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もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい/岡野大嗣
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しなければならない事が多い日をフトンをかぶったままぶっちぎれ/瀧音幸司
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放たれたまま永遠に飛び続けてる弾丸のように眠たい/やじこ
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いい雨だ今日はパジャマのままでいる/竹井紫乙
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白鳥をたった一人で干している/榊陽子
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大切なことがなんだかわかんない 二十四色入り信号機/田村穂隆
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しあわせをはさむ がらすのぴんせっと/高田寄生木
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片思いみたいな色で咲いているシロツメクサを胸に飾ろう/山上秋恵
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にゃにゃあにゃあにゃあにゃあにゃにゃあ【訳:君は私をそっと抱き上げるべき】/柳本々々
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猫を追い帰れなくなり電話する。電話がぬるく、やわらかく。嗟(にゃあ)。/御前田あなた
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海底に沈んだ都市のように聞く あなたと暮らしていた人のこと/沼尻つた子
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すこしだけ泣きたいときに夕焼けが真っ赤だったらすごく助かる/奈良絵里子
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恋人がすごくはためく服を着て海へ 海へと向かう 電車で/吉田恭大
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あのパレードの紙吹雪だってもとはぜんぶラブレターだよ、降る片想い/石井僚一
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雨がやむのを待っていたはずなのが帰りたくなかっただけだった/岡野大嗣
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手をつなぎたかっただけでこんなにも遠い海には来たくなかった/加賀田優子
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しあわせは欠片となって降ってきて白詰草となり配られる/松尾唯花
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ポケットの硬貨2枚をネクターに変えて五月の風のなか飲む/岡野大嗣
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えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい/笹井宏之
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天国へいいえ二階へ行くのです/飯田良祐
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目覚めたら背中に羽根が生えていてとりあえず着る洋服が無い/山本左足
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眠ることを怠けられないんだろうかこんなに律儀におふとんに入り/柳本々々
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きっかけになったけんかはわからない仲直りから始まった夢/岡野大嗣
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寂しさを分け合うためにドーナツはきちんと二等分しなくては/山上秋恵
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ベランダに初夏を一匹飼っています ひかりのリードにひかりの小屋で/工藤玲音