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10/18 トーストに載せたバターは形から放たれたくて溶けてゆきたり(中畑智江)
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10/20 永遠に夢から覚めない二人でいい君の寝言に寝言で答える(近藤きつね)
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10/23 長い夢を見ていたような気がしたが ただあなたを失ったのだ(岩尾淳子)
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10/24 きみもまださびしいですか北に住む猫背猫舌猫目のひとよ(久野はすみ)
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10/26 世界一綺麗な声で鳴く鳥になって一度も鳴かずに生きる(山本左足)
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10/27 登っても登っても近く見えてこない月まで続く階段を行く(瀧音幸司)
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10/30 海になることと涙になることがすべての水の憧れだつた(山田航)
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10/31 さよならは済ませときたい四捨五入すれば秋だと思えるうちに(岡野大嗣)
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11/1 きみが十一月だったのか、そういうと、十一月は少しわらった(フラワーしげる)
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11/2 そんじょそこらの旗なんか刺さらないつよいつよいオムライスください(加賀田優子)
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11/4 バックしますご注意くださいまた同じ過ち繰り返そうとしてます(小坂井大輔)
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11/5 生きてゆく根拠はたぶん曖昧でそれでもそこに升目のある日(柳本々々)
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11/6 ささやかなグッドニュースを積み上げてなんとかやっていこうと思う(斎藤見咲子)
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11/7 TV観てぼんやりしてたら夜になりまたがっかりをひとつかさねる(西之原正明)
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11/8 袖口を嗅ぐだけでねむたくなれる部屋着で過ごすうつくしい日々(岡野大嗣)
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11/9 笑つたはうがいいと思つて空を見る 僕は雨宿りに慣れてゐる(濱松哲朗)
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11/10 がんばれば夢は叶うと唱えつつゆるやかに死んでゆくいちにち(佐々木絵理子)
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11/12 捕まえたら幸せになれるらしいので秋風のしっぽ、しっぽください(飯田彩乃)
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11/13 まっしろなブランケットにくるまれてまたまっしろにもどりたかった(龍翔)
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11/14 世界中どこかでいつも降る雨の端っこを今もらって濡れる(奥坂竺人)
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11/17 水溜まりばかり歩いてここじゃないどこかに引き摺りこまれたいのです(ショージサキ)
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11/18 わたしには夢も希望も少しあり雨が降ろうとスーパーへ行く(雪間さとこ)
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11/20 オレ以外みんな真面目に生きていて取り残された気のする深夜(工藤吉生)
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11/22 花束を抱えて乗ってきた人のためにみんなでつくる空間(木下龍也)
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11/23 花束に顔をうずめているあいだ逃げ方ばかり考えていた(佐伯紺)