301
2/3 ふたりしていつかは月に暮らそうね年の数だけばら撒くアポロ(佐伯紺)
302
2/4 ぼくたちは月でアダムとイブになるNASAの警告なんか無視して(木下龍也)
303
2/5 働いたあとの匂いのする犬を抱いてねむった働いたあと(しま・しましま)
304
2/7 いつまでもいつまでも春を待てるならずっと冬でもいいと思った(たきおと)
305
2/8 溜息もその他の息も真つ白でからつぽになるやうな気がする(荻原裕幸)
306
2/10 神様が与えた光のようにして輝いているおでんの大根(天野うずめ)
307
2/11 何もかも叶えてなんて言ってないたったひとつが無理ってなんで(藤田美香)
308
2/12 欲しいもの手に入れられずいつだって犬の眼をして夜明けを迎える(白井健康)
309
2/13 しわしわの心を小さく折りたたむ持ち歩いて晴れたら干そう(ふらみらり)
310
2/14 あんぱんを缶コーヒーで流しこむ刑事のようにチョコを待ってる(岡野大嗣)
311
2/15 分かりやすいしあはせがいい小麦粉と砂糖とバターでできてるやうな(太田宣子)
312
2/16 いくつもの入口に入り続けて出口ばかりを探してる日々(竹林ミ來)
313
2/18 虹をたべるやさしいマナー七色をくずさぬようにナイフを入れる(杉崎恒夫)
314
2/19 ほんものの熊より大きなテディベア作りたいほど今日はご機嫌(山上秋恵)
315
2/21 炬燵はわれをわれは炬燵を愛しゐてかういふ死後があればいいのに(吉田隼人)
316
2/23 肉球がないからだろう 生きていくのがこんなにも大変なのは(檀可南子)
317
2/24 ゆぶね、って名前の柴を飼っていたお風呂屋さんとゆぶねさよなら (岡野大嗣)
318
2/25 問題は覚えてるのに正解が思い出せない何度生きても(井上閏日)
319
2/27 地下駅に季節がふいに目をさます 「春は前駅をでました」/杉崎恒夫
320
2/28 春までの距離を測っている人のように歩数をかぞえて進む(田中ましろ)
321
2/29  私だけ気付いていれば良いのです。時には悲しい虹もあること。(龍翔)
322
3/1 三月が僕の部屋にも訪れて別れ支度を済ませと迫る(山本左足)
323
3/2 めぐるたび懐かしくなる春のこと昨日ひろった猫にも話す(嶋田さくらこ)
324
3/4 今どこにいますか何をしてますかしあわせですかもう春ですか(たきおと)
325
3/5 ひるひかる星を選んでつれていく忘れないという祝福がある(北村早紀)