701
まばゆくて目を閉じたりもしたけれどしあわせになる覚悟はできた/尼崎武
702
運転手さんの鼻歌がとぎれないようにねむったふりをつづける/加賀田優子
703
縦書きの国に生まれて雨降りは物語だと存じています/飯田和馬
704
ここにいていいここにいていいここにいていいと僕は僕の声で僕のために僕に/服部恵典
705
単純でいて単純でいてそばにいて単純でいてそばにいて/嵯峨直樹
706
ボーダーを着てボーダーの服買いに行くのはながいきのおまじない/橋爪志保
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袖口を嗅ぐだけでねむたくなれる部屋着で過ごすうつくしい日々/岡野大嗣
708
ペンギンがペンギン以外のことをせずただひたすらにペンギンでいる/木曜何某
709
とらんぽりんがむかついている夜でした。かわるがわるに跳ねるペンギン/しんくわ
710
とらんぽりん ぽりんとこおりをかむように月からふってくるのだこどくは/蒼井杏
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「冷やし読書はじめました」という図書館の看板 夏のはじまり/柳本々々
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行き止まるたびになにかが咲いていてだんだん楽しくなるいきどまり/虫武一俊
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うずまきに引きずり込まれてゆくような眠り方を目指しています/ふらみらり
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真夜中へまつすぐ垂れてゆく水を手にすべらせて眠りに就きぬ/飯田彩乃
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みんな世界にゆるされてゐる 信号が点滅したらもうそれつきり/濱松哲朗
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えっ、七時なのにこんなに明るいの? うん、と七時が答えれば夏/岡野大嗣
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ありえないくらい眩しく笑うから好きのかわりに夏だと言った/岡本真帆
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紫陽花に囲まれながら僕たちは給食を待つくらいしか取柄がない/しんくわ
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あの羽は飾りなんだよ重力は天使に関与できないからね/木下龍也
720
2、3回飛んだらなんか飽きたので もう要りません背中の翼/ひつじのあゆみ
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古本を開いたすみに”大丈夫” 大丈夫だったひとがいたこと/大嶋航
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吹きこんでくる雨 あなたは悪くないって何回でも言われたい/佐伯紺
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もう元に戻らないこと受け入れてふやけた本のページをめくる/ながや宏高
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思い知れ、お前は一人、一人なのだ、一人だ、一人、しかいないのだ/牛隆佑
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出力を弱から強へあげてゆき、扇風機乗りが離陸する夏/那須ジョン