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12/29 あたらしい明日があなたにくるようにぼくはかうして窓をあけてゐる(中山明)
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12/30 一生に一度ひらくという窓のむこう あなたは靴をそろえる(笹井宏之)
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12/31 またお会いしましょう 棚の裏側でビンのキャップが見つかるように(虫武一俊)
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1/1 汚れては洗って日向に干すように日々を過ごしてゆけますように(斎藤見咲子)
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1/2 ロウソクの炎のようだ幸せは分けても分けても消えない明かり(雪間さとこ)
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1/4 いくつもの前世の自分が集まって祈ってくれているような朝(前田宏)
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1/5 しあわせな話をしよう暗闇に目が慣れていくような速度で(田中ましろ)
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1/7 随分ととほくまで来た 自転車でどこへでも行く大人になつて(濱松哲朗)
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1/8 あたたかな灯のともるあの窓辺まで何光年の道のりだろう(山本左足)
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1/9 ひかってる方へ確かに来たはずが全部あかるくてわからない(唐梨なつ)
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1/11 火のやうにさびしいひとにさはれずにただそばにゐてあたためられる(本多響乃)
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1/12 眠れるよ夜が出口を塞いでも三日月ほどのあかりがあれば(高松紗都子)
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1/14 かなしみのように積もっていく雪のほんのすこしを手であたためる(なみたま)
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1/15 悲しみはいくつも名前をもっていていまはどれにもあてはまらない(大村椅子)
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1/16 かなしみはいたるところに落ちていて歩けば泣いてしまう日もある(木下龍也)
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1/17 もう声は思い出せない でも確か 誕生日たしか昨日だったね(岡野大嗣)
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1/18 またミラーボールのなかで眠るから雪が降ってもおこさないでね(藤本玲未)
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1/22 コタツには守られてばかりいるのだしせめてきれいな布団を着せる(ナタカ)
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1/23 たてがみを失くしてしまったライオンが大きな猫のふりして眠る(やじこ)
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1/24 夕暮れにこたつの群れが飛んでいく ときどき猫がつかまっている(竹林ミ來)
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1/25 わたしを解凍したらほんとに人間に戻るのかこの冬のあかつき(荻原裕幸)
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1/27 侵略はかくも無慈悲に行われコタツにぼくの場所はもう無い(山本左足)
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1/28 すでにじんるいをあらかたほろぼしたこたつ内部で猫の反乱(竹林ミ來)
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1/29 猫の耳にもパンの耳にも聞こえそう内緒話は向こうでしよう(山上秋恵)
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2/1 そこからは一体何が見えますか私はちゃんと歩いてますか(宇野なずき)