351
4/10 あなたから香る桜をいつまでも忘れずに済む脳を下さい(千種創一)
352
4/12 何度でもわたし目覚めるだいじょうぶいつも目覚めるかならず目覚める(柳谷あゆみ)
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4/14 カフェインの摂取によって冴え渡る頭脳で何もすることがない(宇野なずき)
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4/15 たてがみも牙も持たない人間がどうして逃げちゃだめなんだろう(古田海優)
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4/16 勇敢であったことなんて一度もない卵をときながら春の朝に(フラワーしげる)
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4/17 単純でいて単純でいてそばにいて単純でいてそばにいて(嵯峨直樹)
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4/18 音もなく近づいてきた憂鬱が僕の手首をそつと掴みぬ(門脇篤史)
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4/20 いつまでも逃げていたってしようがない世界の果てはここなんだから(吉田純)
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4/21 少しだけ雨戸を開けるいま君を濡らしてる雨の音を知りたい(木曜何某)
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4/22 ここじゃない何処かへ行けばここじゃない何処かがここになるだけだろう(岡野大嗣)
361
4/23 よくみれば体育座りは複雑に折り畳まれたこころのようだ(柳本々々)
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4/26 気に入りの柄を揺らして駆けてゆく春の往生際のあかるさ(佐伯紺)
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4/27 たましいが土地です肉体が家です気持ちは湯船に浮かぶアヒルです(小坂井大輔)
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4/28 手も足も投げ出して寝る夜更けには地球の重力やさしく重い(河原ゆう)
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4/30 文字は鳥 ひらかれるまで永遠に白紙の空をはばたいている(中家菜津子)
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5/1 すずらんのつぼみを軽くノックしてお邪魔しますと呼びかけてみる(山上秋恵)
367
5/2 ポケットの硬貨2枚をネクターに変えて五月の風のなか飲む (岡野大嗣)
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5/4 草冠がおそろいだから友達になってはじめて下の名で呼ぶ(松尾唯花)
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5/6 死ぬまでに食べる最後のコロッケもおいしいなあって思うと思う(服部恵典)
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5/7 しろたえのふとんのなかでとびきりの宇宙遊泳みたいな二度寝(岡野大嗣)
371
5/8 地球には風ってものがありたまに誰かの初夏を伝えたりする(牛隆佑)
372
5/9 暗闇で眠りを待っているときの心臓の音 波音に似て(下楠絵里)
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5/10 バランスを崩して落ちたふりしても雲の上まで連れ戻される(やじこ)
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5/11 夕暮に咲きだす花がいいのです まだやり直せると言つてるやうで(前田宏)
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5/12 鍵ばかり立派になって空っぽの心は今も空っぽのまま(きつね)