
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瓶ラムネ割って密かに手に入れた夏のすべてをつかさどる玉/岡野大嗣
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お互いの満月そっと泡立たす/畑美樹
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われはわれを通して見える世界しか知らずヒマワリ夏の大きさ/中畑智江
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強く手を握れば握るだけふたり残せるもののない愛の日々/山田航
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扇風機の風いちまいを掛けて寝る流れ星あきらめた夜明けに/鈴木加成太
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夏休みお昼ごはんに次々と姿を変えて迫り来る麺/竹林ミ來
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夜の虹 行方知れずの友がいる/むさし
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きみとただ花火したくてよく冷えた水道水を飲みながらした/岡野大嗣
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終わったらバケツの中に差しこんで花火の息の根を聞くのです/ながや宏高
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かなしいとことばにすればひかりが来るあなたに教えられた通りに/吉野裕之
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こんなに強くきつく抱いてもあなたから青い光が漏れてやまない/目黒哲朗
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明け方に製氷皿をねじったら古びた夜のひび割れる音/岡野大嗣
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見てごらんあんなに遠くの信号が今青だからもう間に合わないよ/戸田響子
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あるんだよどこかに夏のあいだだけ青の時間が長い信号/やじこ
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ほんとうの恋をしたから夏蒲団陽に当てるだけの日常でいい/田中雅子
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散髪の帰りの道で会う風が風のなかではいちばん好きだ/岡野大嗣
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わたしには世界を包むひと言が見つからないが「怖い」と言へり/目黒哲朗